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130話 クロ視点

「まったく……。たった3人だけでよくここまでしてくれましたね。でも……1人でこの階層に赴くのは愚策としか思えません。まさかあなただけで私を倒すつもりですか?」

「みなみちゃんはどこ?」

「聞く耳を持ってはいただけないようですね……。急くのは分かりますが、その反応は苛つきます。だから……排除します」


 100階層に移動してきたのに、その場にいたのは背中から羽のように白くて太い触手を生やした白い軍服を身に纏ったモンスター。

 人間に近い風貌だけど、言葉を発する度に3又になった長い舌が顔を見せる。


 統括モンスターであることに間違いはないけど、危機感とか恐怖とかよりも今はみなみちゃんに会いたいって言う気持ちが強くて……。


「あなたは、どうでもいいの」


 自然と怒りが湧き上がる。

 普段、こんなにイライラすることってないのに。


「『千氷棘せんひょうし』」


 統括モンスターは地面に手を当てると、その手を白く発光。

 鋭い棘が何層にも重なって私のもとまで駆けだす。


「ワープゲート」


 正面にゲートを生み出してすぐにそこを潜る。

 奥に見える扉。あそこはなんでかワープ先に指定できないけど、この攻撃を避けて奥に進むのは簡単。


 力が解放されたからなのか、ワープゲートを生み出すのに負担を感じない。

 それに、発動までの時間が恐ろしく速くできるようになった。

これなら戦闘に利用することだってできるかも。


「だから……無視するなって言ってるでしょうが! 『氷獅子ひょうじし』」


 私が奥を目指すのを予期していたのか、統括モンスターは氷でできたたてがみが立派な生き物をかたどった動く氷像を私の足元から登場させて襲わせた。


「邪魔……だってっ!!」


 思い切り拳を握ってそれを殴る。

 前よりも攻撃力が上がったのか、こんなに硬そうなものですら今の私には壊せてしまう。


 ずっとサポーターっていう立場で一也さんに甘えてしまっていたけど、私だってこんなに戦え――


「うっ……」

「? ……ふふ。もしかして、攻撃した手が痛みますか? 私の氷を砕くほどの拳なんてちょっと驚かされましたけど、流石にこの私の怒りを鎮めるために生み出された高硬度の氷を無傷、とはいきませんよね」

「違う……。これ、触ったら……。なにか、思い出せそうで……」

「何を言ってるんですか? まあいいです。そうして動かないのは私にとって好都合。佐藤様の新しい計画。それが実行可能になるまでもう少し。そうなれば私も別の仕事がありますから、あなたには退場してもらいますよ。いえ……どうせなら凍らせてオブジェクトにでもしてあげましょうか。祝いの品として佐藤様に献上するのも悪くないですから」


 ゆっくりと近づく統括モンスター。


 その姿に止まらなくなる冷や汗。

 寒いからだけじゃない。この震えは……。

 さっきまでは全然気にしてなかったのに……。恐怖心がどんどん募ってく。


「近づかないで! ワープゲート!」

「また逃げますか……。このメスが!」


 こんなに近くまできてるのに……。みなみちゃん……。みなみちゃん。

 あれ? 記憶がぼやけて……口が勝手に。


「……。邪魔。あなた。【憤怒】。……。また、あなた、は……時を、止め……。うっあ……。ここで私が、あなたを殺さない、と」

「殺す? この私、【憤怒】のコキュートスを? ……。戯言もほどほどにしろよ、メス」

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