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139話

「モンスターを出現させる機能を復活させるために遺跡は一時的に封鎖。中にいる人間は強制的に外に出されるみたいなんです。俺、というか現存するエルフや人間でそれを体験したことがあるのは少数で、しかもそれがもう5年も前のことだからすっかり忘れてました」

「強制排出……。飯村君、それってダンジョンのリセットが起きてるってことだよね?」

「おそらくな。本体、佐藤さんを叩かない限り或いは複数あるダンジョンの攻略をしないと、いつまでもモンスターは外に出続けて襲ってくるって仕組みだろ。ゲームにありがちな仕組みだよ、まったく……」

「ゲーム? よくわかりませんがおっしゃった通り全ての遺跡で同じように、しかも遺跡が復活するまでに攻略しないと世の中のモンスターすべてを淘汰することはできない、というのが文献にも記されていました。まぁだからってそんなに悲観しないでください。しばらく遺跡はもとに戻らないですし、これでこの辺りの村々と姫様のいる王都は一先ず平和ですから」

「その感じだと王都ってかなり近そ――」

「あ、飲まれますよ! これ自体に害はありませんが、排出場所によっては危険ですから身構えてください」


 トモヤに促されてぐっと身体に力を入れた朱音。

 俺は万が一離れ離れになると良くないと思い、そんな朱音の手を取った。


「飯村君――」

「朱音はまだ万全の状態じゃない。外にいるモンスターが金色のモンスターだとすれば離れるのは危険。もっとこっちに寄ってくれ」

「……分かったわ」


 朱音は俺の胸に顔を埋めるようにして、必要以上に身体を近づけてきた。

 俺の出す答え。

 それが朱音にとってつらいものになると分かっているだけに、こういうのはどうして胸が痛くなる。


「朱音。それはあまりに――」

「私ズルい女だから。こんな状況なのに、過去に戻ったことで答えが出るまでの時間も増えたって思ってる。だからこっちにいる間だけはもう少し頑張らせて――」

「飲まれます!」


 トーンの低い朱音の声をかき消すようなトモヤの声。

 それと同時にワープゲートはまるで生き物かのように、大きく広がり俺たちを飲み込んだ。



「――うわああああああああああああああああああああ!!」

「最悪な場所に、出たな」

「飯村君!」


 ワープゲートの先に待っていたのは青く綺麗な綺麗な空。

 下にはトモヤの言っていた村々が見える。

 遠くにはおそらく姫様という存在がいるであろう王都も見える。


 遠くからで細かい詳細までは分からないが、堀や外壁、家の作りを見るにギリギリ鉄を用いているくらいの時代なのだろう。弥生時代とかその辺りか?

 それにしてはトモヤの日本語がしっかりし過ぎているのは気になるが。


「このままじゃ地面に衝突して……全員死にますよ!」

「そうですね。このままじゃそうなります」

「な、なんでそんなに冷静なんですか!?」

「俺に考えがあります。前にも試したことのある方法で……とにかく俺に触れてください」

「よくわかりませんが、信じます!」

「魔力消費、70」


 トモヤが俺の脚にしがみついたのを確認すると、俺は魔力矢と魔力弓を顕現。

 落ちた先にモンスターがいないか見渡す。


 しかし、そんな見渡す必要などないくらいにモンスターはうじゃうじゃとその辺り闊歩。

 今回に関しては幸運だと捉えられるが、これだけいるとなると遺跡を封鎖させただけだとまだ村々は安全になったとは言えない――


「きゃああああああああああああ!!」

「え!? なんであいつが!?」

「丁度いい。目標はあれに設定……。……。……あ、かね?」


 魔力矢をどれに放とうかと思っていると、真下から悲鳴が。

 トモヤに釣られて視線を移すとそこには金色のモンスターに襲われる朱音に似たエルフがいたのだった。

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