12話 変換吸収の矢と小範囲攻撃
纏わった赤いオーラエフェクトはゆらゆらとたなびき、弓を引くと閃光が走ったかのように映って見えた。
弓を引いた時に背筋が一瞬だけひんやりと感じたのはこのタイミングで魔力を消費した判定だからだろうか?
「ぺぽぉおっ!」
そして矢は俺の中二心を擽りながら1匹の金色スライムを追う。
流石にこれだけやられ続けて矢に恐怖心を持ったのか、金色スライムは全力で逃げる。
だが逃げ場は狭く、結果金色スライムは仲間の上に登る形になり、遂には行き場を失くす。
――パァン!……パリッ。
――パンパンパンパンパンパンパンパンッ!!
変換吸収の矢は威力が下がるという説明だったが、会心威力を強化した事で弾ける音は先程と殆んど変わらず、威力も下がった様に感じない。
それどころか稲光と共に発生した赤い色の付いた衝撃波、追加された範囲効果が、周りの金色スライムを手前から順番に弾け飛ばし、一層派手に高威力を演じてくれる。
飛散しようとする金色スライムの肉片には、一瞬で矢から赤いオーラエフェクトが伝染。
赤いオーラエフェクトは肉片を自分に完全に溶け込ませて、そのまま俺の元に向かってくる。
「身体が熱い……」
向かってきたそれは俺に纏わりつくと、全身の穴から体内に流れ込み身体を火照らせる。
これが魔力が回復している証拠なのだろう。
結局変換吸収の矢が魔力を消費するスキルでもしっかり回復出来てプラマイ ゼロになるのは有難い。
聞くところによると魔力が完全に尽きると暫く酷い風邪の様な状態になり、吐き気を伴うらしいからな。
『レベルが80から82に上がりました。ステータスポイントを4ポイント取得しました』
レベルは上がりにくくなっているといってもまだまだ上がる。
金色スライムもまだまだいるから、今日中に100の大台に乗れるかもしれない。
「「ぺぽっ!」」
レベルアップ計画を立て様とすると完全に経験値のカモとなった金色スライムはとうとう全体で逃走し始めた。
金色スライム達が逃走し始めた事でようやく広間はいつもの状態に戻り始める。
すると
「何だあれ?」
床にへばりつく金色の管の存在に俺は気付いた。
俺の腕2本分くらいのそれは金色スライムと一緒に移動を始める。
もしかしてだけどあれが……
――キィン。キィンキィンキィンキィンキィンキィンキィン……
俺が金色の管を眺めていると、辺りから絶え間なく金属音が鳴り響き始めた。
死体丸々でなくても倒したモンスターの肉片さえ残っていれば魔石はモンスター1体につき1つドロップする仕様。
その為変換吸収の矢で吸収してしまったモンスター達の魔石はドロップしていない。
「とはいえ……凄い光景だな、これ」
周囲には中くらいの大きさの魔石が散乱。
全部売ればそれだけで1年満足に暮らせるレベルだ。
ただ俺はこれを敢えて拾わない。
生活資金が足りているっていうのも理由の1つだが、やはり1番の理由は見せびらかす為。
「ふ、初期メンバーの奴らの驚く顔が目に浮かぶ――」
『時間です。ダンジョンがフェーズ2に移行している為、復活用として魔石を一部吸収します』
レベルアップやスキル取得以外でアナウンスが頭の中で響いた。
すると、散乱していた魔石の半分がドロッと溶けて消えていく。
フェーズ2ってのは多分今起きてる異変の事だろうが、2って事はこの先も異変は続くらしい。
それと復活というのは誰を何の目的で?
唐突に流れたアナウンスは分からない事だらけで、続けて詳細を言ってくれはしなかったが
『――復活に必要な魔力、小魔石換算で残り10000』
その後思い出したかのように俺にノルマを告げた。
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