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琥珀糖に舞う、金桂と紫子さん。  作者: YUQARI
第四章 盛誉と玖月善女さま。
13/43

✤涙の味✤

「『私の代わりに、この子の母に』──」

 

 

 盛誉(せいよ)が帰って行ってから、玖月善女(くげつぜんにょ)さまは、ぼんやり薄黄木犀を見ながらそう呟いた。

 

「ねぇ、お前。お前はどう思う?」

『にゃ?』

「あの子はお前の母になろうとしたのか、それとも」

 

 

 ──それとも、お前になろうとしたのか……。

 

 

 

『……』

 ポツリと呟いたその声は震えていて、僕は玖月善女(くげつぜんにょ)さまが泣いているんじゃないかと心配になった。

 

『にゃ、にゃあ……!』

 カシカシ……と前足で玖月善女(くげつぜんにょ)さまに触れると、玖月善女(くげつぜんにょ)さまはハッとしたように僕を見て微笑んだ。

 

「ふふ。お腹がすいたのね?

 少し待っていてね。今、ごはんを持ってきてあげますよ」

 

 ち、違うから!

 そうじゃなくて……!

 

 部屋から出ていこうとする玖月善女(くげつぜんにょ)さまを、僕は必死で追いかけた。

 

 まったく! この母子(おやこ)って……!

 考えることが一緒で、なんだか泣けてくる。

 

 玖月善女(くげつぜんにょ)さまもまた、盛誉(せいよ)に遠慮してたのかな?

 何かを言いたげなその横顔も、イライラするほどにそっくりだ! まったく二人とも、不器用にも程がある……!

 

 慌てて僕が追い掛けていると、途中、サラサラと立つ衣擦れの音がピタリと止まり、玖月善女(くげつぜんにょ)さまは くるりと僕を振り返った。

 

『?』

 

 何が起こったのかよく分からなくて、僕は首を傾げ、玖月善女(くげつぜんにょ)さまを見上げる。すると、玖月善女(くげつぜんにょ)さまはサッと僕を抱き上げた。

 

『にゃ!?』

 

 

 何が起こったのか分からなくて、僕は思わず爪を出しちゃったんだけど、玖月善女(くげつぜんにょ)さまは怒らなかった。

 

 怒らず僕を包み込む。

『……』

 腕のそのあたたかさと、優しい香りに包まれて、僕は目眩がするほど嬉しくなった。

 

 盛誉(せいよ)も好きだけれど、玖月善女(くげつぜんにょ)さまも大好き!

『みゃあ。みゃあ!』

 

 どうにかその事が伝えたくって、僕は擦り寄った。

 すると玖月善女(くげつぜんにょ)さまが震えるように呟いた。

 

 

(わたくし)は、お前の母になろう。

 あの子がお前を愛おしむように、(わたくし)はお前を愛おしみ、あの子が(わたくし)の大切な子であるように、お前を(わたくし)の大切な子としよう……」

 そう言って、しくしく しくしく……と泣き始めた。

 

 僕はビックリして、その涙を舐めた。

 

 涙は塩辛くて少し驚いたけれど、僕は大好きな玖月善女(くげつぜんにょ)さまに笑っていて欲しくて、泣き終わるまでずっと傍にいた。

 

 きっと玖月善女(くげつぜんにょ)さまも、盛誉(せいよ)の傍にいたかったのに違いない。

 

 僕の本当のお母さんも、こうやって僕のこと、心配してくれているのだろうか?

 

 僕はふと、そんな事を思いながら、

 玖月善女(くげつぜんにょ)さまの涙を舐めた。

 

 

 

           × × × つづく× × ×

   ┈┈••✤••┈┈┈┈••✤ あとがき ✤••┈┈┈┈••✤••┈┈



     お読み頂きありがとうございますm(*_ _)m


        誤字大魔王ですので誤字報告、

        切実にお待ちしております。


   そして随時、感想、評価もお待ちしております(*^^*)

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        更新は不定期となっております。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 猫って、いや、猫じゃないって……、人の感情、理解する感じあります? 犬はかなり人の顔色見れますけど。 [気になる点] やっぱり、盛誉の元に置いてやりたいけど、玖月善女とペアじゃないと続かな…
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