122話
「――俺は【強欲】のフェネクス。【傲慢】を倒したらしいが、奴はその攻撃力と支配のスキルに溺れ、傲り、人間を蔑んだ挙げ句、慢心による隙が常に見受けられた。だが、俺は違う。欲しいもののためであれば、プライドなんてものはかなぐり捨てることは厭わな――」
「魔力消費1、エンチャントの必要は……取り敢えず無しでいいか」
70階層。
出てくるモンスターの種類やその身に纏う装備、それに懐かしささえ覚える金色の個体が現れはしたものの、属性弓があるおかげで難なくここまで到着。
朱音は普段よりも息切れを起こすのが早かったりはするが、クロの助けがなくとも走って移動できるところまで回復した。
戦闘はまだ無理そうだから、ここは俺1人でどうにかしたいところだが、さてドラゴニュートよりも深い階層にいる統括モンスターがどれ程の強さなのか、まずは小手調べといこうじゃないか。
「お前、俺の話に少しくらい耳を傾け――」
「お、問題なく当たったか」
口うるさい今回の統括モンスターは、俺の放った魔力矢に反応できなかったのか、あっさり命中。
気持ちいいくらいにその身体を弾け飛ばしてくれた。
「あ、あれ?一也さん、今の統括モンスターでしたよね?」
「……。名乗りを聞いた限りはそのはずだが……。これで終わりだとしたら呆気なさ過ぎるな」
なんとか残ったフェネクスの下半身さえも、俺のパッシブスキルで魔力と変わっていく。
衝撃波が出なかったことを考えると、オーバーキル、つまりは俺の攻撃をあと少しで受けきれるほどの生命力は持っていたのだろう。
ドラゴニュートに比べて、耐久力勝負に特化したモンスターだったということだったのかもしれない。
残念ながらその全容を見ることはなかったが……。
「ともかく、大きなロスにはならなくて良かった。朱音、身体の調子は?」
「大分いいわ。でも魔力はまだ足りなくて……」
「無理そうなら私がまたおんぶしますから言ってください!」
「あ、ありがとうクロちゃ――」
「おい! 勝手に終わった空気出すのは止めろ!」
死んだはずのフェネクスの声が戻ってきた。
確かに殺したはずなのに、身体の破片すらもうここにはないのに……。
「……今度の統括モンスターはとんでもない壊れスキルを持ってるみたいだな」
「ふふ……。驚いたか。俺は《強欲》のスキルで永遠を手に入れた不死の鳥。いくら殺されてもこの身体は……蘇生する!」
蘇生……。厄介だがそれまでの時間がこれだけ空いていれば対処は簡単。
時空転移弓を準備して……発射時間、敵再出現時最短。魔力消費……5、にしておくか。
「よし、準備完了」
「そりゃあ声のする方を見るよな。……。残念だが俺はもうここにい――」
――パンッ!
「残念。それでも俺の攻撃の方が早いんだ」
消えた場所から聞こえていたはずの声が唐突に背後から聞こえ始めた。
どうやら蘇生する場所は自分で自由に決定できるらしい。
だが、完全に蘇生が完了し、俺を攻撃するよりも先に時空転移弓によって発射した魔力矢が再びフェネクスを木っ端微塵にした。
再び得られた特盛の経験値とフェネクスの魔力。
「……もしかするとこれ、無限に簡単に一回で両方をかなりの量集められるんじゃないか?」