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21話 見物

後半朱音視点。

「出せない……」

『で、でも大体1時間くらいで1日とかそんなに長時間ってわけではないので……。ほ、ほら怪我もしていますからその間にここで回復させてあげますよ』

「そんな事出来るのか?」

『一応【リジェネ】、自動回復付与が出来ます。一気に回復出来るスキルではないですし、持続時間はそこまで長くないんですけど、貴方の状態を見るに……1時間もあれば十分回復出来ますよ。……ほ、ほら、段々良くなっていく感じがあるでしょ?』


 クロは説明を終わらせると慌てる様に回復スキルを発動させた。

 確かに痛みがだんだん引いているけど……。あいつらの事だから1時間もあれば俺の出番は無くなるんじゃ?

 そうなればランクもあげられない。見返す事も出来ないかも。


「……でもそんな事で責めるのは可哀想すぎるよな」

『あ、あの、10階層くらいまでならここから距離もないですし、人間達の様子を映し出す事も出来ますけど……』

「そうなのか? じゃあ頼む」


 クロは俺に気使ってか、自分が閉じ込められている巨大な氷の表面にステータスを表示させる時の様に映像を映し出す。

 

 第1層。

 俺が魔石を放置した場所で通常個体のスライムを殺す朱音と初期メンバー、『ファースト』の2人。


「ふ……。お前らのその反応が見たかったんだよ、俺は。……クロ、色々教えてもらうのはこの画面を見ながらでも構わないか?」

『勿論大丈夫です』

「助かる」

『まずスキルによるターゲットなんですが――』



 朱音、淳、彩佳。

 アダマンタイトクラスの3人は、戦闘を終了させるとあり得ないといった表情で辺りを見回す。


 俺はそんな3人の様子を眺めながらクロの話に耳を傾けたのだった。



「なんだなんだ? あんなに慌ててたからてっきりもっとヤバい状況だと思ったのによ。いるのは雑魚スライムばっかり……ていうかこの魔石はなんだ?」

「信じられないけど私より先に中に入った飯村君が――」

「朱音、あんたが飯村に入れ込んでるのは知ってるけど、それは買いかぶり過ぎよ」

「そうそう。あんな役立たずの弓使いがこの短時間でこんだけのモンスターを殺せるわけないだろ。そもそも朱音が1発で仕留められなかった金色スライムを飯村が殺したって話も俄かに信じ難いってのに」


 私と初期メンバーで『ファースト』の一員である淳と彩佳が急いでダンジョンの1階層に脚を踏み入れると、そこには大量の魔石が転がっていた。

 そんな光景に淳と彩佳は私の話を聞こうとせずに、他の可能性を考える。

 飯村君に対して否定的な感情があるわけじゃない私ですら、飯村君が金色スライムを倒せる力を持っていると事前に知らなければ、これをした探索者は他にいると思ってしまうかも。


「とにかくここには雑魚しかいないし、異変も見られない。さっさと先に進むぞ」

「ええ」

「ワープゲートが使えなくなったのは本当に手痛いわよね。まさか私達がこんな浅い層から探索を進めないといけないなんて」


 先を進む淳、それにぼやきながらついていく彩佳。

 私もしんがりを務めながら辺りを見回しながらそれについて走る。


 だけどてっきり1階層にいると思っていた飯村君の姿はない。

 2階層に降りてもその姿はなく、私達は3層目に踏み込む。


 ここまで遭遇したモンスターの数は最初のスライムだけ。

 ある意味でダンジョンの異変を感じていると、ようやく私達の前に5匹の金色のコボルトの姿が。


「金色になってるのはスライムだけじゃないんだな」

「みたいね。でも色が変わったからって雑魚は雑魚、一気に片付けるわよ」

「言われなくても」


 魔剣士の淳は剣に光を纏わせて高速で斬りかかり、大斧二刀流の彩佳がそれに続く。

 とはいえコボルト程度、手を抜いた淳だけで十分だけど――


「ご、が……」

「おいおいおい、ウォーコボルトとかじゃないよなこいつ……。速度重視のスキルだからってなんで1発耐えるんだよ」

「こっちは倒せたけど明らかに硬いっ! 3階層のモンスターだと思ってたらヤバいよ!」


 私の予想と反して2人は真剣な表情で狩りを始めた。

お読みいただきありがとうございます。

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