✤時は現代に戻って……✤
コトリ……。
と紫子さんは持って来たカバンの中から、ソーダ水と硝子のコップを取り出す。
コップは小ぶりで、コロンとしていて可愛らしい。
底の方が平ではなくて、緩やかな曲線を描いているものだから、テーブルに置くとそのコップは、ユラユラと優しく揺れた。
「……」
コップ、ここにもあるんじゃないの? と言おうとして、瑠奈さんは黙り込む。
だってこのコップ、紫子さんのお気に入りだから。
それは全部で三つあった。
紫子さんのと瑠奈さんと、それからでっかいでっかい【猫もどき】の垂玉さん用。
「……で? それからどうなったの?」
『……』
瑠奈さんが聞くと、垂玉は顔を下げて耳を悲しげに伏せた。
「……」
あぁ、これは良くない話なんだろうな……。と瑠奈さんは溜め息を吐く。
紫子さんは丸く小さな可愛らしいそのコップに、金木犀の琥珀糖を入れながら、ゆっくり口を開く。
「……盛誉は討たれたの、よ」
「!」
静かなその声に、瑠奈さんは目を見張る。
そうだと思っていたけれど、いざ紫子さんの口から聞くと何故だか衝撃的だった。
「……玉垂」
瑠奈さんは、ゆっくり玉垂を見た。
けれど玉垂の表情は見えない。
背中を向けていたから。
玉垂は、ゆっくり沈んでいく太陽の方を見ていて、顔は全く見えない。
見えるのは、おおきな大きな黒いその背中だけ。
そしてその背は、なんだか泣いているようにも見えた。
× × × つづく× × ×
┈┈••✤••┈┈┈┈••✤ あとがき ✤••┈┈┈┈••✤••┈┈
お読み頂きありがとうございますm(*_ _)m
誤字大魔王ですので誤字報告、
切実にお待ちしております。
そして随時、感想、評価もお待ちしております(*^^*)
気軽にお立ち寄り、もしくはポチり下さい♡
更新は不定期となっております。




