25話 出陣
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氷の上に写し出される朱音達と人型スライム。
その戦闘状況は淳が吸収されそうになったりと、決していいものとは言えず、いつの間にかおれの額には冷や汗が滲んでいた。
「攻撃らしい攻撃はまだしてないが……強いな、このモンスター。朱音達は気付いてないが、あの爆発で本体はあっけらかんとしてる」
『そうですね。テンタクルスライムはヒューマンスライムに進化してしまって、再生能力、吸収力、知能、防御力、魔法防御力が飛躍的に強化されてます。今まで『ボーパルバニー』を餌に金色スライムを各層に少数ずつ産み出していましたが、その生産に必要なコストも減っているでしょうから、ここでこの方々が餌として確保されてしまうと金色スライムは爆発的に増殖。通常個体が次々に金色化すれば、ダンジョンが通常個体の消失を確認して自然湧きを増やす。となれば溢れたモンスター達は行き場を失くし、違う階層、又は地上への進出を許可されるようになる。この状況を阻止しなければ被害は甚大になるでしょう』
「モンスターが地上に……」
1階層でスライムを増殖させていたのは、金色スライムを地上に向かわせる為……。
異変を見せるこのダンジョンのモンスター、いやダンジョン自体が外の世界を侵略しようとしてるって事か?
『あ! 全員ヒューマンスライムに捕まって――』
「なっ!? あいつら何やってるんだよ!」
完全に油断していた朱音達はまだ機能していた肉片に身体を包まれ拘束されてしまった。
朱音のスキルの威力を信用しきった、その強さに傲った結果……。
とにかくこのままじゃクロの言った通りになってしまう。
「クロ! ワープゲートはまだか?」
『……出せます! 緊急になるので移動後の位置設定無しで……ワープゲートを発生させます!』
クロの合図と共にワープゲートが正面に現れた。
俺は弓を構えると躊躇なくそれに突っ込み、そして……
「え?」
戦闘中の朱音達が綺麗に視界に入る場所。
階層の天井付近にワープした。
落下する恐怖を感じつつ、だがこれが千載一遇のチャンスだという事にも気付く。
何故ならヒューマンスライムは俺の存在に気付いていないからだ。
この状況なら無条件で攻撃出来る。
「魔力消費20……ターゲット設定表示」
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ターゲット設定
現在自動選択
飛攻撃スイッチ【ON】
■手動選択
・ヒューマンスライム
・人間1
・人間2
・人間3
・金色スライム1、2……
■選択無し
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クロから教わった『必中会心』の設定表示。
これを選択すれば相手がスキルか何かで妨害しない限り、勝手に違うモンスターなターゲットを移し変えたりする事はないらしい。
また魔法スキルや相手が放ったものにターゲットを取られないように選択する事も出来る。
こんなものがあるって分かっていれば、そこまで苦戦しない相手だっていたのにな。
「まぁ、今有効活用出来てるならそれでいいか」
俺はヒューマンスライムという表記をタップして矢を具現化させると素早く弓を引いた。
前回の『ロードコボルト』の時にはてっきり矢は2つまでの分裂が限界だと思ったが、スキル強化でかなりの数分裂出来る様になるらしい。
「早く強化したいな、これ」
放った矢は2つに分裂し、まず淳、彩佳を包んでいる箇所にそれぞれ命中。
指定したモンスターのどの箇所に当てて矢が飛んでいくのかは、強く念じる事で実行されるらしい。
「もう1発……」
朱音がこっちに視線を移す前に、俺は2射目を放った。
「飯村君!?」
「ベボアアアアッ!」
朱音の驚きの声とヒューマンスライムの叫び声が重なる。
矢は後18連射可能。驚くのも、痛がるのもまだまだこれからなんだがな。
「って痛ぇぇ……」
防御力が上がったから何とかなると思ったが、やっぱりあんなに高い所から落ちたら足が痛むよな。骨折してはいないけど……恰好つかないな。
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