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141話

 あかりは少し含みを持たせた言葉を吐くと、そっと俺たちの前に立って、そのままその足を目的地に向けて進め始めた。


 そして、そんなあかりの後ろをついていくこと数時間……。


「上から見たときはあんなに近いと思ったのに……。こうして歩いてみるとかなり距離があるわね。まさかこんなに歩いて、姫様のいる場所どころか、『近く』の村すらまだまだだなんて」

「はぁはぁ……。そ、そうだな。朱音、体調は大丈夫か?」

「さっきから飯村君がモンスターを倒してくれているから、なんとか、ね。それにこれでも毎日ジョギングと筋トレはしてたから基礎体力はある方だと思うわ。でも……」

「二人とも! ただ歩いてるだけでなんでそんなに疲れているのよ! 怪我してるトモヤの方が元気っておかしいわよ!」

「あかり。お二人はいくら強いと言っても人間なんだから、もっと気を付けてあげないと」

「んぅ……。エルフと人間ってやっぱり差があるのね。私、普段人間と一緒にいることってあんまりないから……。ごめんなさい二人とも。そうしたら……視線の先に村が見えるでしょ? 一旦そこで休憩しましょうか」


 エルフの二人はバテバテの俺たちと違い、息一つ乱していない。

 もっと言えば、全ての身体能力がエルフの方が高いのか、モンスターを見つける早さ、反射速度、視力も俺たちより上。


 結局俺が弓を引くまで金色のモンスターを倒すことは難しそうだが……俺も朱音も劣等感を抱いてしまう。


 ここが本当に日本で、スキルが成功しているのであれば……何故、こんなに優れた人種が現代でいなくなってしまったのだろうか?


 それもダンジョンが影響しているのか、それとも、恐竜が絶滅してしまったように、この人たちも……。


 駄目だ。いろんな考えが頭の中をぐるぐると回るが、体力が……。


 俺はダンジョンに潜ることは欠かせていないが、底辺探索者生活の癖で、プライベートではあまりカロリーを使わず、節制するような生活が続いているからな……持久力はない。こんなことなら毎日ランニングでもしておけばよかったか?


「――着いたわよ! まずは……水を用意しないとかしら?」

「その前に中にいるモンスターの殲滅をしないと。多分ダンジョンが潰れた今、それに勘付いて他のダンジョンの周辺に移動を開始しているだろうし、村の中にそこまでモンスターが残っているとは思わないけど……」

「はぁ、はぁ……十匹だろうが、百匹だろうが……や、やれるぞ――」


「――ぐおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」


 ようやく村の前まで辿り着き、膝に手をついていると、トモヤの思っている村の状態とは裏腹に中から大型のモンスターの声が。


「私、この声に覚えがあるわ……」

「流石アダマンタイトの探索者だな。まさか鳴き声だけでそのモンスターが分かるなんて……」

「覚えがあるってことはあなたたちの国にそこそこいるモンスター、というか馴染みのある存在なのかしら?」

「そこそこはいないわ。というかいたら困る。だってこれ……きっとこの中、モンスターの数が減っているどころか――」


「――ききゃああ!!」


 朱音の真剣な表情と、その声色にエルフの二人が息を飲むと、村の入口からゴブリンが一匹。

 続けて二匹三匹……十、二十、三十……それを追いかけて一際身体の大きなゴブリン? まで村の入口からその姿を現した。

 逃げるゴブリンに制裁を加えているのか、逃げるゴブリンを捕まえてはその手足を引きちぎり、口に頬張っている。


「あんまり仲間を食べさせちゃ駄目! あれは! ゴブリンを大量に生み出す存在。ダンジョン内に湧くとスタンピードを引き起こす可能性さえある……ゴブリンの王よ!

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