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琥珀糖に舞う、金桂と紫子さん。  作者: YUQARI
第四章 盛誉と玖月善女さま。
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✤人の戦《いくさ》と、捕って来てくれるお魚✤

 盛誉(せいよ)のお母さんの名前は【玖月善女(くげつぜんにょ)】って言った。

 これは本名じゃなくて、お寺に入った時につけたんだと思う。

 

 玖月(くげつ)だから、九月に出家したのか、九月生まれだったのか……それとも九月が好きだったのか、どちらにせよ名前に入れてるくらいだから、【九月】に思い入れがあったのだと思う。

 秋風吹く、今の時期にはピッタリな名前だった。

 

 盛誉(せいよ)のお母さんは、なんで出家してしまったんだろう?

 

 人間の偉い人たちは、自分の近しい人が亡くなると俗世を離れると言うから、この玖月善女(くげつぜんにょ)さまも、大切な人を亡くしたのかも知れない。

 

 ……それって、誰かな?

 

 盛誉(せいよ)のお父さん?

 ……確か名前は、宗豊(むねとよ)さま(だったかな?)がもう、お亡くなりになっているからかな?

 

 

 盛誉(せいよ)に教えてもらったんだけど、今、人間たちは【(いくさ)】と言うものに明け暮れている。

 【戦乱の世】……って言うんだって。

 

 まあ、盛誉(せいよ)に教えてもらわなくったって、薄々気づいてはいたんだけどね。

 見て回った町の中でも、怪我を負った人たちが結構いたから。

 

 戦は、大勢の人たちが寄り集まって、その手に武器を持ち、自分の陣地を犯す人間たちを殺すんだ。

 

 何故かっていうと、富と名誉のため?

 

 僕にはよく分からないけれど、そーゆーモノのために、人間たちは躍起になって同じ人間を……仲間を殺している。

 

 だから盛誉(せいよ)のお父さんも、きっとそんな戦で亡くなったのに違いない。

 

 

 人はよく、仲間同士で争う。

 

 

 まあ、僕たち猫だってそうだよ?

 だけどこんなに大勢で、しかも武器を持って、何年も何年もいがみ合わなくちゃいけないものなんだろうか?

 

 【自分の生活を守るため】……なんて言ってるけれど、死んじゃったら元も子もない。

 僕は大切な人には、ずっとずっと生きていて欲しいって思う。

 

 盛誉(せいよ)のお父さんだって、まだこの世に生きていたのなら、玖月善女(くげつぜんにょ)さまだって ひとり寂しく、お寺の片隅で生きていく……なんてことには ならなかったんじゃないかな?

『……』

 そう思うと、なんだか少し悲しくなる。

 僕は盛誉(せいよ)には、ずっとずっと傍にいて欲しいと思うから。

 

 

 盛誉(せいよ)が言ってた。

 

 盛誉(せいよ)の家……湯山(ゆやま)家が仕えている ここの領主の相良(さがら)家では、跡目争いが激しいんだって。

 

 ううん。でもそれは、相良家だけじゃない。

 

 今は【戦乱の世】ってやつだから、どこでも争いが絶えないんだって。

 どこの家でも、親兄弟が殺しあってる。

 

 盛誉(せいよ)が仕えているここの領主さま。……相良義陽(よしひ)さまには、同じ日に生まれた異母弟がいて、折り合いが悪いって言ってた。

 

『ただでさえ不安定な世の中なのに、身内に闇を抱えていては、幸せになんて、なれるはずがない』

 ……盛誉(せいよ)はよくそう言って、辛そうな顔をした。

 

 本当はその頼貞(よりさだ)って人も、盛誉(せいよ)みたいに家督争いを避けるため、子どもの頃に出家してたんだって。

 

 だけどその人は、盛誉(せいよ)みたいにお寺に大人しく入ってなんかいなかった。

 気性の荒い頼貞(よりさだ)さまは、勝手に還俗(げんぞく)(出家したことをなかったことにする)しちゃったらしいんだ。

 

 ……そんな事って出来るの?

 

 そして今、その頼貞(よりさだ)さまは、隣の薩摩国(さつまのくに)との国境(くにざかい)に住んでいて、不穏な動きを見せているらしい。

 だから盛誉(せいよ)は、『油断がならない』……と言っては、いつも悩んでいた。

 

『このままいくと、兄弟同士で争いが起きる。

 何としてでも止めなくては……』

 どうにか和解させられないものかって。

 

 人間って なまじ頭がいいものだから、ひとたび誰かを(うら)むとホントに怖い生き物だと思う。

 ……僕もいつかそうやって、何かを恨む日が来るんだろうか?

 

 僕は……そうは なりたくない。

 何かを恨みながら生きていくのは、とても辛いことのように思えた。

 

 

 

『あまり良いものを食べさせられなくて、済まないな。

 せめて魚くらいは、私が捕ってきてあげよう』

 

 

 僕が拾われてすぐの頃、盛誉(せいよ)はそう言ってくれた。

 見上げればいつも、優しい盛誉(せいよ)の笑顔があった。

 

 

『……』

 

 今はあまりいい状況ではないから、食料が乏しいのだと、盛誉(せいよ)は嘆いていた……。

 

 働き手が戦に駆り出されるから、思うように畑仕事が出来ない。だから畑は荒れ放題で、作物も思うように採れないって。

 そして飢えるのは、いつも弱い立場の者ばかりなのだって。……そう、言っていた。

 

 今の世の中どこも品薄で、さっき農民たちがくれると言った柿や魚だって、本当は貴重なものなんだ。

 そんな苦しい中でも、みんなで分け合って、笑いあってる……。

 

 本当なら僕みたいなちっぽけな猫、放っておかれて当たり前なんだ。

 あ……あのね、あのね盛誉(せいよ)

 僕なら平気なんだよ?

 

 ここにいていいって言われたから、安心して過ごせるし、だから自分で狩りだって覚えた!

 僕は小さい子猫かも知れないけれど、ネズミを捕まえて食べることくらい出来る。

 庭がとても広いから、虫だって探せるもの。

 だって僕は強いもの!

 

 だからだから無理してお魚、捕って来なくても大丈夫なんだよ?

 盛誉(せいよ)盛誉(せいよ)の事だけ考えて、僕を傍にいさせてくれさえすれば、それだけで僕は満足なんだ。

 

『にゃうにゃうにゃう!!』

「ふふふ。そうかそうか。腹が減ってはしょうがないな。

 待て待て、すぐに用意をしてやるぞ?」

 ちがーう!!

 違う違う、盛誉(せいよ)! そうじゃなくって!!

 

 ……僕はそう言うんだけれど、猫の僕の言葉は、人間の盛誉(せいよ)には伝わらない。

 

 だから盛誉(せいよ)は、必ず僕にお魚をくれた。

 自分は絶対口にしないのに、僕のために捕ってきてくれるんだ。

 

 お坊さまって、お魚捕ってもいいのかな?

 ……ダメな気がする。

 

『……』

 

 そんな風にも思ったんだけれど、大好きな盛誉(せいよ)がせっかく捕まえて来てくれたお魚を、僕は無駄にはしたくなくて、いつも悦んでそれを食べた。

 

 盛誉(せいよ)の捕って来るお魚は、すごく活きがよくて、すっごく美味しかったんだ!

 

 

 

           × × × つづく× × ×

   ┈┈••✤••┈┈┈┈••✤ あとがき ✤••┈┈┈┈••✤••┈┈



     お読み頂きありがとうございますm(*_ _)m


        誤字大魔王ですので誤字報告、

        切実にお待ちしております。


   そして随時、感想、評価もお待ちしております(*^^*)

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        更新は不定期となっております。



         盛誉のお母さん玖月善女。

   この名前って、戒名(死んだ後の名前)なんじゃ!? と

         最初私は思ったんですよ。

   ……だけど、他の名前しらないんですよね( ̄▽ ̄;)


        なので、作るわけにもいかず

        出家後の名前にしました。。。


     で、問題はですよ、【どこに住んでいたか】


     住んでいた場所が見つけられなくてですね。

       私の想像では『市房神社』付近……と

          目星をつけています。


        なぜそこなのか。。。は、

     後日説明したいと思います( ̄▽ ̄)へへ。


          さて、ここから

        史実要素が濃くなるので、

     ついてきてくれると嬉しいです( ̄▽ ̄;)

      説明、上手く出来たらいいんですけどね。

      『歴史小説』は、そこら辺がね、

          難しいですよね。。。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 歴史……、そろそろ豊臣の世になりますし、戦乱は内戦的なヤツかな、史実的にも。化け猫は肥前・鍋島が有名ですが、肥後にもあるんですね。
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