✤おすそ分け✤
琥珀糖は、すぐには仕上がらない。
少なくとも二日から三日、風通しのいい日陰で、その水分をとばすのです。
一週間もすれば、滑らかな琥珀糖が出来るけれど、そんなに待ってはいられない。
日持ちはするけれど、やっぱり心配だから、すぐに食べてしまう。
けれど今日は、凄く上手に出来ました。
誰かに見て欲しくなって、紫子さんは『うーん』と考える。
瑠奈さんはいつも一緒にいるから、あえて見せなくても、嫌でも見に来るはずなのです。
そうじゃなくて、別の誰か。
「……あ」
紫子さんは、小さく叫ぶ。
いましたいました。
とってもいい人物(?)が!
「ふふっ」
紫子さんは小さく微笑むと、支度を始めます。
作った金木犀の琥珀糖をタッパにならべ、それをオレンジ色の可愛らしいハンカチで包みました。
「あら紫子さん? どこかへ行くの?」
「……」
見上げるとそこには瑠奈さんが。
紫子さんは ふわりと微笑んで、こくりと頷いた。
「……」
瑠奈さんは、すぐに察します。
あぁ、あのデカ物の所か……。
紫子さんにはあまり友だちがいない。あまり喋らないから当然です。
唯一の友だちは、あの丘の上の大きな大きな 猫のような熊のような生き物だけ。
出来上がったばっかりの琥珀糖を持っていくのなら、きっとそこに違いない。
「……私も行く」
「……」
「……」
返事はないけれど、そもそも紫子さんに断りを入れる必要もありません。
だって瑠奈さんだって、あのデカ物と知り合いだから。
今年の七夕に、みんなで流しそうめんパーティーを楽しんだあの日から、瑠奈さんだって、あの不思議な生き物とお知り合い。
確か、あのデカ物の名前は……。
「……」
瑠奈さんは、小首を傾げて考える。
…………えっと、なんだっけ?
「……」
名前は知らないけれど、きっと大丈夫。
だって知り合いだから。
そんな無責任なことを思いながら瑠奈さんは、長い髪をサラサラとなびかせて、出掛ける紫子さんの後を慌てて追い掛けました。
まだまだ日差しは強いから、瑠奈さんは自分の帽子の他に、紫子さんの帽子も掴んで、外へと出る。
外は優しい風が吹いていて、
どこからか金木犀の花の、
甘い匂いを運んでいたのでした。
× × × つづく× × ×
┈┈••✤••┈┈┈┈••✤ あとがき ✤••┈┈┈┈••✤••┈┈
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