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84話 起動

「頼むぞ」


 ぽつりと呟いて俺は弓を引いた。

 そして放たれた矢は一見して閃光となり、地面を抉りながらデモンルイン【色欲】の元へ。


 するとデモンルイン【色欲】は慌てて息を吸い込む。

 その所為で魔力を吸収された矢は、ややスピードを落とすものの、既に矢じりはデモンルイン【色欲】の喉元にいる。

 しっかりと威力を維持出来たまま矢は着弾。弾け飛ぶ肉と衝撃波はピンク色の煙をかき消し、鼻腔を突き抜けるこの刺激臭も大分和らいだ。

 

 ただ発生した衝撃波は単純に矢の威力によるもので、いつも見ているダメージの余剰分を与える衝撃波ではない。


 デモンルイン【色欲】は地面に伏してはいるが、きっとまだ生きている。


「や、ば。腕が……」


 250もの魔力を消費して生み出した魔力弓による反動を受けて、俺達はこの階層の壁まで吹っ飛ばされ背中を打ちつけていた。

 しかし、その時の痛みなど気にならないくらいの痛みと痺れが両腕から全身へと駈け廻り、立つ事さえも難しい。


 俺もデモンルイン【色欲】もグロッキー状態。

 次に動いた方が勝てると言っても過言じゃないそんな状況。


「う、ぐああ……」

「あと残り一発撃てれば……」


 身体を震わせながらもなんとか起き上がろうとするデモンルイン【色欲】。

 このままだと俺達の受けたダメージと自身が負ったダメージでスキル『ペインブースト』が起動、より強化された奴の一撃が飛んでくるかもしれない。


 焦燥感を感じながら必死に体を動かそうとしていると、俺の両手に柔らかい感触、それに身体が少し楽になるような感覚が。


「――クロ?」

「一也さん後は私に任せて。はああああああああああああああっ!!」


 デモンルイン【色欲】が瀕死状態にあるからなのか、正常な意識を取り戻したクロは雄たけびを上げながらデモンルイン【色欲】の元に駆け出していった。

 クロだって戦闘でダメージを負っている。

 きっと動くだけで痛みがあるはずだ。


 相手が瀕死状態とは言え、勝てる見込みは薄い。


「う、ぐあ……」

「きゃっ!」


 案の定クロはデモンルイン【色欲】の遅くなった攻撃を避けるのも難しいようで、一発打ち込んではカウンターをもろに喰らって地面に伏し、少しして立ち上がるとまた一発打ち込んではカウンターをもろに喰らって……。


 痛々しい捨て身の戦法で戦いを繰り広げているその姿は見ているこっちがしんどくなるほど。

 いくら相手が瀕死だからってこのままじゃ直に……。


「う、ぐあああああっ!!」


 それを何度も繰り返していると、デモンルイン【色欲】は咆哮して徐に拳を振り上げた。

 それだけの攻撃が出来る位にはこの時間で回復してしまったという事なのか。


「くっ! 動いてくれ、俺の身体ぁぁぁああああっ!!」


 みしみしと音を立てつつも少ししか動かない身体。

 このままじゃクロが殺される。

 何か奴の邪魔をする方法……何でもいい、俺が今出来うる攻撃、スキルが発動出来れば……。


『設定時間前ですが、使用者権限により時空弓により仕掛けた矢を現在可能な最短時間で全射出します。カウント、3、2……』

「すぅ――。う、ぐっ!!」

「絶対させない!!」


 矢が顕現すると同時にデモンルイン【色欲】は動き止めて、魔力を吸収しようとした。

 だが、それを察したクロがその背後をとり、がっちりと首を絞める。


「「いけええええええええええっ!!」」

『――0。Fire』


 俺とクロの叫びに反応するように矢は放たれ、遂にデモンルイン【色欲】の全身が弾け飛んだのだった。

お読みいただきありがとうございます。

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