39話 回復弓
ローファン月間5位! ありがとうございます!
「ギギ!」
生まれたばかりのパラサイトワーム達は勢いよく四散し始める。
そんなパラサイトワーム達に向けて弓を引くが、素早すぎて何匹かは衝撃波の範囲から逃げて何処かへと消えていく。
因みに今倒した分だけでレベルは197。
やはり経験値が美味い。
それにしてもあれだけの数のパラサイトワームが蔓延る階層なんて危険そのもの。
もしかすると俺達が知らないところでも同じ様にパラサイトワームが……。
「一旦江崎さんに報告しないと――」
「ギギ!」
「飯村さんっ!」
スマホを取り出して侵入中止を促すメールを作成しようとすると、パラサイトワームが俺の足元から数匹顔を出した。
するとパラサイトワーム達は俺の体内に入り込もうとしているのか、脚から身体へと這い上がってくる。
「口を閉じてっ! 鼻も摘まんで下さいっ! 中に入られたら、あっという間に意識を支配されます!」
クロはそう言うと、俺の身体に張り付いたパラサイトワーム達を剥がしに掛かる。だが、パラサイトワーム達はその複数ある脚を俺の身体に食い込ませて必死に抵抗をする。
「ちよっと痛いかもですけど、我慢してください」
クロはパラサイトワーム達を剥がす事を諦め、俺にダメージが入る事を覚悟して殴打を繰り返す。
しかし攻撃をすればするほど、パラサイトワーム達は俺の身体からHPを吸い出してくる。
最悪のリサイクルが完成してしまった事に気付き、額からは汗が流れ始めた。
このままじゃじり貧。
その内HP0になって死んでしまうぞ。
「ギギ、ヴ、ブ」
焦燥感が生まれ心臓の鼓動が速くなり始めた時、俺はパラサイトワーム達の変化に気付いた。
なんとその小さな身体が成長とは別の意味で大きくなっていたのだ。
ふっくらとした身体になったパラサイトワーム達は苦しそうに口から息を漏らしている。
恐らくダメージよりも吸収したHPが多く、その余剰分で身体が膨れたのだろう。
そもそもHPがこうして存在しているという事に少し驚きだが、多分漫画によくある気力、生命エネルギーのオーラみたいに魔力とは別に実態を持つ事が出来るのだろう。
となればより多くのHPを相手に送れれば……。
『回復弓、魔力消費……20』
俺は自分に回復スキルが備わっている事を思い出し、それを発動させる。
すると魔力弓は緑色の光を放ち、それを俺の元にまで伝わらせる。
身体の痛みがスッと引いていくような不思議な感覚。
充実感が全身を包む。
それと同時にパラサイトワーム達は一層大きく膨らむ。
HPを吸おうと思えば、一気にそれが流れ込み、なにもしなければクロに殺される。
そんな八方塞がりな展開にパラサイトワーム達はとうとう参ったのか、俺の身体から離れようとする。
だが俺は敢えてパラサイトワーム達を抱き、それを阻止した。
無理矢理HPを吸わる為にここでもダメージが入る様にきつく締めあげる。
「ギ、ギギ……」
――パンッ! ……パンパンパンパン!
1匹破裂すると連動しているかの様に他のパラサイトワーム達も破裂。
俺の周りにはその死体と体液が飛び散った。
まさか初めての回復弓がこんな使用方法になるなんてな。
『レベルが200に上がりました。ステータスポイントを6獲得しました。スキル:転移弓を取得しました。発動時魔力を自動消費。一度見たモンスター或いははっきりと場所の分かるモンスターまで放たれた矢を転移させます。スキル:魔力弓が強化されました』
「もうレベルアップ?」
「おめでとうございます。恐らくですけど、パラサイトワームのボーナス経験値が影響しているからレベルが早く上がっているんだと思います。条件は自分のHPを吸わせてから倒す、とかじゃないですかね? それでなにかスキルは増えましたか?」
「ああ。だが試す前にステータスポイントだけ振らせてくれ」
『ステータス』
俺は思いがけないレベルアップに動揺しながらステータス画面を開いた。
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