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20話 初めての体育祭 (中編)

あの、お久しぶりです泣

色々落ち着いたので続き投稿してみようと思います。

二年ぶりで、 すみません。

 



 《はーい。 優勝は……えー、どこだっけ》

 《Gです》

 《優勝は1-G。 進学クラスでーす》

 《続きまして2年生の──》


 結論から言おう、初戦敗退でした。 笑

 同じ青組とは思えない程、見事なまでのチームワークでうちの素晴らしいチームワーク(笑)をものともせず一瞬で我々は敗れた。


 まあ、次の進学クラスにそいつらも一瞬で敗れたので上には上がいたわけだけど。


 サクサク進むアナウンスを右から左へと聞き流すかのような盛り上がりを見せる一年進学クラスと同じ組の赤チーム陣。

 他二チームは……というか、青チームがお通夜ムードである。


「俺ら最高にモブ扱いだったな」

「最高ですね」

「良くないよ?? 」


 チャラカス西谷の発言に気分が良くなって同調したらどこか怖い笑みを浮かべる松原さんが来ちゃったよ。


 正直、女子のチームワークは松原さんを中心として纏まってたしな。 完全に足引っ張ったの男子側だったから不満ぶつけられても仕方ないのだが……。


「……糞が」


 イライラし過ぎて額に血管浮かび上がってる派手男見たら誰も言えんよな。

 まじ怖い。


 しかしここで動くのがこの人である。


「皆、 まだまだ体育祭は始まったばかりだよ! 」


 シンとした空気には似合わない活気溢れるポップな声。 勿論この人、皆のアイドル松原 詩音。


「確かに私達はチームワークの差で負けちゃったかもしれないけど、これって言い換えれば伸び代があるって事だと思うの」

「……無いとおもヴッ」


 痛い痛いすんませんした!! スーパー松原タイムの邪魔してボソッと半笑いでつい本音だしちゃったのは本当にすんませんしたっ!!

 だから皆に見えないように背中つねんのマジ勘弁。


 西谷テメェ気づいてんなら隠れて笑ってないで助けろや。


「青チームの出だしは遅れちゃったけど、まだ種目は沢山あるでしょ? 」

「……そ、そうだな、幾らでも挽回はできる」


 松原さんがつねるの辞めたと思いきや、西谷にアイコンタクトを取って意思疎通を図る。 俺のことは助けない癖に意味を汲み取って助け舟を出した。


「うんっ。 まだまだこれからなんだよ!! 」

「これから、か」

「それもそうだな」


 二人のクラス委員によってクラスだけでなく他の青チームの雰囲気に変化が起きた。 俯く人が減り、互いを見合わせて目に光が灯り松原さんに注目が集まり出す。


「まだ私達は負けてない。 見て! 二年生の先輩達が今まさに必死に頑張ってる! 」


 指を指す方向の先には声をかけあって本気で勝ちに行ってる先輩達の姿。 正直暑ぐるしいことこの上ないが、スーパー松原タイムによって纏まりだした青チーム(一年生達)には効果覿面だった。


「勝とうよ皆で。 だから、今は応援しよ? 」

「「「……うおぉぉぉぉぉぉ!!! 」」」


 赤、黄色のチームにも負けず劣らずの応援が青チームから轟きだした。 これがディスイズ松原。

 正直引いた。


「ほらっ、 山田くんも! 」

「おっしゃ政宗、 応援すっぞー! 」

「……いや、だからさ」


 モブ()を挟むなって……。




 ☆☆☆




 その後学年別、男女混合綱引きは赤・青・黄色それぞれの進学クラス、つまり一年二年三年の進学クラスが優勝したことで接戦を繰り広げる結果となった。


「G組強すぎん? 」

「進学クラスって頭が良いだけじゃ入れないらしいよ」

「文武両道の精神ってやつ? 」

「そうそう」

「じゃあウチら一生無理じゃん」

「そもそも勉強出来んやん」


 クラスメイトからそんな声が聞こえた。 ギャルグループの説明通り、我が校の進学クラスは文武両道の精神のもとにクラス編成を行っている。


 理事長としては、やはり一番のストロングポイントである進学クラスの質をより高めたいのだろう。

 勉強も出来て運動も出来る。 才能溢れるクラスメイト同士で高め合うことでより質を高め、更に優れた天才を発掘又は生み出す。


「だから拙者、進学クラス見事に落ちたでござるデュフフ」


 三年は知らないが、少なくとも二年の進学クラスには俺の姉と鷺宮先輩が該当するんだろうな。 姉の場合、昔からとにかくなんでも出来る才能ウーマンだったから今更ではあるが、先輩も体力は無いが身体能力はとてつもなく高かった。


 練習中、妹さんはどんな気持ちで先輩の記録をつけていたのだろうか。 優れた姉を持つ者同士だし、親近感ある。

 ……なんか今変態の声した? 気のせいか。


「聖奈ちゃんの隣に居るのが山田君のお姉さんなんだね」

「まあ、そうですね」


 確かに凄い人気だ。 二人を中心に良くクラスが纏まっているように思える。 その影響は学年にも及ぶのか唯一優勝準優勝しているのは二年の青チームのみだった。


「二人とも、凄い人気だね」

「そうですね」

「頼りになるねっ」

「そうですね」

「……」

「……」


 松原さん(この人)なんでずっと俺の隣に居るの? 好きなの俺の事?

 無いか、無いな。

 監視のつもりか?


「あの」

「うん? 」

「もう、流石にサボりませんて」

「……山田君が私のことをどういうふうに見ているかについてはまた今度()()()()聞くとして〜」


 怖い、怖いよ松原さんっ。 そのどす黒いオーラ出しながらニコニコと迫力満点な笑顔どうやって作ってんの??


 正直申し訳なかった。 その思いが通じたのか、松原さんは一度ため息をついて普段の笑顔を見せた。

 内緒話なのか俺との距離をさらに縮め声を潜める。 もう既に肩がくっついているのには気づいているんだろうか。


 気づいてやってんだろうなあ。 また周囲が色々勘違いしそうだなあ。


「さっき私達は伸び代があるって言ったけど」

「はい」

()()()()次第では少なくとも、初戦敗退はしなかったと思うんだっ」

「はあ」


 相変わらず遠回しな言い方だ。 まるで俺ならこれで十分わかるだろう、と。


「ヒント」


 その目にはどこか、子供の成長を見守る母親のような温かさがある。 変な気分だ。


「私はクラスを纏められても、引っ張る程の力はありません」

「よく分かりません」

「その二」


 聞けよ。

 他の友達とワイワイ話してる西谷に目を向ける松原さんに心の底からツッコミたい。


「西谷君はそつなくこなせます」

「あー、じゃあ西谷君なら──」


 ──ほんとうに?


 ()()()()()ことを反射で言葉にした時、こちらを下から覗くかのように首を傾げて見つめてくる松原さんの表情が、こちらを嫌でも試してくる。


 ……ああ。 本当に心にも無いことを言おうとした。

 少なくとも、チャラカス西谷に派手男と坊ちゃんを制御することは不可能だ。

 会話は出来るだろう。 煽てることもわけないだろう。


「彼は……()()、ということか」

「──良いねっ」


 求めたらあの西谷(天才)は助太刀ぐらいならしてくれる。 ()()()()()()()で物事の判断基準を決めるような奴だ。


 でも主役にはなりたくない。 ()()()()()


「崩壊しちゃうかも……なーんてねっ」


 冗談のつもりかお茶目にウィンクして女子グループに混ざりに行く松原さんへ。 全く笑えません。


『多分、世間一般的には俺は恵まれているんだろうな。 ……でも退屈だった。 何でも出来るから飽き性にもなる。 友達も沢山出来るし会話に困ることもない。 孤独じゃなかった』



『――なのに()()()()()()()()()()。 毎日に刺激が欲しかった。 理不尽が必要だった』


 以前西谷はそう言った。 奴の言う刺激と理不尽が何かはまだ理解していない。 ただ、問題児溢れるクラスメイトを持ったとしてもそつなくこなすことしか出来ない西谷ではリーダーにはなれない。 ()()()()


 周囲が求めすぎたら、恐らくあいつは本能のままに好きなように()()()()


「西谷自身がそれを一番理解している、か」


 ……面倒くさあ。




 ☆☆☆☆





 体育祭は順調に……順調に? 進んだ。


 《かけっこでーす》

 《学年別、百メートル徒競走です》

 《赤組、がんばれ。 白組、がんばれ》

 《赤、青、黄色です》


 もう隠そうともしなくなったな生徒会長。

 徒競走は男女別は当然として七レーン使ってA〜Gの七名で競走し、上位三名にのみ特典が与えられる。

 一位なら三、二位なら二、三位なら一得点だ。


 人数多いし、まあ適当なんだろう。


 つまり何が言いたいかと言うと、下位四名は得点争いには無関係となる為さほど足が速く無くても目立つ心配も責められる心配も無いのだ。

 足速い奴らで勝手に盛り上がってればいい。


 西谷「よっしゃー! 」一位

 派手男「当然の結果だな」 一位


 陸上部含めたこの二人の活躍もあって、B組は地味に得点に貢献した。


 ……あ、俺は五位でした。 てへぺろ。


 坊ちゃん「急がばなんとやら、さ」五位

 変態「拙者転んでばかりでは……? 」ビリ


 女子陣も奮闘している。 次は松原さんの番か。


 《1-B 松原 詩音》

「「「うおぉぉぉぉぉ!!!!! 」」」


 まあ、凄い人気だ。

 始まる前に一人一人アナウンスで名前紹介があるんだが、松原さんの時だけ男女関わらず大いに盛り上がっていた。


 まだ一学期の途中だというのにえげつない人気だわ。


「やばいよな」

「正直引きますね」

「なんだよ政宗。 貧乳派なん? それとも美乳か?」

「は? 」

「あの体操着を盛り上がらせるたわわこそ正義だろ」

「なんだコイツ」


  男子高校生すぎんだろ。

 確かに凄いけどな。 松原さん宛の応援にファンサービスするかの如く手を振り対応する際、確かに大いに揺れる部位がある。 馬鹿な男共は当然釣られ、彼女持ちは制裁を受ける。

 天国と地獄とはこのことか。


「最高だよな」

「「うんうん」」


 ……まあ、否定はしないさ。 うん。


「おーいっ!! 」


 ファンサの神である松原さんは、勿論B組にも満遍なく魅了してくれる。

 ぴょんぴょん跳ねるな、盛り上がるな男共。


「いいよなあ山田」

「はい? 」


 誰だコイツ、となる前に隣の西谷がボソッと「クラスメイトだろ」と教えてくれてよかった。

 ……誰だコイツ。 (塵カス)


「あの松原ちゃんと同じ部活なんだろ? 」

「よくわかんねえ部活だけどな」

「でもよ、噂じゃ凄い美人の先輩もいるらしいぜ」


 なんかめんどくさい空気になってきたな。


「なんか松原ちゃんと距離感近いしさ」

「今も松原ちゃん、本当は山田に向けて手を振ってんじゃねーの? 」


 周りの視線が俺に集中し出すのを感じる。 現実逃避をするかのように松原さんに目を向ければ、確かに目が合うように見えなくもない。


 ──ん? 口元が動いてる。 何か言ってるな。


 えー……お、う、え、ん、し、て、ね!

 ウィンク☆


「「「……」」」


 ……無言の圧力! からの殺気!?

 俺何も悪くないよね。モブだよね。 西谷テメェ笑ってないでこの空気なんとかしろよそれでもクラス委員かよハゲ! (ハゲてない)


「モテ期だな! 」


 圧力増したが!? なんて役に立たねえカス野郎なんだ! (超失礼)


 こういう時、我関せずの派手男や坊ちゃんが羨ましい。 自分の出番が来るまで端でダルそうにスマホ触ってたり、手鏡見て櫛で(どこから出した? )髪のセットを優雅にするマイペース二人。


 仮にも問題児トリオの一角を担ってるんなら、俺もハブれよ。 自分で言ってて悲しー。


 《1-G──》


 俺の周囲の空気が地獄すぎるが他の奴らには何一つ関係等なく物事は進む。


 赤チーム、特に一年の進学クラスが湧いた。


 《──雛森 鈴芽(ひなもり すずめ)

「雛森ー! 」

「頑張れよー! 」

「すずめちゃーん! 」


 進学クラスにも松原さんのようなクラスのアイドルがいるようだな。 とんでもない人気だ。


 盛り上がる赤チームに目を向けていた生徒。

 その子が振り返ると、風がそっと髪を揺らす。その一瞬だけ、世界の色が少し深くなるような気がした。


 どこか凛とした空気をまとわせる。姿勢は自然に伸び、華奢すぎず、しかし均整の取れたそのスタイルは、健康的な美しさをさりげなく物語っている。


「可愛い」


 誰かが呟いた。 その通りだ。しかし可愛いというより綺麗が彼女には似合う気がした。


 艶やかで真っ直ぐなその黒髪は、運動しやすいよう後ろで結んでいなければ背中に淡い影を落とすことだろう。 派手さはない。 けれど目を引く。


 微笑んだ。 唇が控えめに弧を描く。


「可愛い」


 誰かが呟いた。

 語彙力終わってんな。


 松原さんや鷺宮先輩に負けず劣らずの美貌の持ち主だ。 同じ背景に同等の松原さんがいるというのに、今この瞬間だけは彼女の舞台とでも言うかのごとく我々の視線を集めている。


「……なんか変じゃね」


 西谷の言う通りだ。 変だ。

 ……なんで()()()()()()()


「おい! 手を振ったぞ! 」

「俺だ」

「いや絶対俺! 」

「拙者ですぞぉ! 」


 アホ共が騒ぐ。 ……そう、きっとこのアホ共の誰かだろう。 この中にあの美少女の隠れ彼氏又は知り合いが居て、実はあの子が隠れて付き合うのが嫌になってわざと大舞台で注目を集めて慌てふためく姿を見ようとしている。


 これだな! 完璧な推理だ。 やっぱ俺天才っすわー。


 まあ念の為? 万が一億が一の確認の為? 目が合う()()()()だけだし? 少し横にスライドしてみようかな!




 ──やっぱりな! めちゃくちゃ目が合うのなんでだろう!?


「……政宗、お前」

「いや、違う」

「いやいや」

「いやいやいや」

「いやいやいやいや」


「「……えー」」


 戦慄する西谷。 困惑する俺。 新たな美少女の登場に盛り上がるアホ共。 カオスな空間だ。


 結果的に空気を壊してくれたのはありがたいが、しかしマジでわからん。 あれほどの美少女なら、流石に俺でも忘れないぞマジで。


 俺の困惑にやっと気づいた様子の西谷が冷静になる。


()()? 」

()()だよ」


 これが以心伝心ってか? きしょいな。

 しかしマジでわからん。 あの雛なんとかさんマジなんなのん? 姉さんなら何かわかるかな。


 遠目で分かりづらいが松原さんと何か一言二言会話している様子だった。

 ……珍しく松原さんの笑顔が固まったな。 何話してんのかなあ。()()()()


「……気になる、だと? 」


 美少女だから? タイプだから? ……俺が? ()()()()()


 なんの精算もせず、過去に囚われ逃げ続けた愚か者が今更恋? そもそも、恋なのか?


 感情は揺れているが、急すぎて困惑してるからという理由もある。 しかし心の奥底にある()()()()はなんだ。


 喜怒哀楽が暴れ回ってるようだ。


「松原ちゃんおかえり」

「ただいまぁっ。 負けちゃったよ〜」


 いつの間にかレースが終わっていたようだ。

 悔しさ溢れる様子も流石は松原さん。 相も変わらず可愛らしい。


「山田君」

「? はい」

「……ううん。 なんでもない! さあ切り替えるぞぉ」


 何か言いたげの、しかし躊躇う様子の松原さんとは珍しいものを見た。 やはりあの雛なんとかさんと何かしらあったのだろうか。


 体育祭はまだまだ続く。 松原さんも負けたとはいえそれでも好タイムでの二位だ。 あの雛なんとかさんが相手じゃなければ一位を取れた可能性もあった。


 悔しくても切り替えて応援に回る姿は周囲にも影響する。 それがクラスのアイドルなら尚更だ。


「皆頑張れーっ」





 ☆☆☆☆☆





 あの生徒会長はとうとうアナウンスをクビになったらしい。 最初から外すべきだったな。


 《続きまして、 ワクワクドキドキ借り物競争です》

「「「キャアーー!!!」」」


 この体育祭の目玉競技……というわけではない。

 では何故これ程までに女性、特に二年生の進学クラスから悲鳴にも近い声援が飛ぶのか。


「私が一位、聖奈が二位で得点稼げるわね」

「そうだな。 順位は逆だが」

「あら、 やる気ね」

「カッコつけたいのでな」


 鷺宮先輩とウチのアホ…素敵なお姉様が出るからである。


 やべーよあの人。 何かを察してこっちに殺気放ちやがったしかも一瞬だけ。


 しかし、なんで借り物競争にあの二人を選出したのだろうか。 もっと色々あっただろうに。


「よし、 MJ行こうぜ」

「……拙者、 こう見えて人見知りでござる」


 遠い目をする変態を引っ張っていく西谷を尻目に、 ふと思うのはやはりあの雛なんとかさんだ。


 《よーい、 どん》


 ピストルの音が鳴る。


 雛なんとかさんと俺に接点があるとしたら中学、又は小学校の頃まで遡る。 しかし嫌な思い出を含め、それらしい人物に思い当たる節が無いのだ。


 だというのに、得体の知れないもの感情が内側で渦巻く。 過去を思い出すだけで不快だというのに。

 気分は最悪だ。


「やあ」


 俺の知らないところで、俺を巻き込む()()が着実に進み出してる予感。


「……あれ、 政宗? 」


 勘違いなら、それでいい。

 なら先程の松原さんの態度は? 違和感。


「お、 おーい」

「……謎だ」

「アンタがな」

「いっつ、!? 」


 頭に衝撃が走る。 このチョップは貴様かバカ姉貴!


「あ? 」


 いきなり何するんですかお姉様! (雑魚)


「愚弟の癖に聖奈を無視するとは何事? 」

「え」


 腕を組んで睨みつける姉の隣には、 少し涙目の鷺宮先輩ががががががが。


「無視は悲しいぞ政宗」

「えー、 はい。 考え事してました」

「そうか。 無視してたわけでは無いんだな! 」

「勿論です。 すみませんでした」


 正直すまんかった。ということを伝え、 ほっとする鷺宮先輩。 この人の隠れファンも多いと聞く。 泣かしたとか洒落にならんぞマジで。


 ……てかさ、 周囲の視線の集まり具合がえぐすぎる件について。


 俺と違って外見にこだわっている姉は勿論だが、 鷺宮先輩も他の追随を許さない程の美貌の持ち主だ。


 両者共に進学クラスで文武両道を極めしトップツー。

 孤高の天才と生徒会副会長だ。

 つまり、 とにかく目立つ。


「……あの、 なんですか」

「わかるでしょ? 」

「……わかりたくありません」

「ふっふっふ」

「わかりたくなかったなあ」


 不機嫌な姉とご機嫌な先輩という両極端な二人が持つ白い紙。 十中八九、 借り物競争のお題だろう。


「まあ、 お題が被ってはいけないなんて言われてないもの」

「私達らしくて良いじゃないか」

「……それもそうね」

「「行くわよ(行こうか)」」

「僕の意見は? 」


 それぞれの手に両手を掴まれ、 俺の意見を一切聞かずに走り出す二人組に、 周囲の生徒達はチーム学年関係無しに唖然とし顔を見合った。


 一体何が起きているんだろう。 そう思うんだろ? わかるよ、 俺もそう思う。 (現実逃避)


 《同着一位はなんと両者共に2-Gです。 お題を確認します》

 先輩【後輩】

 姉【所有物】


「「……」」


 ……うん。 言いたいことは分かるよ担当の人。 でも言えないっすよねこんな堂々としてる姉相手におかしいとはさ。


「この子は私の弟なんだから、 つまり私に生殺与奪の権利があるということよ」

 《……はい。 両者共にお題クリアでーす! 》


 周囲から驚愕と悲鳴に近い声が飛び交じる。

 お題は何だ。

 あれは誰だ。

 愛子様と手を繋いでる羨ましい。

 鷺宮さんに男!?

 あれって噂の問題児じゃね。


 等など。

 ……モブとは?


「なんでこうなる? 」

「遅かれ早かれじゃない」

「初の共同作業だな! 誰か写真を撮ってくれないか」


 何が楽しいのか興奮してる先輩は置いとくにせよ、 姉の言いたいことがわからん。

 今日はわからないことだらけでもう疲れてしまった。


「……はあ」

「こっちがため息つきたいんだが? 」

「馬鹿ね。 ()()()()よ」


 謎だけ置いて先輩を連れ自クラスに戻る姉に不満しかないがぶつければ倍以上になって帰ってくるため抑えるしかない。 弟って弱い。


「戻って大丈夫だよ」

「はい」


 肩に手を置いて唯一労わってくれるのが担当の人だけとはな。 今から連れ去られて来た道を戻るのか。 憂鬱だ。


 とりあえずさ。





 いい加減、 モブを挟むの辞めないか?





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