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152話

 パアッと顔を明るく見せ、大きく開かれていく口。


 それは人間の、エルフの限界を遥かに越えて広がり、そして……。


 ――シュルシュルシュルシュルシュルシュル。


 数えきれない程の触手が飛び出し、腕に絡まった。


「その身体の情報もらうね。この身体の、本物は良いスキルを持ってたけど身体能力は大したことなかったから。あなた、お前はよく動けてたし……期待できる」

「こいつ、寄生するだけじゃなくて擬態まで……。じゃあ姫様は、ここにいない?」


 最悪の状況に最悪の可能性。


 身体を捩れば捩るほど触手は全身に食い込み、締め上げる。


 しかも通常のテンタクルゴブリンよりもレベルが高いのか、触手は硬いし、千切れてもあっという間に再生する。


 なんでか『空間転移』が使えないし、逃げるのは困難。

 かなり痛手だけど、ここは無理矢理突破するしかなさそうね。


「2人とも一旦離、れ――」

「くそっ! 魔力消費……5」

「私も、なんとか絞り、出す……。あなたたちを姫様の元に連れていくって、そう決めたもの」


 2人は私を助けようと、残り少ない魔力で戦ってくれる。


 けど……さっきのテンタクルゴブリンは倒したはずなのに、地面からまた触手が。


 あいつだけだと思っていたけど、この下に代えのテンタクルゴブリンがいるらしい。


 これはもっと……出し惜しみせずにやるしかないわね。


「ちょっと痛いだろうけど、死ぬよりはマシって、思って頂戴。『空間爆発【特大】』」


 触手の見える地面から全体。

 それに自分ごと姫様の姿をしたテンタクルゴブリンを爆破。


 無事触手もそのテンタクルゴブリンも爆ぜてくれた。


 そう、そこまでは良かったんだけど……。


「きゃああああ!」

「な、なんだよこれ!」

「床が……地下にまた、部屋?」


 爆発に巻き込まれて少し火傷を負ってしまった2人、それと魔力を殆ど使い動くのがまた辛くなってしまった私は、爆発によって抜け落ちる床と共にその視線の先、おそらくは9階層となるその階層の広い部屋に落ち……そこにある壮絶な光景目の当たりにする。


「が……あ……。もう、止め……」

「姫様……お逃げくださ……」


「これは……。その人から情報を得て、いる?それで……テンタクルゴブリンたちは全ての人に成り代われるように……。こうして、王都を、その見た目を維持したまま乗っ取ろうとしているってわけ?」

「そうだとして……こんなのあんまりにも酷いって」

「トモヤ……。でも、死んでるわけじゃない。まだ助かるかもしれない」


 拘束して並べられた王都のエルフと人間たち。

 それを数えきらない程のテンタクルゴブリンが順々に触手で蝕んでいく。


 精神的なダメージも大きいのだろう。

 その口から出る言葉はどこかたどたどしい。


 上に触手を伸ばしていたテンタクルゴブリンはどうやら隅にいるあいつ。


 姫様の姿をしていることから、交替しようとしていたところなのだろう。


 それにしてもこの罠……恐らくは私たちだけじゃなくて、まだ王都に人が残っていて、その内の何人か、多分は権力があったり飛び抜けて強かったり、そういった人たち、更には国交をした際、その人たちの情報さえも取り込もうとしようとしているのかも。


 悲惨な状況に言葉を失いそうになるけど、それでも幸いだと思えるのはここに姫様の姿がないということと、捕まったエルフや人間が姫様に逃げて欲しいと口に出していること。


 私たちが来るよりも前、ここでは姫様を逃がすため何かが行われ、結果的に姫様は殺されたのではなく逃げおおせたのだろう。


「2人とも、姫様はきっと生きている。生きてどこかに身を潜めている。だからそれを迎えに行くためにもここを抜け出すわよ」

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