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幕間1 一夜漬け

 ダイン指導の下、ジャグナロに化けるための演技指導が始まった。

 まずは見た目。

 ダインはこのときのため、すでに実寸大フィギュアを作成しており、わたしはそれを細部や質感に至るまで再現して見せた。

 所要時間は5分もかからなかった。


 続いて、演技指導に移った。

 ジャグナロの話し方、口癖などがダインによって1冊のノートへとまとめられていた。


・ジャグナロの1人称はオレ。

・相手は呼び捨て、名前呼びが多い。例外は後に記す。

・「~だ」「~である」口調が多い。

・ただし老人、子供へは丁寧口調になり、ちゃんと視線を合わせる。

・ジョークをよく言う。とくに、自分の地位によって相手が委縮しているときは積極的に口にする。

 例1「あまり委縮しないでくれ。物騒なこのツノ、実は取り外し可能なんだ」

 (付随する仕草は図1を参照)


「ひぃぃ……」


 わたしはダインのノートを読んだとき、寒気が走った。

 オッサンがオッサンに向ける熱量が大きすぎて、目を逸らしたくなった。

 異常なのはその量だった。

 この手の細かい情報で、ノートが1冊丸々埋まっている。


「と、とにかく演じてみる」


 座学もほどほどに、わたしはジャグナロへと変身してダインと会話をしてみることにした。


「ダイン、ご苦労だった」


 シチュエーションは封印が解かれたあとのダインとの再会だ。

 なお、ダインが自分とジャグナロの地位、及び魔王国の体面を維持するために、首都が壊滅したのはアロウとジャグナロの術が衝突して起きた事故ということになっている。

(わたしはこの嘘についてもひと言言いたかったが、時間がないのでこの日は止めておいた)

 ダインは『転移術』を使って、緊急回避をしたため唯一生存。

 ジャグナロが自分の傷を癒すために、やむを得ず自身に封印術を使い、あとをダインに託した。

 ……ということになっている。


「オレの遺言を守ってくれてありがとう」


「ちがあああああああああああう」


「……」


「そこは『ダイン、ご苦労だった。お前を信じていてよかった。復活、感謝する』です」


「なにが違うんだよ! どうでもいいだろ、そんな些細な違い!」


「すぐ、素になって突っ込まない! それにどうでもよくない――」


 ダインのジャグナロ講義を聞き、少しずつ理解を深めていく。


(でもこいつ、ジャグナロの計画には気付けなかったんだよな……)


 わたしはそんなことを内心思いながら、ダインの指示に従った。

 それは、どうせダインほどジャグナロを細かく観察している人間はいないと感じたからだ。


「――そこの動きは右腕を胸の前にかざす、です!」


「――ジャグナロはそんなこと言わない!!」


「――そこのサビで“がなり”を入れて!」


 訓練が終わるころには、日は昇っていたのは言うまでもない。


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