表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

9/164

9話 依頼

「私爆発の威力は確かに抑えたけど……。それでも飯村君の矢よりも威力はある筈なんだけどなぁ……」


 何か疑われてるな。まぁいくらレベルが上がったとはいえまだまだ平均値より下だから疑問に思うのは不思議じゃないが――


「助かったよ『ファースト』の代表姫川。それに昨日の極大魔石君。まさか全矢会心の一撃なんてとんでもない豪運……いや、あれはスキルかい?」

「会心の一撃! あの赤いのって会心の一撃だったの!? だから硬い相手にもダメージが……。っていつの間にそんなスキルを?もしかして昨日言ってたレベルは嘘?」


 興味津々といった表情でにじり寄る2人。

 地上にモンスターが現れたなんていう異常事態って事忘れてないか?


「『必中会心』。俺の放つ矢は外れない上、100%会心の一撃になる。まさか会心の一撃が防御力無視効果を含んでいたなんて今知ったよ。それと俺は嘘はついてない。ただ昨日までは35レベル今は44レベル。あの金色のスライム、それに金色の部位を持つモンスターは特別に経験値が高いらしい」

「『必中会心』聞いた事の無いスキルね。そもそも弓使い自体が少ないから当然って言えば当然なんだけど――」


 痛みがぶり返したのか、江崎さんは苦悶の表情を浮かべその身体は倒れ始めた。

 慌てて江崎さんを受け止めるとその胸に手が触れる。

 普通ならラッキーと思うシチュエーションかもしれないが、相手が相手なだけに冷や汗が止まらない。

 俺この人に殺されないよな?


「あ、ありがと。ちょっと昔の傷が痛んで……。はは、無理はするべきじゃないわ」


 怒るどころか顔を赤らめて照れ隠しをされてしまった。


「江崎さんやっぱり怪我で引退なさってたんですね。理由もなくギルドの誘いを断られた時から薄々は感づいてはいましたけど……」

「心配されるのは嫌いだからね。それに部下やぺーぺーの探索者に舐められると私の威厳に関わるわ。2人共この事は内緒にしててね。ま、こうして触らせてあげたんだからむっつり極大魔石君は言うこと聞くしかないけど」

「さっきの反応わざとだったんですか……」

「半分ね。年下からかうの好きなのよ」


 江崎さんは脚の痛みが引いたのか地面に腰を下ろした。その時一瞬朱音の目が鋭く江崎さんを捉えていたように見えたが……気のせいかな?


「それでその『必中会心』っていうのは、まだまだ使える感じなのかな?」

「え? ま、まぁ魔力は消費しないので」


 江崎さんはニヤニヤし出すと、そっと口を開く。

 なんだか嫌な予感がするな。


「極大魔石君に探索者窓口、査定買取り部長の私から依頼を正式にお願いするわ。報酬は査定買い取りの担当を今後私が請け負うって事と……ランクアップの申請を通してあげる」

「……マジですか?」


 ブロンズ、シルバー、ゴールド、プラチナ、ダイヤ、アダマンタイト、オリハルコン。

 探索者はこれらの順でランク付けされており、自分のランクを表す色が証明書の枠に使われている。


 ランクが高ければ高い程貢献度の高い探索者として認知され、企業や業界に顔が利くようになる。

 またある程度のランクになると海外旅行費や全国のホテルや民宿などの宿泊代が割引。

 プラチナ以上のランクになればお抱えの武器職人が各人につく。

 現在オリハルコンランクの探索者は1人のみだが、扱いは首相クラスだ。


 これだけの待遇を得る事が出来る可能性があるランクアップは通常一定のレベルに達した上で、探索者複数名の署名が必要。

 つまりはダンジョンの攻略或いは膨大な資源を得る為に団体活動を行なっている探索者ギルドに所属する必要が出てくる。

 国としてもより多くの魔石獲得の為、このギルドの活動を活発にしたいと考えているからこその条件らしい。


 ソロで活動している俺にとってはもう関係ない事だと思っていたが、まさかこんな機会が与えられるなんて。


「内容はダンジョンの異変の調査。金色モンスターがダンジョンを抜け出す原因を見つけて解決してみせ――」

「江崎さん、それはあまりに危ない依頼です。飯村君はまだ44レベルなんですよ」

「でも私の倒せなかったモンスターを倒せたわ」

「だからといってこの先のモンスターはアダマンタイトランクの私でも勝てないと判断した相手がいました。いくらなんでも……。それにもしここで飯村君がランクアップしたら飯村君はきっと――」

「俺、依頼受けます」

「飯村君……」


 依頼を受ける表明をすると朱音が俺の顔を覗き込んできた。


「俺は初期メンバーの面汚しだからどっちみちそっちには戻れない。だからといって他のギルドに入りたくもない。そんな状況でまた朱音と対等の場所に立てる道があるっていうなら俺は挑戦したい。それで……朱音が俺を誘った事後悔しない様になって欲しい」

「……出来るの? 本当に?」

「さぁな。でも折角『必中会心』なんてスキルを貰ったんだ、やってみなきゃ損だろ」

「……そっか。分かった。でもね、1人で行くのはやっぱり危険だと思う。その内初期メンバー、『ファースト』の仲間も集まるから――」

「いや、だったら尚更俺は1人で行く。あいつらとは馴れ合えないからな。それに……ふふ」

「何笑ってるの?」

「俺の通った道を見てあいつらを驚かせてやれるかもと思ったらさ……ちょっと楽しくなってきたんだよな」

お読みいただきありがとうございます。

面白いと思っていただけましたらブックマーク・評価を何卒宜しくお願い致します。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ