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琥珀糖に舞う、金桂と紫子さん。  作者: YUQARI
第九章 無実の罪。
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✤忍び込んだお寺の中で✤

 あの時の僕は、ただただ状況の変化に驚いて、裏口からそっと中へと入った。

 

 日はもう沈み切り、辺りは真っ暗になっていたから、静かにこっそり……それから目を少し細めて忍び込めば、真っ黒い体の僕は、誰にも気付かれずに お寺の中に入ることが出来た。

 

 お寺の中は、懐かしい盛誉(せいよ)の匂いでいっぱいだった。

 物々しい状況だったけれど、僕の心は弾んだ!

 

 遂に会えるんだ! 盛誉(せいよ)に会える!!

 高鳴る胸をおさえながら、僕は盛誉(せいよ)を探した。

 

 盛誉(せいよ)! 僕、ちゃんと一人で帰って来れたよ!

 

 

 

 盛誉(せいよ)は、本堂にいた。

 大きな仏像を前にして、いつもの様にお経を唱えている。

 

 

 

 ──盛誉(せいよ)だ!

 

 

 

 僕は喜び勇んで、盛誉(せいよ)に駆け寄ろうとした、正にその時。

 横から変な影が飛び出してきた!

 

『!』

 

 僕は慌てて立ち止まる。

 見ればその【影】は、あの千右衛門だった!

 

 

『!?』

 

 

 

 

 

 ……あっという間の出来事だった。

 

 

 

 止める?

 

 止める事なんてまず無理だ。僕、猫だし。

 気づいたとしても、驚いて逃げるどころの騒ぎじゃない。

 

 

 ましてや盛誉(せいよ)は、お経を唱えていたんだよ?

 

 

 音もなく背後にサッと近づいてきた刺客を、どうやったら躱せるっていうの?

 そんなの、絶対に無理だよ……。

 

 

 だから斬られた。

 

 僕の目の前で盛誉(せいよ)は、

 信じられないほど呆気なく、千右衛門に斬られた。

 

 

「ぐ……ふ……っ、」

 

 盛誉(せいよ)は小さく呻き、その場に崩れ落ちる。

 

『!』

 僕は目を見開いて、ただただそれを見た。

 

 

 盛誉(せいよ)は、ひどくゆっくり

 倒れていった。

 

 

 何が起こったか……なんて、直ぐに理解できなかった。

 

『……』

 

 呆然と盛誉(せいよ)を見つめる僕のすぐ傍で、野太い声が響く。

 

 

 

「寺は焼き払え!

 遺体はそのまま、炎で全てを浄化する」

 

 

 

 ビュン……と刀を一振(ひとふり)して血糊を吹き飛ばし、千右衛門は叫んだ。

 

「は! 準備はできております」

「よし。

 しばらく燃え落ちたのを確認した後、撤退する!」

「は!」

 

 バタバタと多くの人が慌ただしく移動し、そして辺りは一気に静かになる。

 キーンと耳鳴りがする程の静けさに、僕は恐ろしくなって目眩がした。

 

 

 

 

『……みゃあ』

 

 

 目の前が真っ暗になって、倒れそうになるのをグッと堪え、僕は取り残された盛誉(せいよ)に、恐る恐る近づいてみる。

『……』

 盛誉(せいよ)はピクリともしない。

 

 もうダメだって、その時思った。

 

 傷は深い。

 倒れた盛誉(せいよ)の周りには、信じられないくらいの量の血溜まりが出来ていた。

 しかもその血溜まりは、時間を追うごとに大きく拡がっていく。

 

『……っ、』

 

 助かりっこない。

 こんなの、絶対、助かりっこない。

 

 

 

 

           × × × つづく× × ×

 

   ┈┈••✤••┈┈┈┈••✤ あとがき ✤••┈┈┈┈••✤••┈┈



     お読み頂きありがとうございますm(*_ _)m


        誤字大魔王ですので誤字報告、

        切実にお待ちしております。


   そして随時、感想、評価もお待ちしております(*^^*)

     気軽にお立ち寄り、もしくはポチり下さい♡


        更新は不定期となっております。

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