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琥珀糖に舞う、金桂と紫子さん。  作者: YUQARI
序章 薄黄木犀の花の記憶。
1/43

✤秋深まる金桂舞う✤

 少しずつ秋が深まる、ある日のこと。

 紫子(ゆかりこ)さんは、お菓子作りをしていました。

 

 

 ……紫子(ゆかりこ)さんが、お菓子作り?

 

 

 何もしない紫子(ゆかりこ)さんが、お菓子なんか作るわけがない! 誰もがそう思うはず。

 

 だって紫子(ゆかりこ)さんって、本当に、何もしないから。誰もが認める、面倒臭がり屋さんですからね。

 

 だからそれはきっと、紫子(ゆかりこ)さんじゃなくって、一緒に住んでいる瑠奈(るな)さんじゃないかって思うでしょ?

 けれど違います。

 ちゃんと紫子(ゆかりこ)さんだって、お菓子が作れるんです……! パチパチパチパチ(拍手)。

 

 

 

 紫子(ゆかりこ)さんが、今作っているのは【琥珀糖(こはくとう)】。

 ……琥珀糖、知ってます?

 

 

 まるで飴玉みたいな名前だけれど、飴玉ではありません。

 まさかの寒天で作る、干菓子(・・・)なのです。

 

 

 

 作り方は簡単。

 

 まず寒天を水でふやかして、お鍋に入れて、火にかけて、それから綺麗に溶かします。

 

 寒天のかけらが残っていると、食べた時ザラザラするので、()して不純物を取り除きます。

 

 その中に、たっぷりの砂糖を煮溶かして、可愛らしい蝶のような小さな小さな金木犀(きんもくせい)の花のジャムを散らすのです。

 

 より金色に輝くように、黄色の食紅で ほんの少し色付けし、型に流し込んで固めます。

 

 あぁ、そうそう。色付けは、ほんのりつくように。

 

 しっかり混ぜなくて良いのです。

 そうした方が、可愛いなって紫子(ゆかりこ)さんは思ってます。

 

 マーブルになるように、あまり混ぜないように、そうやって紫子(ゆかりこ)さんは、毎年秋になると金木犀を散らした、ほんのり色の琥珀糖を作るのです。ほんのり色にしちゃうのは、なにも面倒臭がりだからではありません。

 

 食紅は、驚くほど色がついちゃうので、注意が必要なんです。

 これ、ホント。

 

 

 それからそれから、固めた寒天を宝石のような形に整えて、風通しのいい日陰で乾かします。

 

 すると秋らしく、小さく可愛らしい花の舞う、金木犀の琥珀糖の出来上がり。別名、干錦玉(ほしきんぎょく)とも言います。

 

 琥珀糖は、なにも金木犀を入れて作るわけではありません。

 好きなものを入れてもいいし、入れなくてもいいのです。

 

 

 だから紫子(ゆかりこ)さんは、いつも金木犀を入れることにしています。だって紫子(ゆかりこ)さんは、金木犀が大好きなのです。

 

 小さな蝶のような、可愛らしいその花弁。

 それから鮮やかな黄色は、秋の陽の光に照らされて、まるで金色に輝くお星さまのよう。

 甘く柔らかなその香りを嗅ぐと、『あぁ、もう秋なのね……』と何故だか少しホッとする。

 なぜだか少し悲しくて、なんだか人恋しくなってしまうのは、小さくて儚い金木犀のせいかしら?

 金木犀の花は意外と弱くて、すぐに散ってしまう。散ってしまうと、いよいよ本格的な冬がくるのです。

 

 冷たいアイスコーヒーから、温かい紅茶や珈琲が飲みたくなって、そろそろ衣替えでもしようかな……? って思ってしまうような昼下がり。

 

 優しく沈んでいく お日さまを見ていると、少し寂しくて、でもとても心が落ち着いていくのを感じるのです。

 

 

 そんな日には、この琥珀糖が突然作りたくなる。

 

 外はサックリ、中はぷるりん。

 不思議な食感の、可愛い和菓子。

 

 出来上がってスグのものを、つまんで食べるのもいいし、サイダー水に浸して飲み物にするのも面白い。

 

 もちろん、しっかり乾かしてから、中の小さな黄色い花を、日に透かして眺めるのも、紫子(ゆかりこ)さんは大好きです。

 

 

 キラキラ光る琥珀糖は、紫子(ゆかりこ)さんには少し甘すぎて、あまり食べられないのだけれど、そうやって金木犀の琥珀糖を眺めながら、少しずつ(かじ)って食べるのが、紫子(ゆかりこ)さんの 【秋】なんですって。

 

 だから今年も、金木犀の琥珀糖。

 大事に大事に作りました。

 

 

 

          × × × つづく× × ×

 

   ┈┈••✤••┈┈┈┈••✤ あとがき ✤••┈┈┈┈••✤••┈┈



     お読み頂きありがとうございますm(*_ _)m


        誤字大魔王ですので誤字報告、

        切実にお待ちしております。


   そして随時、感想、評価もお待ちしております(*^^*)

     気軽にお立ち寄り、もしくはポチり下さい♡


       更新は不定期となっております。



 あ、そうそう『金桂』はキンモクセイの事ではありません。


       キンモクセイは『丹桂(たんけい)』です。

   『金桂』もしくは『銀桂』はウスギモクセイです。

      ギンモクセイは『桂花』のようですよ。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 1/5 ・どもども。まさかのユカリコ [気になる点] フワフワしてる [一言] フワッフワな菓子の妄想
[良い点] 鼈甲飴じゃないんだ。琥珀糖、面白いですねー [一言] UQ-WIMAX、新幹線内でも繋がるようです。新幹線のフリーWi-Fiは、遅過ぎて使い物にならないですが……
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