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45話 冗談

「記憶を覗いて干渉?」

「ああ。元々20階層で湧いたボス『イビルワーム』に生殖行動は見られなかった。しかしこの異変で現れたモンスターが『イビルワーム』を操作。自分と交配を行う事で『イビルワーム』に交配種となるパラサイトワームを産ませた。そんなパラサイトワーム達をその記憶への干渉によって支配。俺が寄生された事で各階層にパラサイトワームをばら撒く事態になって……。この状況を作ってしまったのは俺になるんだ……」

「そうだな。だが、そんなスキルはそもそも聞いた事が無い。拓海がやられようがやられまいが、結局のこうなってたはずだ」

「……。ふっ。辛い言葉を投げていた俺なんかをそうやってフォローするなんて、お前のそういう甘い所がいつか脚を引っ張る事になるぞ」


 拓海は一瞬顔を緩めると、照れ隠しをする様にまた忠告をくれる。

 俺からすると甘いのは拓海の方に思えるんだけどな。


「それでそのボスの記憶に干渉してやりたい放題のモンスターっていうのはどうやって記憶に干渉するんだ?」

「一也、ボスに、あのモンスターに挑むのか? お前が強くなったのは今の戦いで分かった。それでもあれはレベル200オーバーの探索者が複数人必要な――」

「さっきので俺のレベルは260になった。それでも拓海、お前は俺を止めるってのか?」

「260!? そんな、嘘だろ。……。そういえば俺が意識を朦朧とさせている時のあの赤い光、それに俺の水スキルと同じ様に体内に攻撃、干渉出来るような見た事のないスキルの数々。思い返せば不思議じゃない、か。それに一也が嘘をつくとも思えない」


 身体内部に干渉出来る水スキルか……。

 拓海は自分の所為でこの状況を作ってしまったと言っていたが、孵化のタイミングを操作する様な事まで出来る水スキルを取得していた拓海が起点になっていなかったら、恐らく何人かは死んでいたんだろうな。


「どうせならそちらの人、えっと、拓海様に今の飯村さんの強さを見せてあげたらどうでしょうか? もちろん、その身体がもう少し癒えたらですけど」

「君は……」

「初めまして、私はクロと言います。このダンジョンの異常を正常化する為に人間をサポートする存在です。ちなみに今は飯村さんの家――」

「クロ、悪いが倒れている探索者達をかき集めてくれるか? このダメージだと動くのはまだ辛い」

「え? あっ! そ、そうですね! あのままだと危ないですもんね! ちょっと行ってきます!」


 クロは同居を秘密にするという約束を思い出したのか、倒れている探索者の元に焦って走りだした。

 戦闘の時なんかは真面目でしっかりしているイメージがあるが、ふと気が抜けるとどこか幼さを感じるというか、天然が出てしまうというか……。

 そんなクロを見ていると、親心に近い感覚がどうしても生まれる。これからも注意してみてやらないとだな。


「――朱音と違うタイプだがいい子だな。一也、お前あの子、クロちゃんとお似合いだぞ」


しばらくの沈黙の後、拓海はそろそろ探索者を集め終わりそうなクロを見ながら意外な事を呟いた。


「拓海、お前でも冗談を言うんだな」

「冗談、か。クロちゃん『も』お前と一緒だと辛い思いをしそうだな」

「ん? それってどういうことだ?」

「……いや、何でもない」


 拓海は呆れ顔で俺を見ると、そっと体を起き上がらせ胡坐をかく。

 他の探索者よりも反動は大きいだろうに、意識を失わないどころか、もう身体を動かす事が出来るのは流石としか言いようが無いな。


「よっと。それであのモンスターが記憶に干渉する方法なんだが、それは――」

「ただいま戻りました! それで失礼ながら話は聞かせて頂いてまして……どうせなら映像と一緒に解説お願いします」


 そういうと探索者をかき集めて戻ってきたクロが自分の足元付近に映像を映す。


「さぁてあれが問題のモンスターですね。あれ? もしかしてあのモンスター私に気付いて――」

「まずい!」


 映像を覗き込んだクロのその発言を聞き、拓海は慌ててクロの目を両手で塞いだ。

お読みいただきありがとうございます。

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