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琥珀糖に舞う、金桂と紫子さん。  作者: YUQARI
第五章 三日月城 当主 相良義陽さまの最期とその後。
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✤義陽さまが、攻め入った理由✤

 そもそも義陽(よしひ)さまは、隣国の薩摩国の島津(しまづ)公に戦で負けた経歴がある。

 

 三日月城こそ取られはしなかったけれど、先の戦の敗北から、薩摩国の島津家と相良家は和睦を結んでいた。

 領土の一部を下げ渡し、義陽(よしひ)さまの二人の息子、亀千代さまと長寿丸さまを人質として──。

 

 けれど、九州統一を謀る島津家の目下の敵は阿蘇(あそ)家。攻め登らないわけがない。

 当然島津家は、義陽(よしひ)さまに【阿蘇を討て!】と言ってきた。

 

 義陽(よしひ)さまにとってそれは、『はい。分かりました』と言って、簡単に済むような話じゃなかった。

 だって、阿蘇家の軍師である御船城主、甲斐宗運(そううん)と人吉城主である義陽(よしひ)さまは盟友の仲だったから。

 

 和睦を結んだ島津家には、人質として我が子がいて、その島津家から阿蘇家を『攻めよ』と言われる。

 けれどそこには、盟友である甲斐宗運の存在。

 

 要は二つの家門の、挟み撃ちにあったんだ。

 

 

 島津家からは阿蘇家を討てと言われ、

 阿蘇家からは、裏切るのか! と詰め寄られる……。

 

 挟まれた義陽(よしひ)さまはどうする事も出来ず、我が子のいる島津家の言葉に従った。

 

 けれどそれでは、宗運への義理が立たなくなる。

 

 相対する阿蘇家の家臣 甲斐宗運(そううん)を目の前に、義陽(よしひ)さまは負ける布陣を、わざと(・・・)引いた。

 

 それが【響ヶ原】。

 

 どう考えても、守るには向いていない地形だった。

 その事は、敵方の宗運(そううん)も気づいていた。

 気づいていたからこそ手を抜かなかったし、討った後、ひどく嘆き悲しんだと語り継がれている。

 

 

『二つの城を()とした後に、敷く布陣じゃない。

 アイツらしくない』

 

 

 そう言って……。

 

 

 

 この時既に、義陽(よしひ)さまは腹を括っていた……と言われている。死を待つばかりの布陣。

 だからこそ、義陽(よしひ)さまは逃げなかった。

 自分が死ぬ事で、全てが丸く収まる。そう考えたのかも知れない。

 

 そして、自分の後を信頼する家老たちに任せて、義陽(よしひ)さまは呆気なく、逝ってしまった……。

 

 

 でもね、敵はなにも、島津家ばかりじゃないんだよね。

 僕、前にも言っただろ? 【家督争いが激しい】って。

 

 義陽(よしひ)さまの義弟である頼貞(よりさだ)さまが、次の領主の座を虎視眈々と狙っていたんだ。

 

 けれどそれを快く思わない家臣は沢山いる。

 だからどう考えても、義陽(よしひ)さまの腹違いの弟、頼貞(よりさだ)さまが跡目につくとは考えにくかった。

 

 そして、和睦を結んでいる島津家としても、気性の激しい頼貞(よりさだ)さまよりも、人質として預かった亀千代さまを跡目にした方が好都合だと考えた。

 

 ……だって、手の上で転がせそうだもんね?

 

 結局、この島津公の考えと相良家家臣の利害が一致し、義陽(よしひ)さまのご嫡男亀千代さまが、人質としてのお役目を終え、ここ人吉の三日月城へと帰ってくる事に決まった。

 

 義陽(よしひ)さまが亡くなられて、そう時間も経っていない頃だったから、この頼貞(よりさだ)さまって人が、どれだけ嫌われていたかってのは、嫌でも分かるってもんだろう。

 

 そしてその結果、蚊帳の外へと跳ねやられてしまった頼貞(よりさだ)さまが黙っているわけがない。『亀千代はまだ、十歳になるかならないかの子どもではないか! そんな者に相良の跡目など、継がせられるものか!!』と息巻いた。

 

 そう、十歳!

 いや、正確に言うと十歳にすらなっていなくて、御歳まだ九歳だったんだよね。

 当然 亀千代さま、元服すらまだ終えていない。

 

 猫で十歳って言うと、すでに年寄りなんだけど、人の十年はどちらかと言うと短い。

 だから亀千代さまは、大人にもなっていない、まだ幼い子どもなんだよね。

 その子がまさかの城主。

 

 要は僕が、領主さまになるみたいな感じなのかな……?

 

 

『……』

 ……あー、うん。……それはヤバいかも。

 自分で言うのもアレだけど。

 

 だからこそ、玖月善女(くげつぜんにょ)さまは青くなった。絶対、叔父の頼貞(よりさだ)さまが黙っているわけはないと言って。

 

 ここに来て、落ち着いていた跡目争いが、再び(すくぶ)り出すのが目に見えていたから。

 そりゃ誰だって、焦るよね?

 

 ただでさえ不安定な【戦乱の世】。

 こんな時に身内で争っていたら、外から簡単に崩されてしまう。

 

 

 

「と、とにかく、私は盛誉(せいよ)と共に頼貞(よりさだ)さまを見舞って参ります!」

 

 この知らせを持って来た、盛誉(せいよ)のお兄さん……宗昌(むねまさ)さまが、玖月善女(くげつぜんにょ)さまにそう言った。

 

 お悔やみを申し上げるついでに、『亀千代さまに手を出すな!』と、釘を刺しておこうとの魂胆だった。

 

 玖月善女(くげつぜんにょ)さまは神妙な面持ちで、ゆっくり(うなづ)く。

 

宗昌(むねまさ)。どうか事は穏便に。

 ……けして取り乱してはなりませぬよ?」

 

「母上。承知しております。

 母上はどうか、心安らかに……」

 

 そう言って、玖月善女(くげつぜんにょ)さまのご長男である宗昌(むねまさ)さまは、慌てたように飛び出して行った。

 

 

 

           × × × つづく× × ×

 

   ┈┈••✤••┈┈┈┈••✤ あとがき ✤••┈┈┈┈••✤••┈┈



     お読み頂きありがとうございますm(*_ _)m


        誤字大魔王ですので誤字報告、

        切実にお待ちしております。


   そして随時、感想、評価もお待ちしております(*^^*)

     気軽にお立ち寄り、もしくはポチり下さい♡


        更新は不定期となっております。


    はい。そしてまた、話を割りました。( ̄▽ ̄;)

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― 新着の感想 ―
[良い点] ふむふむ、ほぼ、史実でしょうか?
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