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68話 リンク

「みなみちゃんっ!」

「無駄だよ。『ノスタルジアの木』に物理攻撃は効かないから。むしろその矢は魔力として木の養分になる」


 勢いよく成長していく『ノスタルジアの木』は咄嗟に放たれた魔力矢を飲み込み、更に大きさが増す。


 もう佐藤さんの姿は殆んど見えない。


「みなみちゃん……。みなみちゃん!」

「危ないクロちゃん!」


 クロは成長を続ける『ノスタルジアの木』に腕を差し伸べるが、それに巻き込まれてはまずいと思ったのか朱音が止めに入る。


「朱音さん、離して……」

「この木はそんな事をしても無駄。巻き込まれれば最悪の場合絞め殺されるよ」

「だ、だったら朱音さんのスキルでみなみちゃんを――」

「ごめんなさい。佐藤みなみが体にモンスターを飼ってる所為で……。2体を1度に入れ替える事は出来ないの……」


 朱音の申し訳なさそうな表情に気付いたのか、クロは感情を押し殺して口を紡ぐ。

 そして2人は『ノスタルジアの木』から離れるとその成長をぼーっと眺め始めた。


「……拓海。この大きさだと退けるのにどれくらい掛かる?」

「大体10日間……いや、前に協力してもらった探索者の魔力と気力の回復を待つ必要もあるから2週間位は必要かもしれない」

「そうか……。それだけあれば向こうも好き勝手出来そうだ」

「もっと効率のいい対処方法があればいいんだが、如何せん『ノスタルジアの木』って奴は直接的な魔法系にも強くてな。俺達の持つ水系スキルや氷系スキルを用いて内部からじんわり腐らせていくしかないんだ」

「それなら水道から――」

「それも試してみたが、所謂養分となりえる水、魔力を含んだ水以外は吸収しようとしないんだ」


 俺達が佐藤さんをここから追って行けるのはどうあっても2週間後、か。

 他に方法はないのだろうか……。


「クロ、ここから中にワープゲートは出せるか?」

「駄目、さっきから試してはいるけど……。もしかするとみなみちゃんが『ワープゲート』自体を扱えない仕組みに変えたのかも。逆に言えば向こうからこっちにも『ワープゲート』を出せない可能性もあるけど」


 クロの推測が正しければ氷のあるあの場所やその他の旧ダンジョンの階層に佐藤さんが現れる事はなく、異変は残っているものの、これ以上の脅威が旧ダンジョンに現れる事は無さそうだ。


「『ワープゲート』での潜入も出来ないか……」

「ここで考えてても仕方ないわ。一旦帰ってから作戦を練るわよ」

「じゃあ全員さっきの階段を下ってください。旧ダンジョンから旧ダンジョンへの『ワープゲート』は出せるみたいなので」


 クロの言葉を聞いて俺達は階段へと向かう。


 そういえば『ワープゲート』で繋げなくてもこの階段は活きてるんだよな。

 佐藤さんがさっきリンクがどうのこうのって言ってたが……もしかしてここ以外に旧ダンジョンと新ダンジョンが繋がってる場所、階段があるのかもしれない。


「クロ、ダンジョンにこの先と同じ様なちょっと変わった場所とかってあるか?」

「変わった場所? うーん……」

「それなら50階層と100階層のワープ場所地点が変わってるかも知れないわ。あそこって見つけるのも難しかったし……。そういえばまだワープ出来ないのよね、あれ」

「佐藤みなみは『あそことあそこ』とか言ってたから間違いないだろ。『隠す』とも言っていたから何か細工をされる前に急いだ方がいい。俺はこいつらを警察に渡す必要があるが、クロちゃんと一也は先に行け」

「分かった」


 俺はその言葉を聞き入れて拓海から視線を外して、階段に足をかける。


「私も――」

「朱音は魔力を消費し過ぎだ。1度回復してから追い付けばいい。安心しろ、一也なら100階層位までは余裕のはずだ」

「拓海がそんな風に言うなんて珍しいわね」

「ただ事実を言っただけだ。……一也! 俺達が進みやすい様に雑魚もちゃんと掃除しといてくれよ」


 拓海の言葉に俺は振り返る事なく、右手を少し挙げて答えると一歩また一歩と階段を下った。

お読みいただきありがとうございます。

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