表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/46

プロローグ 雪の降った日

 きらきらと白い光が降り注ぐ。


 その美しい光景を見つめながら、わたしは両親が帰るのを待っていた。

 生まれて初めて見る雪だ。本当は周囲の子どものようにはしゃぎ回りたかった。

 けれど、わたしはその光から目が離せずにいた。


「フィルデ……」


 ふと、その光が話しかけてきた気がした。


「フィルデ……ごめんね……」


 それは母親の声だった。

 わたしは周囲の目も気にせずに呼びかけた。


「ママ?」


「ベルタをお願い……ううん。どうか、フィルデはフィルデのまま、元気でいてね……」


 白い光が消えるとともに、声が消えていく。


「ママ!!」


 この日の記憶を、わたしはこれから先、何度も思い返すことになる。

 そのときは、雪の正体も母親の最期の言葉の意味も……何も分かっていなかった。


 ……いいや、今でもたぶんわたしは何も分かっていない。

 他人の心なんて、分かりっこないのだから。



              ♢ ♢ ♢ ♢ ♢



 これは復讐の物語だ。


 言葉を交わし、憧れて、そして愛した相手が、もしも自分の知らない闇を抱えていたとき、わたしたちはどうすればいいんだろう。


 ある人は裏切られたと思うかもしれない。


 ある人は自分の無力を呪うかもしれない。


 その結果、何かを傷つける選択をしたとする。

 それはきっと、正当なものだろう。

 大義も正義もこちらにある。


 それでも、どんなに言葉で取り繕っても、心までは欺けない。

 血に汚れた手を見たあとに、心はもう昔の形には戻れない。


 これは、きっとそんな物語――。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ