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14話 よにんは娯楽部

 


 本田先生曰く、 娯楽部としての活動は正式に生徒会でも認められたとのこと。 しかし名前や活動内容に疑問点が挙がり、 色々話し合ったことで決められた決定事項があると。

 それを先生自ら伝えに来てくれるとは思わなかったけど。


「顧問としての初の仕事だ。 任されたからには出来ることはするぞ」


 朗らかに笑いながらそんなことを言う先生と比べて、 俺はなんて心が腐っているのだろうか。 俺だったら面倒くさくて部長に全部任せてしまうけど、 本当に良い先生だ。


 決定事項は幾つかあるが、 簡単にまとめるとこうだ。


 ・基本的に部員の募集は不可。

 ・部活動紹介に名前は載っけられない。

 ・活動拠点は変わらず今まで通りの部室。

 ・活動日は自由だが、 時々生徒会他の仕事に協力する。

 ・部費は今のところ無しとする。 (カンパはご自由に)

 ・現部長卒業後の活動については認められない。

 ・活動内容は部長にお任せ。 (勝手にしろby副会長)

 ・基本、 学業や行事を優先。

 ・学外の課外活動においては顧問の同行が必要。


 ……等など。 多分まだなんかあったと思うが馬鹿の俺にはこれ以上はまとめきれなかった。


 なんかあったら松原さんあたりが教えてくれんだろふははっ。 (塵野郎)


 部員の募集を不可にするくらいなら最初から先輩一人に勝手にやらせとけば良かったとは思うが、 恐らく部員が集まらないことを前提に考えてたことと、 学年でも学校全体でも既にアイドルのような人気力と認知度を誇る松原さん目当ての邪な考えを持つ生徒の入部を禁止する為だろう。


 本田先生という善人で大当たりの顧問に、 頭が良くて顔も良くてとにかく目立つ銀髪美少女に、 見る者全てを魅了するマドンナに、 二人と比べたら目立たないがよく見たら先輩並に細く見えるのに松原さん以上の豊満なお胸をお持ちであるはずの隠れ巨乳陰キャ。 ……猫背直して髪整えて脱いだらあの子、 すんごいと思うんだ。 はっきりわかんだね。


「ん?……」


 俺要らなくね? すっごく要らない子だよね。

 モブの中のモブであることもそうだが、 そうでなくても周囲から、 特に男子陣からえげつないほどのヘイト集めますよねこれ。


 もしかしたらこれらの決定事項は部員を満遍なく全員守る為の処置だったりもするんかな。 姉さんと先輩が中心になって色々考えているんだとしたら、 こんな考えに至っても変にはならない、か。


 ま、なんだっていいか。とにかく五月から活動っすねはいはい。 活動は月一以下でおなしゃす。






 ◈◈◈◈◈






 放課後の居残り補習で疲れたが、 デザートは別腹と同じでゲームをして疲れを吹っ飛ばしていた時には既に夜中。 スマホからメールの通知が来た。


 先輩からなので無視するわけにもいかないしコントローラーから離してメールを開く。 間違いなく部活のことだろう。


【部長先輩】

[部活専用のグループを作ったから、 政宗も入って欲しい]

「了解っと」


 送った直ぐに通知が何度が来た。 仕事が早い。


【よにんは娯楽部】


 プリキュアかな? 何故わざわざ名前の前に人数入れる必要があったのだろうか。 とにかく先輩がとても生き生きとしているのだけは伝わって来た気がする。 本当に部員揃って活動出来るのが嬉しいんだな。


【部長先輩】

[グループ通話を開始しました]

「え」


 ……これ、 出なきゃいけないやつかな。 通話開始して一分経つ頃には俺以外の三人が通話に入っている様子が伺える。 誰もメールを打たないから通話入るしか道はないんだが、 ぶっちゃけ嫌だ。


 よく考えろよ。 女三人の中に男一人で通話に混じるんだぞ? 今の俺のこの状態から勇気出して通話に参加することが出来るのは陽キャだけだ。 俺には無理だモブだぞ。


【松原 詩音】

[山田君ー! ]


 しまった。 モタモタしてたら松原さんから個人の方でメール来ちゃったよ。 ただでさえ毎日メール来るようになって今日の放課後ぐらいに来てたメールにも反応してなかったのに、 追い討ちで更にメール来ちゃったよ。


「無視でいいか……? 」


 あっ、 ごっめーん寝てたー笑笑って明日の朝送ればいいか。 俺がグループ入った直ぐに通話始まっちゃったけど、 放課後の補習を理由に疲れてたとかで言い訳するとしよう。


 悪ぃな松原さん。 俺、 キミを無視することにするよ。 うへへ日頃の鬱憤を少しだけでも晴らしとかんとなぁ。


「ん、 また通知」


【松原 詩音】

[ふーん。 無視しちゃうんだ]

[そっかそっかぁ]

[じゃあ……明日クラスで、 皆の前で、 私達を無視した言い訳を聞かせてもらうね〜(⑉・̆༥・̆⑉)]


 グループ通話参加ポチッとな! ?

「も、 もしもし」

 《おっ、 やっと参加してくれたか政宗》

 《おっそいよー山田君! できるだけ山田君の都合に合わせて通話始めようって意見した私の気遣いぃ〜》

 《……》

「す、 すみませんでした」


 めちゃくちゃ怒でしたわ松原さん。 電話越しでも頬を膨らませてプンスカしてる様子が目に浮かぶ。

 愉快そうにしてる先輩はともかく、 無言の妹さんの考えが読めず逆に気まずい。 実は一番怒ってたりしたらどうしよ。 似た者同士で企画係仲間である俺に免じて許してくれ。


 《さて、 皆集まったところで娯楽部の活動内容について説明する》

 《いえーいっ》


 楽しそうだなこの人達。 妹さんは全く声出さないけど息してんのか。 全くの無言の人が居て俺はそちらの方がすごく気になる。


 そもそも、 姉妹だし同じ家に住んでるのでは? 一人部屋だとしても、 わざわざそれぞれの部屋から電話繋いで話してるって考えたらすごいシュールだな。


 《と、 言っても以前話した通りで部長の私がしたいことをするだけの部活だったからな。 今使用している部室も、 私が学校でも一人の時間を確保出来る為に倉庫替わりになっていた教室を一時的に貸して貰ったに過ぎん》


 今考えると、 自分のしたいことを出来る部活動を作るってやばくね? そんな部活を作る先輩もやばいが、 それを許可したウチの高校も結構やばい。 もっと言うなら、 あの暴君の姉を生徒会に入れてるのもちょーやばい。


 《一人の時間? 》

 《ん、 ああ……一応、 学年首席で歴代でもトップの成績を取ってるらしくてな。 担任や校長等からあれこれと褒められ、 成績を保持出来る為にと何か望みはないかと聞かれてな。 ()()は、 家族以外に興味が無く周囲の声がうるさくて仕方なかった為、 一人になれる場所が欲しいと願ったら……教室貰ったんだ》


 サラッととんでもないこと言ってんなこの人。 そしてサラッと過去に病んでた疑惑が出てくるような事言ってるけど、 まあ今は問題無さそうだしいいのかな。


 《えぇ〜凄いねそれ! ? あ、 でも今回の事で一人になれる時間減っちゃうのは……》

 《そこは気にしないでくれ。 今は昔と違う。 私はキミ達と共に部活動が出来ることを本当に心の底から喜んでいる》

 《聖奈ちゃん……》

 《――それに、 ()()と青春出来るんだ。 これ以上の喜びはないさ》

 《聖奈ちゃん好き! 》

 《フフ、 私も好きだよ。 詩音》


 松原さんの先輩への好感度が上がった。

 先輩の松原さんへの好感度が上がった。


 いや適当に言ってるだけだけど、 本当にそんな感じに思えるような百合百合展開にもなりそうな会話してんなー青春してんなーこいつら。 俺と妹さんが空気のようだ。


 知ってるか? これ、 グループ通話なんだぜ。 この会話を後二人聞いてんだぜ。 その内の一人、 男なんだぜ。

 美少女同士のイチャイチャ助かる。 でも早く活動内容について説明してくんね? ゲームしてぇ……。


 《あ、 あの部活内容は……》

 《おっと、 すまんすまん忘れたよ》

 《話逸らしちゃってたね、 ごめんね忍ちゃん山田君》

 《い、 いえいえっ》

「お気になさらず」


 よく言ったぜ妹さんんん! アンタ本当にすげぇ奴だ。 全く会話に混じらないから妹さん実は死んでる説を唱えようとしかけた俺を許してくれ。


 電話口から何度か咳をする先輩の声が聞こえる。 意識を切り替える為だろうか。 とりあえず、 何とか本来の目的の話題に入れそうだ。


 《昨年とは違い、 正式な部活動として生徒会で受理されたこともあり、 私も部員三名の部長としての自覚を持って有意義で楽しい部活にしたいと思うわけなんだが――》

「……することが思いつかないんですね」

 《むぐぅ》


 だから今回のようなグループ通話で俺達に意見を求めたと。 俺の指摘にぐうの音も出ない様だが、 娯楽部はつい最近出来たばかりで生徒会と話し合って決まりも作っているのだ。 先輩は充分やっていると思うので別に責めてるわけでもないからそんな反応されても困る。


「別に責めてるわけではなくてですね」

 《そうだよ聖奈ちゃん。 ()()()()は私達の為に一生懸命部のことを考えて動いてくれた人からのグループ通話を、 SOSを無視しようとしたくらいなんだから! それと比べたら聖奈ちゃんはすっごく頑張ってるよっ》


 あははー。 すっごい明るい声で励ましてて優しいはずなのにめちゃくちゃ責められてる気分になるなぁ。 誰かさんって誰だろうなぁ知らんなぁ。

 クスクスと控えめに笑う姉妹は、 笑いのツボが一緒のようですね仲良しか。


 俺にだけ厳しい松原さんとか、 特別感あるのに全く嬉しくないわ。

 でも俺の自業自得なんだよなぁ。


 《フフ、 詩音は政宗に対しては遠慮が無いんだな》

 《うぇっ! ? べ、 別にそんなつもりはないというか……皆同じように接してるつもりなんだけどなぁ》

 《そういうことにしておこうか》

 《もぉー聖奈ちゃんっ》

 《部長ジョークだ》


 なんだ部長ジョークって。 部長になれて嬉しかったのかわからんが、 いいぞもっと言ってやれ。 無意識に人の事を軽く揶揄しちゃうような松原さんとか多分誰も求めてないて。


 え、 俺だけの特別? やかましいわ。 最近本当に俺に対してだけ松原さんが松原さんしてないからな。 一体どこで対応を間違えてしまったのか。 ……全部チャラ男の西谷が悪い、 ってことにしとこか。


 責任転嫁は自分の心を守る為に必要なことさ。 フフン。


【松原 詩音】

[グループ通話終わったら無視したことについてお説教するからちゃんと電話出てね♡]


 おっふ。 心読まれてます? 楽しそうに明るい声で話してるはずの松原さんから個人でメール送られて冷や汗止まらん。 ふひひ、 さーせんした。


 《それで、 活動内容についてなんだが……とりあえず決定事項にあった生徒会や他の委員会の手伝いでもしようかと思ってな》

 《良いと思うよっ。 奉仕活動の一環になるし》


 まあやりたいことを出来る自由な部活だとしても、 急に「そうだ海に行こう! 」とか変な事言い出されたら困るし、 結構まともな提案で有難いけど手伝いって何さ。


 《五月から()()()()()()の活動が活発し出すんだ。 朝に挨拶をする習慣を作ろうということで校門付近で横並びになり、 登校する生徒達や通りかかる人々に向けて挨拶をする活動をしていてね》

 《結構大変なことしてるね》


 いや全くだよ。 陰キャの中でもぼっちの子は挨拶だけでも他人から声かけられると心がキュッとしてビビって挙動不審になるもんなんだぜ? 大切なことではあるんだろうけど、 毎日校門を通る度に声かけられるのは地獄じゃないか。


 ……いや、 ぼっちの陰キャにとっては声をかけてもらえるだけでも嬉しいことなのか。 俺は自他共に認めるぐらいに性格が悪いからな、 姉程じゃないけど。 赤の他人から声かけられても鬱陶しく感じるような人間だからな。 性格悪いなー、 姉程じゃないけど。


 《それは本来ついでであり、 生徒達の遅刻欠席等を教師より先に把握することを目的としているんだが、 学校の規則・校則を守る為に大体月一のペースで服装チェックと、 場合によっては持ち物検査をしたりもするんだ》

 《ひぇっ……! 》

 《忍、 あくまで制服を改造していて明らかに風紀を乱してると判断された者が対象になるはずだからキミは大丈夫だよ。 安心していい》


 ほっとした様子の妹さんになんだかほっこりした。

 しかしとある委員会って、 もう答え言ってるようなものだよな。 朝の挨拶運動に服装チェックとかそれ以外思い浮かばない。


 《服装チェックが何時行われるかは委員長と副委員長次第で異なり、 抜き打ちのようなやり方らしいんだけどね。 何故か生徒会副会長の愛子が五月最初の服装チェック日を知っていたので我々も参加させてもらうことにした》

「え、 ちょっ――」

 《えぇー凄い凄い! 私やりたーいっ》

 《ふえぇ》


 ちょっと松原さん被せてくんなて。

 そもそもなんで姉さんが知ってたのかとか、 どう考えてもお宅の妹さんが一番苦手としてそうな他人とのコミュニケーションを求めるような活動なんですけど。 俺もやりたくないしとにかく面倒くさい! 断固反対!


【松原 詩音】

[明日頑張ろうね♡ 朝早くて大変そうなら一緒に登校しよっか?モーニングコール要る〜? ]

[大丈夫ッス]


 クソが電話に集中してればいいものの、 こちらが行動に移す前にことごとく潰してきやがって松原さんめ〜。 ……正直、 モーニングコールで朝から可愛い声聞けるのは個人的には嬉しかったりもするが、 諦めよう……っ!


 だって、 どうせ姉が朝早く起こしに来るしな、 チクショー!


 《では決まりだな。 娯楽部最初の活動内容は、 風紀委員の抜き打ち服装チェック並びに、 挨拶運動一日体験だ! 》

 《おおー! 》

 《……おー》

「……オワタ」


 楽しそうな二人とは対極のイヤイヤ感満載の二人で良い感じバランスの取れた変な部活動生活が始まるようだ。


 ――当日休んでいいすか?



 その後、 少し話して通話が終わり、 ほっと息を吐いてゲームしようとして松原さんから通話がかかってきて無事にお説教を受けましたとさ、 まる。


 《プンスカ! 》

「ドケザ! 」


 多分こんな感じのやり取り。




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