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琥珀糖に舞う、金桂と紫子さん。  作者: YUQARI
第五章 三日月城 当主 相良義陽さまの最期とその後。
14/43

✤思わぬ、状況の変化✤

 それから数ヶ月後。

 情勢が変な方向に動き出した。

 

 ……いや、見た目的には、とりわけおかしいって事はなくて、ただ、戦乱の世の習いと言うか、なんと言うか……とにかく! 僕たちの領主さまは、たくさんの兵を引き連れて、戦に出た。

 

 

 ……ただ、戦を仕掛けた相手がおかしかった。

 

 

 その相手というのが、本当だったら味方であるはずの【阿蘇氏】だったんだ。

 

 

 

 肥後国(ひごのくに)は、九州の真ん中に位置する。

 その肥後国の中にある【人吉(ひとよし)】と言う場所に、僕たちは住んでいた。

 

 自然豊かな山々と、広大な平地部。それから大きな球磨川(くまがわ)っていう川がそこには流れていて、僕たちの生活を支えてくれていた。

 

 温暖な気候と山から流れる豊富な水に恵まれ、この地域では、稲作が盛んだ。

 当然、米の収穫量が多いこの地域では、酒蔵(さかぐら)が多く点在し、有名な地酒もたくさんある。

 ……と言うか、僕はお酒は飲まないけれどね。猫だし、子猫だし、飲めないし。

 

 いや、そうじゃなくて、ここ。ここの場所。

 ここの場所が問題なんだ。


 作物が多く取れるとか取れないとかの問題じゃなくて、ここの位置! ここ人吉は、日向国(ひゅうがのくに)(宮崎県)と薩摩国(さつまのくに)(鹿児島県)の国境(くにざかい)にあたる。

 最も守りを堅くしなくちゃならないこの場所に、僕たちは住んでいた。要は不安定な土地柄なんだよね。お隣さんの動向とか?

 

 

 人吉城……別名 三日月城の(あるじ)相良(さがら)義陽(よしひ)

 それが僕たちの(あるじ)の名前。

 僕たちはその人の庇護の元、この人吉に住んでいた。

 

 ついでに言うと、その人吉の地頭の一人が盛誉(せいよ)のお兄さん。つまり湯山(ゆやま)宗昌(むねまさ)って人になる。

 湯山の地には、さっきも言ったけれど酒蔵の他、温泉もあって土地柄には恵まれているんだよ? だけど他の国が隣合っている場所でもある。


 ただ、もちろん協定を結んでいるからこそ、ひとまずは安心して暮らせるし、盛誉(せいよ)だって日向国へ修行に出ることだって出来ていた。

 盛誉(せいよ)だけじゃなくって、村のみんなだって、旅に出たり、行商したりとかしていたんだよ?

 不安定ではあるものの、それなりの【利益】っていうものも、ちゃんとあった。


 だけど今は【戦国の世】。何が起こるかは分からない。

 不安定な状況と、それから油断ならない場所なのには、間違いなかった。

 

 

 そんな状況の中、三日月城の(あるじ)義陽(よしひ)さまが遂に兵を率いて出陣なさったんだ。

 本当なら薩摩が敵であるはずなんだけど、この時の相手は なんと阿蘇家。阿蘇家は、肥後の北部に位置する有力者の一人だった。


 まさかの隣国ではなくて、自国の有力者。

 でも、戦乱の世だから なんでもありだよね。みんなそう思った。

 

 けれど理由は何であれ、肥後国の民がそれを許すはずもない。


 初めの頃こそ調子も良くって、義陽(よしひ)さまたちの兵は甲佐城(こうさじょう)堅志田城(かたしだじょう)の二つの城を次々に攻め落し、状況から言えば勝ち戦だったんだ。

 だから誰もが喜んでいたし、みんな安心しきっていた。

 

 ただこの時、状況も変わり始めていた。


 その夜、領主さまたちは祝杯を上げながら、敵将の首実検をしていたらしい。


 首実検って言うのはね、取った敵将の首を並べて、これがどこそこの大将首で、誰々が上げた……なんて言うやつ。


 ……想像すると最悪だよね。

 それ見ながら祝杯とか、豪気(ごうき)超えて狂気だよ?

『……』


 義陽(よしひ)さまはもしかしたら、戦上手だったのかも知れない。

 

 隣国と睨みを効かせ合う場所にいて、弱い……なんてことあるわけないんだけれど、きっとたくさん人を殺してるんだろな。

 僕は会ったことはないけれど、どんな人だったんだろうと、時々思いを馳せる。

 


 時はそんな冷たい北風が吹き始めた、極月(ごくげつ)に入ったばかりの日。

 そんな凍えるような、寒い夜。状況は一変したんだ。

 

 油断に油断を重ねた領主義陽(よしひ)さまの陣に、御船(みふね)城主である甲斐宗運(そううん)が攻撃を仕掛けた。

 

 

 宗運は、阿蘇家筆頭の家臣。

 阿蘇家に歯向かうとなれば、真っ先に相対しなければならない相手だった。

 

 義陽(よしひ)さまの軍は、そこで総崩れとなる。

 

 勇士七十名、雑兵二百名が討たれ、これはもうダメだと判断した家臣たちは、(あるじ)である義陽(よしひ)さまに、逃げるよう説得をした。

 ……にも関わらず義陽(よしひ)さまは、何故かそれを拒否。

 

 なんの抵抗もなく床几(しょうぎ)に座ったまま、総大将である義陽(よしひ)さまは、呆気(あっけ)なく討たれてしまった。

 

 その知らせは瞬く間に、盛誉(せいよ)のお母さんである玖月善女(くげつぜんにょ)さまの耳に入った。

 

 

「な、なんてこと!」

 

 玖月善女(くげつぜんにょ)さまは真っ青になってその報告を聞いた。

 

 何故真っ青になったかと言うと、その義陽(よしひ)さまって言う人は、国境(くにざかい)(かなめ)だったから。

 ……いや、それだけじゃない。本当に大切な人だったんだ。

 

 隣国の薩摩国(さつまのくに)からこの肥後国(ひごのくに)を守っていた人物。そして不安定なこの情勢の中、唯一の希望だった義陽(よしひ)さま……。

 

 その【要】が亡くなってしまったのだから、玖月善女(くげつぜんにょ)さまでなくても、きっとみんな動揺したに違いない。

 

 だって、この義陽(よしひ)さまが討たれた事によって、

 今までの情勢が、ゴロリと変わることは

 間違いないのだから……。

 

 

 

           × × × つづく× × ×

 

   ┈┈••✤••┈┈┈┈••✤ あとがき ✤••┈┈┈┈••✤••┈┈



     お読み頂きありがとうございますm(*_ _)m


        誤字大魔王ですので誤字報告、

        切実にお待ちしております。


   そして随時、感想、評価もお待ちしております(*^^*)

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        更新は不定期となっております。

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