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134話

新展開導入部執筆に時間を割きたいので次回更新は2月5日日曜日とさせてください。

日頃からお読みいただき本当にありがとうございます。

「これは、ワープゲートか?」

「コキュートス、スキルを発動しなさい」


 俺たちの周りを取り囲むように出現した複数の黒い穴。

 そこからは誰のものとも分からない腕が這い出て、それに身体を掴まれる。


 このまま俺や朱音だけでなく、クロもこのダンジョンから外に移動させられればいいのだが、クロは元々このダンジョンで役割を持たされた存在。


 強制排出対象になる可能性はないように思える。

 その証拠にこのワープゲートは俺の見える範囲にしか展開されていない。


「このままじゃ、クロまで過去に――」

「『限定冷凍』」

「これで私はこの身体のまま、現代に蘇ることができる。あとはダンジョンのモンスターたちがどれだけ経験値を稼いでくれるか……。楽しみにしながら眠らせてもらうとしますか。強制排出されないその子、クロに子守唄でも歌ってもらいながらね。まぁダンジョンのリセットを掛けたあと、恐らくはそのデータはゆっくりと再構成されて……吸った記憶は勿論、その身体や思考能力も別物になるだろうけど」


 足元から次第に凍っていく佐藤さんは、右手を上にかざすと俺たちを見て笑った。


 右手の指し示す先に伸びたノスタルジアの木。

 それには記憶を吸われ、既に意識を失くしているクロが取り込まれていた。


 やはり、クロは俺たちのように排出はされないか。

 それどころか、このままだとクロがクロでなくなってしまう。


「じゃあね、飯村一也とそのお仲間さん」

「クロぉおおおおぉおおぉ!」


 ワープゲートの中へ複数の腕が引きずり込もうとする。

 弓を構えることも難しい状態できたとしても、佐藤さんは勿論何層にも重なり始めたノスタルジアの木を突破するのは不可能。


 以前聞いたクロの話からして、俺たちの見知ったクロはここで過去に戻ったクロとはまた別。

 つまりはこのまま過去にクロを見送ったとして一縷の望みもない。

 クロはここで別れてしまえば今まで一緒に冒険してきたクロとは一生会えない。


 それは、そんなことあっていいはずがない。


「でもどうすれば……」

「飯村君!」

「朱音……」

「そんな顔してる暇ないわ!追うんでしょ?クロちゃんを!」

「追いたいが――」

「『時間旅行』、片道分の魔力なら残ってるはずよ!」


 時間旅行……確かにあのスキルなら俺と朱音2人で時を遡れるかもしれない。


 ただ、それを使うにしてもダンジョンがどの時代まで遡ったのか不明では……。


 だが一か八かそれに頼らざるを得ないか。


「『時間旅行』……設定はクロがまだクロである時。これで大丈夫だと思うか?朱音」

「きっと。この世界にクロちゃんを連れて帰りましょう」

「ありがとう、朱音」

『時間旅行の設定を確認。両者の意思決定完了。対象の選択をお願いします』

「俺と」

「私の2人よ」


『……確認しました。時間旅行を発動します』


 フェネクスとの戦闘と同じように身体が勝手に動き魔力矢が放たれた。


 そして俺は共に消えていく朱音に手を重ねられて……この時代を一度後にした。

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