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琥珀糖に舞う、金桂と紫子さん。  作者: YUQARI
第一章 懐かしいあの日の思ひ出。
4/43

✤玉垂《たまたる》の記憶✤

 【猫もどき】の名前は【玉垂(たまたる)】と言うらしい。

 朝露の玉が垂れるように可愛らしい……と名付けられたようだけれど。

 

「……可愛らしい……?」

 

 マジかよ。

 瑠奈(るな)さんは唸る。

 

 どう見ても【可愛らしい】から遠く離れたところにいる目の前の猫……かも知れない生き物を見て、思わず呟いた瑠奈(るな)さんのその言葉に、玉垂(たまたる)が照れた。

「……」

 

 クネクネと揺れながら、耳をパタパタさせている。

 

「……」

 喜んでいるようだから、もう、何も言うまい……。瑠奈(るな)さんは下を向く。

 

 けれど真っ黒くて、でっかいその体は、猫と言うより熊に近い。だって二本足で立ってるし。

 可愛い……と言うよりかは、どちらかというと恐怖を掻き立てられる。

 

「……」

 けれど瑠奈(るな)さんは、あえて(・・・)言葉を呑み込んだ。

 スルー出来た自分を密かに褒めた……。

 

 

 

 まぁ、それはさておき……。と紫子(ゆかりこ)さんは、話を進めた。

 

玉垂(たまたる)さんは長生きで、今年四四〇歳。」

「こら。」

 瑠奈(るな)さん、遂に突っ込む。

 

 確かに見た目は非常識だけど、年齢まで非常識とか。

 

 流石に四百超えは、言い過ぎだろう……と思ったけれど、突き詰めるのも馬鹿らしくなって、瑠奈(るな)さんはズズズ……と冷めた抹茶を飲み干した。

 

「……」

 

 冷めてても その抹茶は美味しくて、『もう一杯飲みたいな……』と玉垂(たまたる)を見れば、玉垂(たまたる)は、大きな肉球をニギニギしながら『まだいるかい?』とばかりに首を傾げ瑠奈(るな)さんを見ている。

 

「……まだ、飲みたいです」

 瑠奈(るな)さんは、そんな玉垂(たまたる)にスススと茶碗を返した。

 

 玉垂(たまたる)は、瑠奈(るな)さんから茶碗受け取ると、それを丁寧に洗い清めてから再び抹茶を点ててくれた。

 

 

 シャカシャカシャカシャカ……

 

 

 シュンシュンとお湯の沸く音と、抹茶を点てる音に、瑠奈(るな)さんは、しばし心を奪われる。

 

「あぁ、秋なんだなぁ……」

 思わずそんな声を漏らす。

 

「九月のお彼岸の頃になると、ちょうど庭の薄黄木犀(うすぎもくせい)の花が悲しく香るから、玉垂(たまたる)さんは嫌な事を思い出してしまうんですって。

 だから来てくれて嬉しいって」

 

 紫子(ゆかりこ)さんもそう言って、飲んでしまったお茶碗を返しながら おかわりを頼む。

 

 

 どうやら紫子(ゆかりこ)さんには、でっかい猫の玉垂(たまたる)の言葉が分かるようだ。

 

「……」

 けれど瑠奈(るな)さんには分からない。

 なんで紫子(ゆかりこ)さんは、分かるのだろう……?

 

 玉垂(たまたる)の言葉が分からないから、だから紫子(ゆかりこ)さんの話が本当なのか、瑠奈(るな)さんには判断する事が出来ない。

「……」

 

 

 玉垂(たまたる)は、おかわりを頼まれたのが嬉しいのか、ゴロゴロと喉を鳴らしたけれど、頭の上の耳がシュン……と垂れていた。

 

 猫のようなその顔は、表情なんて全く分からないのだけれど、けれどその耳を見ると、どうやら紫子(ゆかりこ)さんの話は、本当らしいと言うことだけは、なんとなく分かった。

 

「嫌な事……?」

 瑠奈(るな)さんは、呟く。

 

 確かに四四〇年も生きていれば、嫌な出来事は一つ二つでは おさまらないかも知れない。

 ……いや、その話が本当なら(・・・・)の話だけれど……。


 

「そう……。昔、ね──」

 

 そう言って語り出したのは、いつも無口な紫子(ゆかりこ)さん。

「……」

 瑠奈(るな)さんはそんな紫子(ゆかりこ)さんの様子に、少し驚いたけれど、話を聞くことにした。

 

 

 でっかい猫が作る美味しい抹茶を飲みながら、昔話を聞くのも悪くない。

 

 瑠奈(るな)さんはそう思って、紫子(ゆかりこ)さんの話に耳を傾けた。

 

 

 

         × × × つづく× × ×

 

   ┈┈••✤••┈┈┈┈••✤ あとがき ✤••┈┈┈┈••✤••┈┈



     お読み頂きありがとうございますm(*_ _)m


        誤字大魔王ですので誤字報告、

        切実にお待ちしております。


   そして随時、感想、評価もお待ちしております(*^^*)

     気軽にお立ち寄り、もしくはポチり下さい♡


       更新は不定期となっております。



       9月のお彼岸……と書きましたが

           ここ九州では

      キンモクセイは10月初めに香るかな。

        ……と、思う。けど、どうだろ?

     そこまで、気にしたことなんてなかったもんね?


     あるお寺のウスギモクセイの花がみたくて

       今か今かと待ってるんですけど

        どうだろ。10月なのかな?



        てか、

      今からやっと、本題だったりする……。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 4/5 ・カワイイはず。少々グロテスクなペットでも、猫パワーで相殺できるはず [気になる点] トトロ、猫バス、祟り神、みたいな何かを感じる
[良い点] のんびりお茶、いいですね。 [気になる点] 2022-440=1582年、本能寺の変かっ。そろそろ、手紙は?
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