120話
『……。引き続きダンジョンシステム情報、共有。……。レベルが上がりました。変換吸収の矢がパッシブスキルに変化、またオーバーしてしまった分を指定した対象へ譲渡可能となりました。効果を適用したくない場合はステータス画面よりオンオフをタップしてください。また時空弓、転移弓が統合強化されました。表記が《時空転移弓》へと変化しました。スキル、《弓のコツ》が《弓使いの知恵》に変化しました。弓や魔力矢を用いた直接攻撃の威力が向上されました』
ドラゴニュートの身体を変換吸収の矢で撃ち抜くと、さっきと同様旧ダンジョンとは異なるより無機質声色のアナウンスが流れた。
旧ダンジョンとこっちのダンジョンのモンスターがリンクしていることから、てっきり統合されたと思ったが……。それにしてはこのアナウンスが――
「はぁ、はぁ、はぁ……」
「考えるのは後だな。大丈夫か朱音」
「朱音さん!」
倒れ込んでいた朱音をそっと膝の上に乗せる。
魔力が尽きかけ、かなり辛そうだ。
こんな状態であのドラゴニュートを押さえ込んでいたなんて……。
その度胸と忍耐力にはどれだけレベルを上げても追い付けそうにない。
「凄いやつだよ、本当に。助けてくれてありがとう。今度は俺が助けてやるからな」
ドラゴニュートの死体がまだ消えていないことを確認して、俺はステータス画面を開いた。
各ステータスは一旦無視。
すぐさまスキルの項目辺りに目を向けると、俺は新たに加えられていたパッシブスキルの項目とその横に見えたボタンをタップした。
すると、飛散したドラゴニュートの血や肉、そして死体が魔力となり俺の身体に流れ込み始めた。
だが、それは一瞬。
ドラゴニュートから得られる魔力量は膨大なようで、俺の減少した魔力は簡単に全快。
俺が対象としたい、と念じた相手である朱音に残りが流れ始めた。
「ふ、う……」
「朱音さん、大丈夫かな?」
「魔力が流れ込んでちょっと熱くなってるだけだから。この様子なら心配要らないさ」
身体が火照っているのが、やや紅潮した様子から窺える。
呼吸も整ってきているし、そのうち良くなってくれそうだ。
それにしても朱音の魔力量、そしてスキルの発動に必要な魔力は俺が思っていた以上だったんだな。
そこそこ消費してしまった俺ですら回復は一瞬だったていうのに……これ、ドラゴニュート1匹分じゃ全快できないんじゃないか?
『対象への魔力譲渡終了。また同じ1体のモンスターの魔力を共有したことで、互いのスキル相性を自動確認、必要魔力2人の合計魔力量が一定に達した場合新たなスキルを顕現』
「……スキル取得にこんな条件があったのか」
「わた、しと飯村君の、スキル?」
「あ、朱音さん! もう大丈夫なんですか?」
思いもよらぬスキル取得の機会に驚いていると、朱音はどこか嬉しそうに言葉を紡いだ。