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46話 可能性に賭ける

「う、ううぅぅぅぅぅ……あ、あ゛ぁ」

「クロ!」

「目を合わせると記憶の一端を覗かれる。そこから記憶の扉をこじ開けられればあっという間に記憶を操作、クロちゃんに耐性があるかどうかでその操作時間は決まるが……この様子だと最悪戻ってこれない事もあるかもしれない」


 拓海に目を覆われながら手足をじたばたとさせるクロ。


「くそっ! こいつ……こっちが見てた事に何で気付いたんだ」

「気付いたというよりは、気配を察知したんだと思う。奴らモンスターは魔力に敏感だ。俺ですらステータスを見ずともクロちゃんから高い魔力の気配を感じるくらいなんだから、奴らからしたらこのスキル越しでも十分気付けるはず。後は1度、いや『何度か似たような事をされた』という経験が向こうにあれば警戒心は高まるか……」


 1度似たような経験。そういえばクロは1度ボス階層の様子を見た事があったか……。

 くそ、まさかあの程度の事が今みたいな事態を引き起こすなんて。


「拓海! このスキルを解く方法は時間経過以外にないのか?」

「俺もつい先日までこんなスキルは聞き覚えが無かったからな。ただ、使用者が倒れれば或いは……」

「だったら急いで下に――」

「うぐぁぁあああああああああっ!!」

「ぐっ!」


 拓海に捕まっていたクロは、弱っている拓海の顎に頭突きを喰らわせた。

 そして、解放されたクロは俺達から距離をとって頭を押さえながら唸る。


 何かと戦っているようなその表情は俺の知っているクロとは別人。


「私は、私は……。今度こそ、今度こそっ! その為に、殺す。殺して私も死ぬ。そうすれば、そうすれば、それが正解なんだ」


 どんな風に記憶を干渉されているのかは分からないが、物騒な言葉を呟くクロは涙を流しながらその動きを止める。

 こちらに対して攻撃するような素振りを見せないのは、このスキルには相手の行動を完全に攻撃に転じさせる程の干渉力、操作力が無いからか。


 といってもこんな状態のクロと弱ったままの拓海を残して下に向かうのは不安過ぎるな。

 なら1度全員を外に……流石にそれは無理か。


「遠くから20階層の統括モンスターを倒せればいいんだが、そんなの不可能……。そういえば転移弓が強化されてたか」


『転移弓、魔力消費30』


 俺は戦闘を終えしばらく経った事で、いつの間にか消えていた転移弓を再び発現させると一つの可能性を信じて設定画面を開いた。


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ターゲット設定

現在自動選択

飛攻撃スイッチ【ON】

■手動選択

・クロ

・拓海

・パラサイトワーム

・イビルワーム

・ダークネスキャタピラー

■選択無し

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 20階層のボスモンスターであるイービルワームの名前、それに『ダークネスキャタピラー』という見た事のない名前。

 おそらくこれが11階層から20階層を統括するモンスターの名前。


「これが表示されたって事は……」


 俺は『ダークネスキャタピラー』をタップして選択すると設定を完了させた。

 そしてクロがあんな状態になったにも関わらず、残り続けている映像に視線を落とすと、俺は『ダークキャタピラー』を狙って転移弓を祈るように引いた。

お読みいただきありがとうございます。

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