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87話 ベッド

「それで40階層までは突破出来たけど、弓の反動が酷すぎて帰還したってわけね」

「はい。自分のスキルでこの有り様なのは恥ずかしいですが……」

「いや、たった2人でその成果をあげられたのは大きいわ。それにそこまでしないと勝てない敵が異常過ぎるわよ。……金色スライムを一撃で殺す攻撃力を更に越えたあなたの限界の一撃でようやく倒せるモンスター……。はぁ、ため息が止まらないわね。この一件が終わったところで本当にダンジョンの異常を解消なんて出来るのかしら」


 探索者ビルの医療施設。

 2人分のベッドが置かれた小さめな部屋に俺とクロは運び込まれた。


 リジェネや回復弓の効果もあり、俺は直ぐに帰宅しようとも思ったが朱音の勧めと1人で残りたくないというクロの要望で1日だけここで厄介になる事を決めた。


 俺達がここに運び込まれた事を拓海が知らせてくれた様でしばらくしてから江崎さんがわざわざ脚を運んでくれて、直々に話を聞いてくれているという状況だ。


 因みに拓海は自分達だけで50階層突破を目指そうと朱音に進言したが、度重なるハードな探索で身体が悲鳴をあげている事を帰還中に見抜かれていて朱音に連れられて渋々帰宅。


 俺と競り合ってスキルをガンガン使った事が、拓海の負担になってしまったのかもしれないと思うと急に罪悪感が込み上げてきたが、あの時の拓海の表情は辛いというよりも楽しいという風に見えたんだよな。


「出来ます。私がサポーターとして一也さんを最下層まで必ず連れていって、統括モンスターも2人で倒して見せます」

「2人……。へぇ……。クロちゃんって確か『人間』のサポーターじゃなかったかしら?」

「そ、それは勿論ですけど、今最下層に最も近い存在なのは一也さんで、それに相性も良くて……」


 キリッとした顔で宣言したクロは瞬く間に赤面して、言葉はしどろもどろになってしまった。


 その様子を笑って見ている江崎さん……相変わらず悪戯好きな人だ。


「あの、江崎さん。この機会に少し質問してもいいですか?」

「ん? 唐突ね。でも構わないわよ。私なんかが役に立てるならお安いご用よ」


 俺はクロに助け船を出すついでに探索者として俺よりも深い階層で戦い、知識もあるであろう江崎さんに質問する事にした。


 同期の拓海や朱音にあれこれ聞くのも気恥ずかしいと思っていたからこれは絶好の機会とも言える。


「いくつかあるんですけど……まず今回『デコイ』を使ってきたモンスターがいて、40階層以降あのスキルを使うモンスターって――」

「結構いるわよ。『デコイ』だけじゃなくて『根性』とか『属性無効』とか『物理無効』とか、今回戦ったトロルは実は『ダメージ軽減』も待ってて……。この先は単純な攻撃力だけでは押し通れない戦闘もあるでしょうね」


 トロルが『ダメージ軽減』スキル持ち……。

 通りで中々倒れてくれないわけだ。

 と言ってもあまり周知されてないって事は通常そのスキルの効果は低いのだろう。


 この異常事態でトロル達、それに統括モンスターのレベルが上がってスキルが強化されたからこんな事になったのかもしれない。


 とすれば今江崎さんの言ったスキルも強化されていて、より強力なスキルに化けていると思った方がいいのかもしれない。


「属性攻撃や状態異常に頼る必要があるって事ですか……。残念ながら俺にはそういったスキルがないんでよね……」

「そこで適材適所の探索者とすぐ協力体制をとれるギルドがあるんだけど……。あなたはソロ、2人がいいのよね?」

「共闘っていうものがあまり得意ではなくて……」

「それだけの攻撃力、突破力があるわけだし、変に場を乱されても困るものね。んーそうなると武器に色んな『エンチャント』を掛けてもらうのが1番だとは思うけど……。今それが出来る探索者って誰がいたかしらねぇ?」

「『エンチャント』……」


 江崎さんが首を傾けるとクロがポツリと呟いた。

 何かその言葉に思い出す事でもあったのだろうか?

お読みいただきありがとうございます。

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