✤冤罪だった、盛誉✤
盛誉は無実だった。
後日詳しく調べた四郎さまと、その側近の人たちが言うのだから間違いない。
だから四郎さまは、慌てて盛誉成敗中止の書状を書きしたためられた。
「これを持って、米良の千右衛門を止めよ」
当時、盛誉を討つために出陣したのは、米良(地名)にいた千右衛門という人物だった。
三日月城にも当然兵はいるんだけど、盛誉討伐の命を下したのは千満さま。
千満さまは確かに嫡出子ではあったけれど、当主ではない。
だから当然城の兵を自由に動かせるわけはないので、城から離れた この米良の地から、討伐隊を編成した。
そしてその千右衛門を追いかけ、盛誉討伐中止の命令を伝える任にあたったのが、犬童九助その人だった。
馬を駆る速さは、城内一。
……いや、肥後広しと言えども、これほど馬を操れる者はそうそういない……と言われる程の人物だった。
だから命じられた九助も、自信満々で答えた。
「お任せ下さい! 私が必ずや千右衛門にこの討伐中止の書状を渡してみせまする……!」
「九助。奝然坊盛誉は冤罪である。
彼の者は相当な人徳者だ。絶対に、死なせてはならぬ!」
「はっ!」
九助はその書状を懐に大切にしまうと、風が吹きすさぶように駆けていった。
けれどその道中で、問題が起こってしまう。
三日月城から盛誉のいる普門寺までは、六里(二十五キロメートル)程ある。
今風に言えば、車で四十分は掛かるくらいの距離……と言えば分かりやすいかな?
だから本来なら、馬替えのために設置された【駅】で馬を変える必要があったんだ。
だって疲れるだろ? 馬は機械じゃないし、ガソリンだって搭載されていない。
現代の車で四十分なら、馬ならもっと時間が掛かる。
当然、水を飲ませなくちゃいけないし、休息だって必要だ。
だけど事は一刻を争った。休んでる暇なんかない。早駆けなら尚のことだ。
だから当時どこの地域でも、この【駅】と言うのがあった。
だいたい三里……十五キロメートル単位でこの駅は置かれる決まりになっていた。
馬が一日三十キロメートル移動できると言うから、まぁ、ちょうどいい設置具合なんじゃないかなって思う。
だけどそこに、……その駅に、馬が居なかった……。
なんの不手際か、それとも陰謀なのか、乗り換えるための馬が駅にはいなかったんだ!
九助は焦った。
「なぜ、馬がいない!?」
「そ、それがそのぉ、お侍さま……。
これには深い事情がありまして……。その、あのぉ……」
そこにいた馬丁に理由を聞くも、要領を得ない。
「えぇい! もういい……!」
九助は怒りにまかせ馬丁を蹴り飛ばし、再び馬に跨った。
疲れ果てていて、やっと休めると思っていた馬は悲鳴を上げる。
「……っ、」
けれどそんなことに構ってはいられない。
九助は唇を噛み締めて、愛馬に鞭打った。
「あ! お侍さま……っ!」
時は一刻の猶予もならない。
なんとしても、千右衛門が盛誉を斬りつけるその前に、この書状を渡さなければならなかった。
馬丁の叫びを背に、九助は再び馬を駆った。
幸いにも普門寺までの距離は六里ほど。
馬が走れない距離……でもなかったから、九助は大丈夫だと思った。
「どうにか持ちこたえてくれよ……!」
祈るような気持ちで、あの日の九助は馬を駆ったんだ。
× × × つづく× × ×
┈┈••✤••┈┈┈┈••✤ あとがき ✤••┈┈┈┈••✤••┈┈
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はい。この部分は、全くのフィクションです。
私が勝手に考えました。
【駅】の間隔はこの通りですけど、
九助の通った道に駅があるかとか
そこに馬はいたか……とか、
九助が馬替えしようとした……
とか言うのは、全く分かりませんし
そもそも四郎が書状を出したのかすら分かりません。
……いや出すだろなと。
出てないなら、湯山の侍が勝手に
『中止の命令が出た』って口だけで言って
止めればえばいいだけの話だし?
だから【書状】はあるはずだと思うんです。
そしてこの【書状】が、今回のお題【手紙】に準じます。
玖月善女が盛誉に手紙出してますけどね。
あっちはたまたまです。たまたま。
こっちが本命の【手紙】です。
(出すの遅……( ̄▽ ̄;))




