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151話

触手は私の殺気に気づいたかのように一斉に伸び最早、隠す、隠れるような素振りは見せず、次々と私の脚や手を狙って動き始めた。


 決してその動きは速くないけど、この数……。

 少しでも油断すれば一気に身体を飲まれてしまうかも。


「くっ! これじゃあ姫様に、近づけない!」

「くっそ……。にょろにょろ鬱陶しいんだよ! 魔力消費……10!」


 必死に絞り出した魔力矢を使って触手を打ち抜こうとするトモヤ。


 当たってはいる。いるけど、全然怯む様子がない。

 それどころか触手は魔力矢を放つトモヤに隙を見つけて、トモヤに攻撃を集中。


 トモヤは頭に血が上っているようで、その触手の1本が脚に絡まっていることに気づいていない。


「魔力消費、5! 馬鹿! 姫様も大切だけど自分の周りもちゃんと見なさい!」

「あっ……。助かった」

「まったく……。まぁ頭が冷えたなら、今のピンチはラッキーだったって思うことにするわ。……。それよりこれじゃあ……私たちまでそのうち飲み込まれるわね」


 あかりはトモヤに絡まる触手を魔力矢で断ち切ると、回避に専念するため一旦魔力弓をしまった。

 それに合わせてトモヤも魔力弓をしまって、私たちひたすらに一方的な触手の攻撃を躱す。


 あかりの言う通りこのままじゃ、私たちのスタミナが切れて飲み込まれる。


 その前にこの状況を打破する方法を考えないとだけど……。

 

まずこの触手、なんで地面から生えているのかしら?

 本体が姿を見せていないから、この下にテンタクルゴブリンが何匹も控えている?


 だとすれば、壁じゃなくて床を爆破して……。

でも、なんでそんな回りくどい罠を……そんなことしなくてもそれだけのテンタクルゴブリンがいるなら最初からモンスターハウスみたいにして待ち構えていればよくないかしら?


 テンタクルゴブリンは臆病。

 それが影響しているのか、それともそれができない訳があるのか……。


「……。逃げながらだとどうしても考えがまとまらないわね。……とにかく姫様の救出を狙って、あのゴブリンだけは倒そうかしら『空間爆発』」

「ききっ!!」


 姫様にまで爆発が及ばないように、最小規模でゴブリンの背後に爆発を起こそうとした。


 すると触手はその気配を察したのか、ゴブリンを守ろうと数十本単位で纏まって壁を作り、爆発を遮った。

 想像以上に脆い触手だけど、纏まるとそこそこに硬いみたい。


 あれを吹っ飛ばすにはそれなりに大きな、大量の魔力の消費が必要……。

 8階層なんて中途半端な階層でそれをするのはあまりにもリスキー。


 となればもう1つのスキルを使っての直接攻撃を――


「ってあれ……ゴブリンの足元に触手?」


 爆発に驚いたゴブリンがその場所からずれた。

 その時、ゴブリンの足と地面にねっとりとした線が見えた。


 あれは間違いなく触手。

 ということは……あのゴブリンはゴブリンを装ったテンタクルゴブリンで、その触手を地面に隠すことでまるで複数いるように見せかけていた、と。


 姫様を人質のように扱って見せているのは、ゴブリンという弱い自分を見て不用意に突っ込んできた人間を、私たちを飲み込むこともできるため。


 この場所に元々他のゴブリンがいないのも、その作戦が成功しやすいようにするため。


 なら、空間転移させるのは姫様じゃなくてあのゴブリン、じゃなくてテンタクルゴブリンと私。

 姫様をテンタクルゴブリンから引き離してそのまま直接攻撃、っていうのも考えたけどそれだと不意を突かれて飲み込まれていたかも……。

 危なかった……けど、私の読みが勝ったわね。


「2人とも! 私に矢を放って!」

「え?」

「で、でも、そんなことしたら――」

「大丈夫だから! カウント0で攻撃して頂戴! それじゃあいくわよ! 3、2、1……0『空間転移』」


 2人が私の言葉を受け入れて魔力弓を構えたのを確認してスキルを発動。


 私とテンタクルゴブリンはその位置を入れ替え、放たれた魔力矢は驚き、あっけにとられているテンタクルゴブリンに刺さった。


 悲痛の声がこだまし、触手は引いていく。

終わってみれば、そんなに消耗することなく作戦成功――


「ありがとうございます。助かりました。凄い、お強いのですね……」

「あ、べ、別に大したことは―――」

「だからその身体……私にも使わせて!」

「え?」

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