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155話

「――きゃっ!」

「大丈夫ですか?」

「はい。すみません、ちょっと疲れて脚がおぼつかなくて……」

「肩、お貸ししますよ」

「だ、大丈夫です。流石にそこまで迷惑掛けるのは……。それに、見てください!あれが9階層への階段です」

「9階層、そこに姫様の仲間が……」

「はい。捕まっています。それであの触手の……テンタクルゴブリンが複数。襲撃された王都の中でも権力者や比較的戦闘に長けた人たちを選りすぐって、情報と魔力を吸う……収容所よりも酷い階層です」

「……急ぎましょう」


 更に複雑化していく8階層を姫様の案内のもと進み、ようやく俺たちはこの階層を後にする。


 テンタクルゴブリンの寄生能力を考えると、姫様にはできるだけ安全なところにいて欲しいが、逸る気持ちがその脚を動かすのか、転びそうになりながらも俺の前を行く。


「9階層。着きました、けど……」

「広い……。それに凄い数ですね」


 眼前に映るのは今までのダンジョンの形容とは違い、ドーム状となった階層。

 そこには綺麗に並べられたエルフと人間、合わせて100人ほどが収容されていた。


 そしてそれに寄生し、触手を動かし続けるテンタクルゴブリンたちとその順番を待つテンタクルゴブリンたち。


 奥に道が続いているが、階段は部屋の隅2箇所に既に見えている。


 人間を捕らえるための10階層への階段と人間を運ぶためだけの階段なのだろう。


 どちらも一方通行で、テンタクルゴブリンたちがそこですれ違うことはない。


 効率化を図った動きは工場のそれと似ているが、それはそれだけこいつらの知能が高く、人間の時の記憶がある者が多いということなのだろう。


 ただやはり、過去の存在に対してこのようなことをするというのは、罪悪感情が欠落している。


「増えてる……。そんなに時間は経っていないのに……」

「抵抗するエルフや人間を捕らえる新しい方法が確立されたのかもしれませんね。……。あれを見てください。テンタクルゴブリンが――」

「お母様、お父様まで!」


 俺がテンタクルゴブリンのとある光景を指差すと同時に姫様は2人のエルフの下へ駆け寄った。


 大分歳をとっているがこれが姫様の親、先代の王か。


 当たり前だが2人とも姫様に似て……ん?


「なっ! お前もここに連れてこられていたのか!」

「良かった生きていたのね!」

「良かった、良かった……。あの、ごめんなさい。私が国を治め始めてすぐに、こんな……」

「お前が悪いわけじゃあない。ほら、もっと近寄って私たちにその元気な顔を見せてくれ」

「はい!」


 ――パン!


「な、んで?」

「死、にたくない……。だから、もっと私の側に」

「くっ、しぶといな。なら魔力消費、50」

「や、止めて! あなた、あなたなんてことを――」

「馬鹿っ! そいつをよく見ろっ!」

「え? ……あっ」


 感動の再開を果たしたと思い顔を緩めた姫様。


 しかしその手、足、耳元は触手へと変化。


 糸がほどけるようにしての変化は相手を襲おうと先走り、俺程度でも早々に気付けたのだが、姫様は今ようやく気付くことができた。


 両親との対面に安堵し過ぎていたのは分かっていた。


 だから、下手に俺の攻撃を遮られる前にテンタクルゴブリンを射抜いたというわけだ。


 ただ誤算だったのはこのテンタクルゴブリンがゴブリンキングに近い耐久力を持っていたこと。


 1匹は瀕死にできたが、もう1匹、母親に擬態していた方がすかさず姫様を飲み込もうとしている。


「間に合うとは思うが……魔力をけちりすぎたか?」


 魔力矢の強化内容は透過。

 スピードや威力アップが引けたら良かったんだが……。


 何故なら万が一ここの階層全てのテンタクルゴブリンを相手にしないといけないと思い、勝手に魔力を抑えてしまったから。


 頼む。これだけでも……爆ぜてくれ――


「距離的に効果はあんまりですけど……祈りを捧げます」


 魔力矢が当たるよりも早く、姫様は胸の前で合掌。


 俺の中で力が漲る感覚が溢れた。


 これ……攻撃のバフスキル、だよな?

 もしかすると姫様の職業はサポートに特化した魔法使い……いや、いっそのことサーポーターという直接的でなんの捻りもない職業なのかもしれないな。


 とすれば余計に……

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