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1話 初めての攻防

 結局、あの後すぐに終了のチャイムが鳴り、派手男が興ざめと言わんばかりに舌打ちして教室を出たことによって坊っちゃんも自席に戻り、不穏な空気は収まった。


「散々な目にあったなお前」

「楽しそうだな」

「お陰様で、退屈しなさそうだな! 」


 黙れ。 こっち見て言うな。 ニヤつくなチャラ男。


 あれからクラスの雰囲気は徐々に自己紹介当初の状態に戻りつつあったが、結局自己紹介はクラスの半数程度しか出来ず、二時間目の国語の先生がオリエンテーションしかないからと自己紹介の時間を作ってくれたことによって無事に終わった。


 それから、途中と昼休み挟んでぶっ通しで授業(といっても初回なので授業の進め方の説明とか)だったわけだが。

 ――結局、派手男はHR終わった後から帰ってくることはなかったな。


 初回の授業からサボりまくるとは、ちゃんと不良なんだなって感心したわ。


「駿〜、この後行くっしょ?」

「モチよ! 楽しみだな」


 放課後になるともう既に幾つかグループが出来ているのか、各々で集まっている。 まだ二日目な為、俺のようにぼっちでいる者もちらほらいるようだが、隣の席のチャラ男はやはり凄い陽キャだったようだ。


 ギャル系女子達に早くも名前呼びされているのである。 良く考えればチャラチャラしてるようで爽やかな笑顔で俺のようなモブ相手にも普通に話しかけてくるし、ムカつくけどイケメンだしな、ムカつくけど。

 所謂、今どきの男子高校生って感じで美意識も高そうだし、きっと運動も出来るんだろう。


 ――結局、第一印象のままだな。(パリピ感強めの陽キャチャラ男)


「あれ、政宗どこ行くん?」

「帰るんだけど」


 そんなことより、なんでお前も名前呼びなの?

 マジで友達なのかと勘違いしそうになったわ。 なんでそんなおかしな奴を見るかのように目を丸くしてるの? そんなに驚愕する理由が分からなすぎて俺も驚いてるよ。


「おいおい忘れたのか? この後放課後親睦会やろうって松原ちゃんが言ってたろ」


 いや知らねぇよ。 いや、覚えてはいたけど、そういうのは陽キャグループの専売特許というか、とにかく俺には縁のないものだ。 誘われたわけでもない。


「行かないけど」

「なんで」


 こっちがなんで? 別に全員参加でもないはずなのに、チャラ男の中では俺が行かないことがありえないみたいな感じになってるようだけど、本当になんで?


 こいつが無駄に俺に話しかけるから、恐らく親睦会で集まるであろうメンバー達がこちらの方に注目しだしている。

 ……こうなったら、のほほんと帰り支度をする後ろ席の自己紹介失敗した失神女子も巻き込んじゃおっかな。 多分俺と似た者同士だろうし。 友達欲しいよね? ね?


「はっ……!?」

「!?」


 なにかを察したのか、忍びの如くさっさと支度を済ませて教室を出ていってしまった。 間違いなく、じっと見つめていた俺以外には気づかれなかったなあの子。

 その存在感のなさを称え、俺をあっさりと見捨てたことは許すとしよう。(謎の上から目線)


「んじゃ行くか」

「行かないけど」

「なんで」

「行く理由が――」

「なんで」

「帰ろうかなって」

「なんで」


 ――なんだこいつ。

 違う選択肢を選ばないと永遠とループしちゃうのこれ。 チャラ男に求められても全く嬉しくないんだけど。


 本当に参った。

 選択肢ミスったみたいだ。 不満気なチャラ男が前を通らせず、後ろには親睦会に行くメンバーが俺達二人を興味深く見つめている。 また挟まれとるやないかい。

 挟むな。

 モブを、挟むな。


「山田 政宗君、だったよね」

「んんっ」


 最悪だ増えた。 よりによって既にクラスのアイドルとなりつつある松なんとかさんまでもが参戦しちゃったよ。 俺の平穏どこよ。


 それに、このチャラ男、なんとなく切れ者の感じがするんだよな。 俺の求めることをわかっている上で、俺の望まない形で面白おかしく場をかき乱そうとしている節がある。


「松原ちゃん参せーん」

「え?」

「いえいえ、どーぞどーぞ」

「?」


 ――だから今、俺の挟まれている様子(この状態)から更にアイドル的存在が現れたことで笑いが吹き出したんだろパリピ感強めの陽キャチャラ男。

 間違いない、性格悪いなこいつ。


「よかったら、山田君も親睦会来てもらえないかな」

「そーだそーだ」


 黙れチャラ男。 どっか行けカス。


 それはともかく、胸の前で両手を合わせ、上目遣いでこちらを見つめる松なんとかさん。 チャラ男の言う通り、クラス内の女子達は全体的に魅力的な子が多い印象があるが、その中でもトップクラスで人気になるであろうこの松なんとかさん。


 ……名前なんだっけ、松岡さん?


「山田君と今日全然話せなかったからさ、もっと仲良くしたいし……どう、かな?」

「なるほど」


 ――危険だなこの松なんとかさん。 つまり、『てめぇこのアイドル級に可愛い私と同じクラスになれておきながら、挨拶もしに来ねぇとは何事だしばくぞ』ってことか。

 不味いな、正直親睦会とか面倒くさ……いや、モブである俺が行っても困らせるだけだしな、うん。


「すみません。 この後ちょっと用事がありまして」

「そうなの?」

「申し訳ない」

「ううん。 突然誘っちゃったもん、こっちこそごめんね」

「誘ってもらえたのは嬉しかったッス」

「嘘つけ」


 黙れチャラ男ボソッと言うな。 さっきからなんだてめぇこら。


 残念そうに、申し訳なさそうにする松なんとかさんを見ると、とても申し訳ない気分になるが、別に嘘はついていない。

 本当にこの後用事があるんだ。


「これ」

「あー、入部届ね」


 スクールバックに入っていた入部届。 昨日の入学式の後に行われた部活動説明会によって一人一枚配られていた入部届を見せつけることによって、皆納得してくれたようだ。


「もう入る部活決めてんのか」

「こういうのは早いほうがいいから」

「んー、じゃあしゃ〜ないか」


 そうそう、しゃ〜ないからもう絡むなチャラ男。 そして今すぐ前から退けチャラ男。 目の保養になる可愛くてスタイルもいい松なんとかさんはまだいいが、爽やかチャラ男なんて見てもしゃ〜ないだろ。 イケメンは一人でも多く滅びればいいのだ。


「じゃ、連絡先交換しようぜ」

「えーっと――」


 失せろチャラ男。 普通に嫌ですが?


「いいねっ! そうすればこれから何時でも連絡取り合えるし、私とも交換してほしいな」

「是非」


 仲良くなるなら連絡先交換くらいしなきゃな!


「今拒否ろうとした? 拒否らんかった?」

「そんなまさか」


 ちっちゃいこと気にすんなよチャラ男。 そんな気持ちはわからなくもないみたいな感じでニヤついて言うな松なんとかさん困ってんじゃん。 元はと言えば俺のせいだけど。


 冗談はともかく、高校入って直ぐに連絡先交換が出来るとは思わなかったが、チャラ男はともかく、美少女と交換出来たのは嬉しいかもな。

 まあ、ちらっと見たら友達リストが俺の何倍か分からなくなるくらい多かったから、その他大勢であることは変わらないけど。


「じゃあクラスのグループにも追加したから、これから改めてよろしくね山田君」

「こちらこそ」

「えへへっ。 これでクラスの皆全員と交換できちゃった」


 頬赤く染めて言わんといてよ。 めちゃ可愛いやんけ。

 しかしまじか、それはつまりあの坊っちゃんとも、サボりの派手男とも連絡先交換したってことか、まじすげぇな松なんとかさん。


「連絡するかんな政宗ー」

「黙れチャラ男」

「え」

「ん?」

「……今なんか聞こえたような」

「気のせいでは?」


 うんうん気のせい気のせい。 癖になりつつある黙れチャラ男をとうとう口に出してしまったぜ。 運良く聞こえていなかったようだな危ない危ない。 ――松なんとかさんが苦笑いしている気がしなくもないが、気のせいだな、うん。


「いやぁしかし、この一年は面白くなりそうだな」

「うんっ。 楽しい一年になるよね、絶対」

「だよな、面白い奴もいるみたいだし?」


 こっち見んなチャラ男。

 もしかしなくてもお前が変に俺に関わってくるせいで、他の陽キャ集団からの注目の視線が集まりやすいんだよ。 嫌だぞ、なんであのモブ君、爽やかイケメンと仲良さそうなんだろう……もしかして、凄い奴なのでは? みたいな感じになったら俺はこのチャラ男を一生恨むね。


 少なくとも、この天然なのか演じてるのか未だに分からない松なんとかさんのこちらを観察するかのような視線も、チャラ男が居なければこれ程見られることは無かったはずだ。

 俺はその他大勢のモブでいいのに……。


「あー。 じゃあ、行くんで」

「あ、うん! また明日ね山田君」

「またなー、政宗」


 黙れチャラ男。 そして松なんとかさんまた明日!

 全く、隣の席には恵まれないわ、派手男と坊っちゃんの睨み合いに巻き込まれるわ、クラスから無駄に注目されるわと、ろくな目に遭わねぇな。


「またねー」

「また明日〜」

「……ッス」


 ――良い人は多そうかな? いや、陽キャグループの中でもトップカーストの位置にいるであろうチャラ男と松なんとかさんが挨拶したから一応したって感じか。

 これからの学校生活で本性さらけ出すんだろうなぁやだなぁ怖いなぁ関わりたくねー。


「――あれ?」


 まあいい。 とりあえず今日は無事に、とはいかなかったが、なんとか一日を終えられた。

 さて、これからが本番だ。 早く家に帰って、届いているであろう新しいゲームを一刻も早くプレイせねば! あー忙しい忙しいー、いやっふぅ!!



 ――だからな、チャラ男。 今更気づいたところでもう遅いぜ。 遅すぎるんだぜ。

 誰がいつ、()()()()()()()()()()と言った?

 俺はただ、入部届を()()()()()だけなんだぜ。

なんなら、部活に入るつもりなんてさらさらないぜ馬鹿め。


「さっきあいつ、帰るって言わなかった?」


ガラガラと教室の扉を閉めきる前にボソッと聞こえたその声に、俺の固まりまくった顔の表情筋がやっと緩んだ気がした。

あばよ、チャラ男!



時々読み返しては、所々修正するかもです。


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