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「それでは冒険者登録を始めさせていただきます」

「キクさん、すみません。できれば代筆をお願いしたいんですけど……。」

「大丈夫ですよ。登録料を頂いた後、こちらに触れていただければ手続きは完了します」


 そういったキクが手で指すのは、透き通った水晶玉だった。これは一体なんだろうと、5人はそれぞれ覗き込む。


「こちらは皆様の適性を診る魔道具になります。運動能力に優れた方は武器を扱う戦士職、魔術の扱いに長けた方は魔術師など、皆様の役職を診断し、今後の依頼の参考にさせていただきます」

「うひょー、待ってました!」

「なんか"らしく"なってきたやん」

「俺!俺からやる!」


 学校でも見たことがないような慶次の綺麗に上げられた右手を見て、4人はまぁそうなるだろうなと思った。どのみち全員やるのだから、やりたいようにやらせれば良い。


「登録料は5人分全部俺の貯金から引いてください」

「かしこまりました。それでは神さ、サイト様の口座から後ほど5万エル引き落とさせていただきます。それではケンジ様、でよろしかったでしょうか?」

「慶次っす!」

「大変失礼しました。ケイジ様、利き手をこちらにお願いします」

「うっす!」


 ニコニコと笑顔のまま、昂る気持ちを抑えられない慶次は水晶へと手をかざす。すると水晶が濃い赤色に輝き、その光が慶次の右手から全身へと巡るように移り……。


「っ!?」


 瞬間、慶次は大きく後ろに飛び退った。何事かと昴は駆け寄り慶次の肩を掴む。


「慶次!どうしたの!?大丈夫!?」

「あ、いや……なんかぶるっとして……。」


 珍しく歯切れの悪い返事をする慶次は、かざしていた右手の具合を確かめるように握ったり開いたりと繰り返している。


「こちらの説明不足です、大変申し訳ありません。作りとしては成人の儀に教会で行う祝福と変わりありません。水晶から流れる魔力は普段魔術を使わないものからすれば慣れない違和感があると思いますが、体に馴染むまでは手を離さないようにお願いします」

「……っす!ビビってすんませんした!」

「……才途、知らない単語」

「そうだね悦司、でも話ぶりからしてわざわざ説明するまでもない事っぽい。ここはそのまま反応せずに行こう」


 才途の言葉に、3人は小さく頷いた。危うく成人の儀という言葉について聞きかけていた昴は口を固く結ぶ。

 慶次も混乱のおかげか変に蒸し返す様子はない。深呼吸を一つすると、改めて水晶に手をかざした


「うう、なんか変な感じ……。」

「流れている魔力が集まりますので、右手に少しずつ力を込めてください。……はい、その調子です。深く息を吸って、吐いて。集めた魔力を右手で押し返してください」

「ふぅんっ!だあっ!!」


 右手首を左手でつかみ、気合いを入れる声と共に慶次は手を前に突き出した。すると慶次の右手に集まっていた赤色の光が水晶へと流れ、水晶が光り輝く。


 バシュッ!


「のわっ!」

「今度は大丈夫ですよ。ケイジ様、お疲れ様でした。こちらがケイジ様の登録証、そしてこちらが、ステータスカードになります」

「お、おおー!すげぇ!ファンタジーだ!」

「ふぁんたじー?」


 水晶から音を立てて生み出されたのは一枚の羊皮紙だった。

 ステータスカードと呼んだそれをキクは広げると、しばらくして目を大きく見開く


「こ、これは……。」

「え、俺なんかやっちゃいました?」

「やめぇそれ、嫌われるタイプの主人公や」

「素晴らしいステータスです!!」


 そう言いながら興奮した顔つきでキクは羊皮紙をこちらに突き出す。



 ケイジ・カンザキ Lv.1

 剣士


 HP:S

 MP:0(ゼロ)


 STR:S

 VIT:A+

 DEX:C

 INT:絶望

 MND:E+

 AGI:B

 LUK:D-


 スキル

 剣術(大剣)A+

 適応B

 識別C


 ユニークスキル

 カウントアップA

 ギアチェンジC

 フルバーストS


 異能

 災禍の種子(ハザード・シード)


「HPとSTRがSランク!魔術の適性は無さそうですが、近接職として素晴らしい能力をお持ちです!」

「なぁこれ喜んで良いのか!?2つおかしいステータスねぇか!?」

「私も初めて見ました!」

「だよなぁ!?」


 褒められているのにどこかツッコミどころのあるステータスカードを見て、慶次は悲鳴を上げる。昴が苦笑いをしていると、自分の袖をくいくいとひっぱる感触に気付いた。


「どうしたの勝間?」

「昴、何書いとるんかわからん」

「あ、そっか。勝間ってゲームほとんどやらないから」

「マ◯オとポ◯モンくらいしかやらんけん」

「ちょーっと待ってね……。」


 HP:体力、無くなると死んだり戦闘不能になったりする


 MP:魔力、魔法やスキルを使う時に消費する。無くなると強い攻撃手段を失う


 STR:攻撃力、ステータスが高いほど物理攻撃の威力が上がる


 VIT:防御力、ステータスが高いほど物理攻撃のダメージを抑えられる。ゲームによってはHPが増える


 DEX:器用さ、ステータスが高いほどクリティカル判定が出やすくなったり、ものづくりの技術が上がる。ゲームによって効果は様々


 INT:魔法攻撃力、ステータスが高いほど魔法の威力が上がる


 MND:魔法抵抗力、ステータスが高いほど魔法攻撃のダメージを抑えられたり、状態異常攻撃の耐性をえたりする。ゲームによっては回復魔法の威力が上がる


 AGI:素早さ、ステータスが高いほど動きが速くなる。ターン制のゲームでは相手より多く行動できることもある


 LUK:運、ステータスが高いほど良いことがある。ゲームによって効果は様々



 昴は書いたメモを一枚切り取って勝間に渡した。


「こんな感じかな。ゲーム知識だけど」

「おー、助かる!ふむふむ、いうことは慶次は攻撃と防御が高いってことになるんかな?体力も多いんか」

「そうみたい。でもなんか不思議な書き方だよね。こういうのって数値で書かれるもんだと思ってた」

「適性を確認するためのものですので、こちらは言えば伸びしろを示すものです。……そうですね。ケイジ様、腕を失礼します」

「え? うっす?」

「例えばケイジ様はVITがA+という素晴らしい伸び代を持ちますが、一方でLvはまだ1でしかありません。私のステータスのSTRはB-ですが、Lvは52。こうしてほんの少し力を入れると……。」

「いだいいだいいだだだだだだっ!?」

「このように、ステータス上では劣っていてもこちらが有利になります。"エル"」

「ふーっ、ふーっ!……あれ、全然痛くない」

「今のは回復魔術である"エル"です。私のMNDは一般人並であるEですが、それでもLvが高いため少しの青あざ程度であれば一瞬で治すことができます」

「なるほど……肝心なのはレベルってことか」

「そうなりますね。例外はレベルによるステータスの変化がないLUKだけです」

「……ってことは今はゼロの俺のMPもレベルを上げたら増えるってこと?」

「可能性はありますが、この表記は過去に無いものですので答えかねます。ないものとして考えるのがよろしいかと」

「畜生!」


 5人の中で一番ファンタジーや異世界に夢を見ていた慶次だ。お前は魔法が使えないと言われるショックは計り知れなかった。


「もう、仕方ないなアイツは」

「才途?」


 そんな慶次の様子を見た才途は、項垂れる慶次の肩をポンと叩く。


「慶次」

「んだよ!」

「あんまりガッカリするな。魔法も剣もどっちも出来るのは楽しいだろうけど、両方いっぺんに上達なんてできないだろ? ここは逆に考えるんだ……。国を襲う巨大なドラゴン。なす術もなく逃げ惑う人たち。鱗は硬く、あらゆる魔術も、城に備え付けられた大砲も意味をなさない。そんな中マントをたなびかせ現れるお前。やれやれとため息をつきながらドラゴンに肉薄、一太刀でドラゴンを真っ二つに切り裂く。城のお姫様はこう言うんだ。『すごい!あのモンスターは物理攻撃が効きにくいのに、あの人は大剣一振りで倒してしまったわ!』と」

「……ふっ、当然さ。俺はソードマスター。剣を愛し剣を極めた者、神を裂くと書いて神裂慶次。この剣に斬れないものはない」


 馬鹿丸出しの丸焼き、一丁。


「その意気だ」

「すげぇ一瞬で沈静化した」

「もうアイツ1人でええんやないかな。さて、昴に教えてもらったし、次は俺が行こうかなーと。手ぇ置くけんねぇ……おおー、なんかじんわりあったかい」

「カツマ様は魔力の巡りが早いですね。もう送り返していただいて結構です」

「ほんま?んじゃ、んんーっ!」


 慶次の時と比べ1分ほど早く、勝間は水晶へ魔力を送り込んでいく。


「ちなみに魔力送るのってどんな感じ?」

「あー、なんだろうな。俺は握力検査みたいに一気に腕に力込める感じでやったけど。勝間は?」

「バカンザキ、集中しとるけん話しかけんなや。『バシュッ!』うおっ、眩しっ!……なんやろ、前屈で腕グーっと伸ばす感じかなぁ」

「なんでお前ら揃って身体測定で例えんの?」

「握力だろ」

「前屈や」

「勝間ー?お前のステカ出来てるけど見ないのー?」

「見るー!」


 カツマ・スズカゼ Lv.3


 斥候 戦士


 HP:C+

 MP:D


 STR:B-

 VIT:C+

 DEX:S

 INT:D-

 MND:C

 AGI:S+

 LUK:D-


 スキル

 索敵 B

 道具作成 A-

 交渉術 A

 鑑定 B


 ユニークスキル

 涼風流戦闘術 B+

 隠密 A-


 異能

 蔵闇くらやみ



「DEXとAGIがSランク……!」

「おー、とりあえず慶次にマウント取られるんは回避できたやん。よかったよかった」

「なんか、典型的なスピードタイプって感じだな。手数とクリティカルで戦うタイプの」

「皆様、お言葉ですがもう少し騒がれるべきステータスです。一般人であればステータスはオールE、そこからDのステータスが何かあれば冒険者を始められるのが普通です。このステータスであれば王都から召集が掛けられてもおかしくないのですよ?」

「え、嫌よ知らん人の下につくの。うちにはリーダーがおるんやから。ねぇ才ちゃん」

「まぁ、勝間に同じくリーダー以外の言うことを聞く気も、パーティーを組む気もないよ」

「誰だよリーダー。」


 有象無象だとか烏合の衆だとかが自分たちを表す最も最適な言葉だと昴は思った。

 強いて言うならば生徒会に所属している才途か、部活で主将をしてあり冒険者に一番強い憧れを持つ慶次のどちらかならリーダーでも良いかもしれない。しかし、後輩目線でなら良い先輩であるかもしれない2人も、同級生の自分から見れば問題児の自由人である。うん、全員無理じゃないかと昴は結論付けた。


「じゃあ次、誰が行く?」

「パース」

「俺もちょっと、出来れば全員のコツ聞いてからが良いかなって」

「消去法で俺じゃん」

「神様なら大丈夫です」

「ありがとうございます。あと才途です。……キクさん、測る前にちょっと確認したいことがあるんだけど、良いです?」

「なんでしょう?私に答えられることであれば」

「ちょっと手を貸してもらえます?……今キクさんに魔力を流そうと思ってやってみてます。上手いこと流れてますか?」

「非常にスムーズに流れています。確認ですが、魔術の経験は…….?」

「無いです。魔道具も成人の儀以来ですね」

「(さらっと嘘ついたでアイツ)」

「(才途のあーいうところがこえーわマジで)」

「(陰湿)」

「(悦司、辛辣すぎるよ)」


 話の流れ的に馬鹿正直に初めて見ましたというわけにいかなかっただけなのだが、4人の比較的素直な奴等からはブーイングの嵐だった。


「……もしかすると魔法職の適性があるかもしれませんね。サイト様、水晶に手を当てた後、魔力が流れるのを待たなくても構いませんので、はじめからご自身の魔力を流していただいてもよろしいでしょうか? 仮に魔法職である場合、慣れていない方は水晶の魔力と自身の魔力を同時に流してしまい、魔道具に大きな負担がかかってしまう可能性がありますので」

「俺はステータスカードさえ作れるならなんでも良いですよ。やってみますね」

「ちなみにイメージは?」

「フォルテッシモ」


 才途は水晶に手をかざさずに、深く、大きく息を吸う。次第に腹と背が膨らみ始めた。


「フォルテッシモってなんだっけ。美味しいやつだっけ」

「音楽用語。ググれば?」

「ググれねぇよ今」

「…….てか、ハードルなんか上がってない?これで魔法職じゃなかった時よ」

「ええんよ昴。手繋いでこれが魔力ですか?とかスカしたことやっとる才ちゃんが悪いけん、爆笑してやったらえぇ」


 ボンッッ!!!!


『!?』


 それは、よく聞き馴染みのある音に似ていた。溶接の実習にて、鉄のパイプを剪断した時のような、硬質の素材を破壊する音。


「……てめぇらこっちが言い返せないと分かって、好き勝手言ってくれたなぁ……!」

「そんなんどうでもええけんはよごめんなさいしぃや。クリスタルクラッシャー」

「やめろ勝間、俺に変な称号を受けるな小っ恥ずかしい」

「《クリスタルクラッシャー》……!」

「馬鹿やめろバカ。目ぇキラキラさせんな」

「あ、あわ、あわわわわ……!」

「キクさん!?」


 キクの著しいキャラ崩壊が起こっていた。騒然とするギルドの中で、才途と悦司だけがのほほんとしている。


「俺なんかやっちゃいました?」

「もーう我慢ならん!あのなろう語録をぶっ飛ばしちゃる!俺のレベルはなんでか3やし!」

「あれほんとになんで!?てかやめろ勝間!よく分かんない涼風流戦闘術を使おうとするのはやめろ!慶次も早く止めるの手伝って!」

「すんませんマジすんません教官、設定はちゃんとやったつもりなんすけどこの鉄パイプ思ったより軟弱で……。」

「1人だけ補習くらってた剪断実習のトラウマ掘り返してやがる!ちょい、悦司、悦司ー!」

「昴、これすごいぞ。またわけわかんないステータスになってる」

「1人だけ楽しんでんじゃねぇよ!!」


 サイト・ミヤハラ Lv. 1

 召喚士 魔術師


 HP:D+

 MP:EX


 STR:E

 VIT:E

 DEX:C-

 INT:SS+

 MND:S+

 AGI:D

 LUK:E-


 スキル

 識別 A

 家事 S

 全属性魔術適正

 全属性魔術耐性

 体調管理 F

 不運 A





 ユニークスキル

 魔力操作(干渉) S+

 召喚術 S+





 異能

 虚構の強欲(バース・グリード)





「き、極端やねぇ才ちゃん」

「肉体貧弱すぎだろ、制約と誓約でもしてんの?」

「長所を褒めて伸ばそうよ。……まぁ、うん。とりあえず硬くてデカくて強いモンスターが来たら慶次に任せて逃げるとするよ」

「神様、こちらのステータスは上に報告する必要がありますので、写させていただいてもよろしいでしょうか?」

「サイトね。……あー、EXってのが関係してます?」

「そうですね。EXは言わば、この世界で最も高いステータスをもつ者になります。初代国王がHPとVITのEXステータスを所有していたことは有名ですね」

「(知らねぇー)なんだか誇らしいですね、えへへ」

「「「「(きもっ)」」」」


 猫被りもここまで来ると気持ちが悪い。どうしてこんなのが印象良いんですか教官、貴方間違ってますよと、遥か遠くの高専教師に思わなくもない昴である。


 〜・〜・〜・〜・〜


「フォルテッシモすると魔道具ぶっ壊しちゃうってことで良い?」

「んー、ステータスEXの魔力を全部ぶち込むつもりで流したのが悪かったんじゃないかな。肺の空気を腹筋で押し出すイメージで出したから」

「Lv.1なのに?」

「逆に、Lv.1でも関係ないくらいEXがやばいって説もあるよ。はいこれ」

「……なにこれ」

「そこで寝てる馬鹿のステータスカード」

「悦司の!?いつの間にアイツ登録したの!?」

「『つかこれわざわざ並ばなくても良いよね、受付他にもあんだし』って、俺が水晶爆発させてる時にしれっと」

「全然気づかなかった」


 エツシ・マエゾノ Lv.1

 結界師 魔術剣士 付与術師


 HP:S-

 MP:S-


 STR:B+

 VIT:B+

 DEX:A+

 INT:A-

 MND:A-

 AGI:B+

 LUK:EX


 スキル

 看破 S

 六属性魔術適正

 回復魔術

 剣術(片手剣) B

 付与術 A


 ユニークスキル

 ラッキー・パンチ 

 魔力操作(増幅) A+

 ポイントマーカー S


 異能

 聖域ベッドルーム





「俺アイツのこういうとこホンッットに嫌い」

「勝間も付き合いきれんわアホって帰っちゃったしな」


 いわゆる天才という奴なのだろうか。周りからの悦司の評価はそれだった。

 異世界でもそれは健在なようで、あまりにも豪華で隙のないステータスに、昴は悪態をつく。そして同時に、悦司が言っていた事の意味をようやく理解した。


(これもテンプレってやつか。ギルドにチンピラはいないし、地球のご飯が微妙に伝わってるヘンテコ異世界だけど。チートで活躍っていうのはどうも存在するみたいだ。ありがたいやら、緊張するやら)


 昴は自分のことを平凡な人間だと評価する。勝間は異世界に来てすぐのスバルの落ち着いた対応を"充分ありがたい"と評価したが、あんなものある種のやけっぱちであった。


 それでも。


 みんなが示してくれたように、自分にも何かあるのならば。


「それでは最後ですね。今度のは高ランク冒険者様の情報更新用の魔道具ですので、壊れることはないかと」

「すみません、ほんと。うちの馬鹿が」

「反論無しでーす」


 試してみたい。

 上がったハードルに緊張はしている。前に伸ばした手にはじんわりと汗が滲んでいる。

 それでも口角はわずかに上がっていて。ちょっぴり期待している自分がいることは明確だった。

 わくわくと共に、慣れない魔力を感じながら。昴はそれを水晶へと押し返し……。












 昴はわーうるふに引きこもった。









 〜・〜・〜・〜・〜


「なーすばるー、そろそろでてこんー?」

「メシ冷めちまうぞー」

「ねぇ、大部屋に閉じこもるの許せないんだけど。俺も寝たいんだけど。開けてよ、この際引きこもるのは良いから混ぜてよ」

『今日はもう出ない!話も聞かない!俺を慰めて良いのは俺よりステータスが低いやつだけだ!!」

「だってさ、飯食おうぜお前ら」

「さんせー」

「寝たいんだけど……。」

『もうちょい粘れや!!才途も連れてきて4人で説得しろ!!』

「「「こいつめんどくさぁ……。」」」


 〜・〜・〜・〜・〜


「ステータスは一般の冒険者と変わらない。Lvをしっかり上げないと他の四名についていくことは叶わない。最初に見た通りの、冒険者になるより他の仕事を探した方が幸せになりそうなステータス、なのですが……。」


 静かになったギルドで1人、5枚のステータスカードをまとめパーティー登録を進める中で、キクは普段なら気にも留めないようなあまりにも平凡なステータスカードを、それでもテーブルの中心に置き、目が離せないでいた。


 スバル・キソ Lv.1

 剣士


 HP:C

 MP:E


 STR:C-

 VIT:D

 DEX:E

 INT:E

 MND:D

 AGI:D

 LUK:D


 スキル

 剣術(片手剣)C

 体調管理 A


 異能

 過大解釈オーバー・リアクション

 歪曲



「一つ与えられるだけでも世界に愛されていると言われる異能、その反応が"二つ"。ギルドのデータベースにも一切存在しない、EXステータスも比べ物にならないイレギュラー……。スバル様も、ギルド長に報告する必要がありますね」


 異能は本人にしか詳細がわからず、ギルド側は異能があるかないかの判断しか出来ない。だが、ステータスカードに記された、異能の存在を示す黒点が二つあるのを見て、キクは深く息を吐いた。



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