123話
「ぐっ！ なんだよ、そのスキルは！？ ずるい……ずるいずるいずるいずるいずるいずるい！ 俺にもそれ、それを寄こせ！」
「ならここで朱音の回復と合わせてレベルを上げておく、っていうのはありだな。……。魔力消費、50。時空転移弓、同設定」
強欲の名に相応しく俺のスキルをくれと子供のように駄々をこねるフェネクス。
だがそれを否定するかのごとく俺が予約を入れた魔力矢は何度その姿を蘇らせても、一発でフェネクスの命を狩る。
『――レベルが上がりました』
統率モンスターらしく多大な経験値を得られるため、レベルは簡単に上がっていく。
これならば佐藤さんとの戦いまでに進化できるかもしれない。
ただ、今時点ならばドラゴニュートのような俺の弱点を突くようなスキルさえなければ問題なく勝てそうではある。
そもそも佐藤さんのあの姿……。
ナーガの時と同様に佐藤さんはきっと完全なヒューマンスライムになる。
……。統括モンスターたちは何度もリスポーンされていて、佐藤さんたちよりももっと前の存在のはず。それなのに記憶が内臓されている。
ということは、スキルの仕様でいつからか記憶が同期され、同一の存在となった……。
それこそこっちのダンジョンのアナウンスが旧ダンジョンのアナウンスシステムを共有しているように……。
そう考えれば納得がいくような、いかないような……。
もう一つ可能性として考えられるものもあるが……流石にそれは到底ありえないものに感じてしまう。
「――くっ！ また、だ、めか……」
「飯村君、あいつ……」
「ああ。今のは俺のスキルに似ていたな」
そうこう考えていると、フェネクスは俺の魔力矢を1度回避した。
【強欲】というスキルによって不死となったフェネクス。
今度は俺の攻撃を避けるため、強力な俺のスキルが欲しいと願ったことで空間を転移するスキルを身に着けたようだ。
そのため復活したフェネクスを狙った魔力矢はギリギリのタイミングで、その姿を見失い、そして再び出てきた瞬間に今度は別の魔力矢がなんとか仕留めるという形に変わってしまった。
転移のスキルは連続で使う場合どうしても疲労により間が開くようで、それがなければ俺の攻撃は完全に攻略されていた。
優位な状況なのは変わらないが、残りの魔力矢がなくなる前にまた違うスキルを取得されれば……。
欲張らずにこいつはもう無視して下に向かうか、殺せないとなれば拘束する術を考えないと――
「朱音さん、なんか雰囲気が……」
「うん。魔力が満タンになったのなんていつ以来かしら」
『条件が満たされました新しいスキルを取得しました。時空転移弓と空間転移の効果を統合し、グレードをアップしたスキル、《時間旅行》の発動が可能です。初回の発動に限り魔力消費をダンジョン全体で請け負えます』
「なら問題ないわ！ あのくそ鳥を対象に発動よ！」
「ちょ、ちょっと待て朱――」
『対象を確認。以降は発動に魔力の消費が必要となり、最大2つの生命体の移動が可能となります』
