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64話 変化

「強力なスキルはリスクを負う。モンスターを操れるなんてスキルを普通に利用出来るはずがないって事か」

「今すぐリジェネを……。駄目、対象に選べない」


 蹲る男性を哀れな目で見ているとクロがその身を案じてリジェネを使おうとする。

 だがスキルのデメリットとして起きる事象を無効か、或いは緩和する事は出来ないようだ。

 こうなってくると、『強制貸出』をしたクロの身が不安になってくるな。


「2人とも、その人を心配するのは分かるけど『ウォーコボルト』が止まっている今がチャンスよ!」

「この状況なら魔力を温存してもいける。朱音、接近戦で仕留めるぞ」


 蹲る男性を無視してウォーコボルトに攻撃を仕掛ける2人。

 しかし……


「――う゛ぁおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

「これ、人間の声じゃないわ!!」

「くっ。耳が……」


 突然男性が雄叫びを上げると2人はそのあまりの轟音に足を止めてしまう。

 確かに凄い声、人間のものには聞こえない……だがこれを俺は聞いた事がある?


「え? そんな……。もしかしてこれがこの人の使ったスキルによるリスクなの? こんなのって……」

「――グ、ルル……」


 雄たけびを上げた男性は体を四つん這いにすると、その腕に黒色の毛をびっしりと生やしながら伸ばす。

 手や脚は細く変化、顔はめきめきと音を立てながら人間のそれではなくなる。


 俺はこの人間、いやモンスターを知っている。


「……『ダースウルフェン』。じゃあ今の叫び声は――」

『新ダンジョンのモンスターの出現情報が上書きされました。ダースウルフェンが新ダンジョンに出現するようになりました』


 頭に流れるアナウンス。いつもと声が違うのが気になるところだが、とにかく男性は完全にダースウルフェンとしてダンジョンに認定されたらしい。

 もうこの男性は人間ではない。

 

 スキルリスクの恐ろしさを肌身に感じながら俺はこの時一つの疑問を頭に過らせる。


「という事は既存のダンジョンのダースウルフェンは……。あれも人が、スキルが関与しているのか?」

「飯村君! 来てるわよ!!」


 導かれる可能性に頭を傾げていると、いつの間にか俺の目の前には『ウォーコボルト』が。

 振り回される剣からは稲光が起き、普通に剣を振り回すよりも広い範囲を攻撃可能にしている。

 武器の扱いでいえば俺よりも遙かに上手い。

 しかもダースウルフェンのバフ効果のお陰か、動きも素早い。


 だが今の俺に対応出来ない程じゃない。


 俺は攻撃を躱しながら弓を放ち『ウォーコボルト』の一体を爆散させる。

 それと同じタイミングで朱音と拓海も自分が相手をしていた『ウォーコボルト』を撃破。


 残りは『ウォーコボルト』3匹。ダースウルフェンが1匹。


 予想外の出来事に驚かされたものの、これくらいならなんて事はない――


『新ダンジョンフェーズ2に移行』


 ――ウィン。


 不吉なアナウンスが頭に流れると俺達の目の前に現れた『ワープゲート』。

 さっき家の中にコボルトが現れた事もあり、俺達は一度様子を見る為に後退する。


 クロは、自分の生み出した『ワープゲート』に細工される可能性を恐れたのか慌てて自分の出した『ワープゲート』を潰す。


「一体何が出てくるのかしら?」

「気を付けろよ朱音。フェーズ2って事は俺が戦った記憶に干渉してくるモンスターが出てくる可能性もある」


「――ぺポ」


 朱音が少し口角を上げ、拓海が注意を促すと『ワープゲート』から一匹のモンスターが現れた。

 それは俺が嫌って程倒したあのモンスター。


「金色スライム。……って事は――」

「ぐぁっ!!」


 生き残っていた『ウォーコボルト』達全員が凄まじい速さでダースウルフェンを殺した。

 そして、そんなダースウルフェンに金色スライムは近づき蘇生させる。


「転移弓、魔力消費10!!」


 俺はダースウルフェンの持つあの効果を思い出して、そのダースウルフェンが人間だからといって躊躇する事なく、転移弓を引いた。

 だが……。


「う゛ぁおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

『新ダンジョンにロードコボルトが出現するようになりました。ロードコボルトはスキル:ゲインウェポン【必素材】を恒常スキルとしました。今後の階層ボスとしてロードコボルトの登録が完了しました』

お読みいただきありがとうございます。

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