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137話

次回更新2月10日。

「こいつは……。コキュートス……の分身体?」

「多分ね。転移前に倒した個体と違って感情の起伏みたいなものがあまりなかったし、触手の数も少し少なかったわ」

「眠る佐藤さんを何年も守って……。モンスターがここだけでないのはモンスターが間違って佐藤さんを攻撃しないため、とかか?」

「それは分からないけど……。あれがここに出たってことはこの階層のどこかに佐藤みなみも、もしかするとクロちゃんもいるのかも」

「だったらありがたいんだが……。そんなにあっさりといくものなのか……」

「いやいやいや! 何の話をされているかは分かりませんが、あの氷のモンスターをなんなく倒せたんですから今は喜ぶところじゃないですか?特にここの遺跡に出る個体は頑丈って噂が……ってそんなこと言われても困りますよね。まだこの国にきたばかりでなのに」

「……。ここの、遺跡は? トモヤそれってどういう――」

「あっ! 階段ですよ皆さん! これでモンスターの湧き場所が減らせて……取りあえずこの辺りの村は復興できるかと。いやぁ、最近はモンスターの数が増えたことで農作物を作る環境も減っていて……本当に助かりました」

「……。この人は誰って尋ねたいところだけど……。それよりも、状況を整理するとして……。要するにダンジョンからモンスターが溢れて近隣の村々に被害が出ている。しかも、ダンジョンは私たちが思っている数よりも多く、それでいて散らばっている。恐らくは私たちの知っているダンジョンの異常がレベルを上げていくとこういったことに繋がるのね」

「だとすればクロのいる場所もこことは限らない。それに……。俺たちのいた時間のダンジョンの状態を見るに、俺たちがこの異常を解決するのはもう決められたこと、というか既に違う時間軸で行われているんだろうな」

「その結果クロちゃんは凍って現代まで……。違う時間軸では連れ戻すことができずに、そういった方法をとらざるを得なかった。ということね」

「俺たちにはもう知る方法はないが、もしかするとクロはどこかの時間軸での選択によってこのループに迷い込んで……。永久にこれを繰り返しているのかも知れない」

「それって、死ぬよりも残酷かもしれないわね」

「ただ、そうなるとクロの言っていた異世界という言葉と、そこで生まれ住んでたような口振りはおかしくなってくる。だからこの考えはきっと間違っているし、それに近い事実はない。……って信じたい」

「そうね」


 最悪の可能性が頭を過り、今度は自分の中でそうではない可能性を呟く。

 だが口を閉じればまた不安が押し寄せ、うつむくと頭の中でぐるぐると思考が働く。


「でもあの時の話……。一部記憶喪失していたこともあってクロ自身気づかない間に別の情報と混濁して……」

「飯村君……」

「……」


 そんな俺や朱音に対してついにトモヤは声を掛けることができず、そそくさと階段を下っていった。


 余計な気を遣わせてしまったな。


「……。それにしても、まさかこんな役目まで担わされてるなんてな。……。そうか、ダンジョンの異常で視覚化された遺跡……あれは元々こういった形となったダンジョンの名残で、同じ状況、ダンジョンの異常によってもう1度利用されようとしていたってことだったんだな……」

「飯村君。とにかくこの異常、この時代を救うってことを放棄すれば私たちのあの豊かな世界はないのかもしれないわ。モンスターの湧き潰しっていうのがどんなものなのか、その方法がどんなものなのか確認しに行きましょう」

「……そうだな」


 俺の様子を察してか、あくまで前を見つめようとする朱音に引っ張られて、俺はコキュートスの分身体を倒したことで現れた階段を下った。


 すると……。


「これって……」

「死んでる、の?」

「生きてますよ。どうやら遺跡のモンスターを生み出すための触媒にされてるみたいですね。趣味が悪いというか何というか……」


 女性の胴体にモンスターの顔が取り付けられ、口からは金色の管が伸びている。


 そのモンスターの顔は俺も見覚えのある1匹、あのナーガのものだった。

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