✤お兄さんの宗昌さま✤
湯山宗昌。
盛誉のお兄さん。
盛誉は出家したけれど、この宗昌さまは、地頭であった父、宗豊さまが亡くなられたあと、その家督を継いだ。
だから先日亡くなられた義陽さま……相良家の直接の家臣にあたる。
相良家当主が亡くなられて、【お悔やみを申し上げる】と言うけれど、ただの家臣が当主の義弟である頼貞さまにそうそう簡単に会えるわけがない。
宗昌さまには、それなりに力があった……と思って間違いない。
そんな盛誉の兄、宗昌と盛誉は、状況こそ この相良家の兄弟と同じような道を歩んではいたけれど、兄弟仲の悪い相良家とは違って、二人は仲が良かった。
盛誉ってばさ、お母さんの玖月善女さまには会いに来ないのに、このお兄さんとは結構よく会ってたみたいなんだよね。どういう事だろ。ずるいよね。
僕はそれを聞いて、ふてくされる。
『みゃあ。みゃあ……!』
「! ……まぁ、お前は心配してくれているの?
けれど、大丈夫。あの子たちは私の、自慢の息子たち。
きっと上手くやってくれるに違いありません……」
……うん。そうじゃない。
そうじゃないよね、僕の『みゃあ!』はっ!
僕は、怒ってるの! なんで盛誉は僕たちに会いに来てくれないの!
ちょっと、ひどいんじゃないの!?
『……』
……でもさ、ここまで話が通じないと、もう諦めの境地だよね。
いいんだ。いいんだ。僕、わかって貰えなくても……!
僕はふてくされたまま、玖月善女さまを見上げた。
『……』
見上げた玖月善女さまの顔色は、ひどく悪い。
『みゃあ……』
僕は黙り込む。
……確かに、盛誉とそのお兄さんの宗昌さまなら、上手く立ち回ってくれるかも知れない。
宗昌さまと盛誉は、この界隈でも評判がいい。
地頭だからと変に威張るでもなく、農民たちとも気さくに話しかける二人は、みんなから頼りにされる存在だ。
だから、この兄弟に対する期待は、なにも玖月善女さまの【親の贔屓目】なんかじゃ、けしてない。
僕が散歩する先々で、この二人のことを『智者の兄弟』と言って、誰もが褒めそやしていた。
まぁ……だからこそ妬みも、それなりに買っているみたいだったけどね?
あーあ、それにしても……いいなぁ。僕も宗昌さまになりたい。
宗昌さまになれば、頻繁に盛誉にだって会えるんだもん。
僕、ここに来て以来、盛誉に会っていないんだよ?
なんで会いに来てくれないんだろう……?
『……』
盛誉も盛誉だよね? もう、僕のこと忘れちゃったんじゃないだろうか?
そんな風に思ってしまって、僕はいつも悲しくなる。
僕も盛誉に会いたいな。
玖月善女さまだって、きっとそう思っているに違いないのに。
宗昌さまは、時々玖月善女さまに会いに来て下さるけれど、盛誉は なかなか会いに来てくれない。
ううん。【なかなか】どころか、【全く】会いに来てくれない。
来てくれないから、『盛誉は私を恨んでいるの』と玖月善女さまはいつも悲しそうに笑ってた。
そんな事、あるわけない。
だって盛誉だって、ずっと玖月善女さまの事を気にかけていたもの。
きっと何か理由があるんだよ……。
きっと。絶対!
……………………多分、ね。
『……』
僕はそう、思うことにしている。
だって、【忘れられた】
なんて思いたくなかったから。
× × × つづく× × ×
┈┈••✤••┈┈┈┈••✤ あとがき ✤••┈┈┈┈••✤••┈┈
お読み頂きありがとうございますm(*_ _)m
誤字大魔王ですので誤字報告、
切実にお待ちしております。
そして随時、感想、評価もお待ちしております(*^^*)
気軽にお立ち寄り、もしくはポチり下さい♡
更新は不定期となっております。




