121話 後半みなみ視点
「2人のスキルってそれ……」
「朱音さん、やっぱりまだ顔が赤いです!でもここで立ち止まっているわけには……。……朱音さんくらいなら大丈夫かな? ――よし! 私がおんぶします」
「え? ちょ、クロちゃん? ちょ、ちょっと待って……」
「さっきのドラゴニュートの強さ……。経験値豊富なナーガからそれを得ていたからっていうのは勿論だけど、きっとこっちのダンジョンでも上の階層にもうそれなりの量のモンスターが湧いて、そこからもかなり経験値が共有されているというのも原因なはずです。敵が、みなみちゃんがどうしようもないくらい、手に負えなくなる前に少しでも次の階層に進まないと」
「それは分かってるけど……。私、まだ身体が……」
「だから私がおんぶしてあげるんです! ……。それにその……。その状態はちょっと危険というかなんというか……とにかく、朱音さんはしばらく私の背中で休んでください!」
クロは珍しく強めな口調で言い放つと、朱音を抱き上げ背負った。
クロの手に触れていられず、バフもなくなったが、さっきの戦いでレベルも上がったし、イレギュラーなことがない限りはしばらく俺1人でも問題はないはず。
それに、大分体調が良くなったとはいえ、朱音は未だに魔力が足りていない。
戦線に戻ってもらうには、俺がモンスターを殺していくのが早い。
「それに朱音とのスキルが気になるというか、楽しみだからな」
「え? 楽しみ? 私と飯村君の相性が良くて嬉しい?」
「あ、口に出てたか……。でも俺そこまでは言ってな――」
「よし! クロちゃんガンガン進むわよ!」
「了解!」
「ちょ、おい! 2人とも戦えない状態なんだから先にいくなって!」
◇
「ドラゴニュートが死んだ……。あの『シスコン』が突破されたなら、あの人たちがここにくるのは時間の問題。あんなに高い攻撃力の相手が出来る奴ってもういないもの。はぁ……。やっぱりドラゴニュートには90階層を任せるべきだったぁ。まさかあんなにも強いだなんて」
「みなみ様。どうなさいますか?このままでは……」
「何をするにしても時間が足りなすぎるからねぇ」
「いっそのこと全員で仕掛けますか?」
「今のレベルでいっても簡単に殺される。あなたは全員で自殺でもしたいの?」
「そういうわけでは……」
「うーん……。かなり消耗するけど、取り敢えずは私の金色スライムを使って時間を稼いで……。駄目そうなら最後の手段に出るか。本当はやりたくないんだけど。やれば途方もない時間を喰うことになるから」
「それは、一体……」
「死ぬわけではないけど、もしかしたら死ぬよりもきついかも。私ですらどうなるか使ってみないと分からない。でももし、私の考えが合っていたするなら……とにかく準備が必要ね」
「準備、ですか」
「ええ。必ずこの『世界』でその夢を叶える準備を、ね。そのためにあなたには協力をお願いするから、義姉さ……じゃなかった、【憤怒】のコキュートス」