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118話

「あいにく俺は元々底辺探索者。弓使いの誇りどころか、人としてのプライドも並み以下。こんな小細工だってお前を倒せるなら惜しみなく使わせてもらう」

「なるほど、俺とは相反する者だったか。これはこれは余計に殺しがいがあるというものだ。何故ならお前を殺すことで、俺の生き方こそが正しく、お前のような大多数の人間の生き方こそ誤りだとより実感できるからな。……。俺こそが王。人間を統べることを許された限りある存在なのだ。そんな魔力の棒切れ程度簡単にへし折ってくれる!」


 ドラゴニュートの爪がだんだんと魔力矢に食い込む。

 弓を経由していない魔力矢では、会心の一撃は出せない。

 強がってみたはいいが、この一本だけじゃどうしようもない。


「そのまま矢ごと額も斬ってく――」

「魔力消費10」

「小癪っ!」


 一本で無理なら十本。

 三本の矢の教えをまさか実際に矢で体現することになるとは。


 だがやはり古人は偉大だ。

 ドラゴニュートの爪が食い込んだところで、一向に軋む気配がない。


 普通なら一旦引こうと考える場面だが、ドラゴニュートの表情は必死。

 引くなんて考えは頭の隅にもないようだ。


 ならこの状況を活かして攻撃を仕掛ける。

 片手で掴める分の魔力矢だけにして正解だったな。


「魔力消費1。クロ!バフを!」

「うん!」


 ある程度時間を稼げたお陰でクロのバフに頼れる。

 会心がないとはいえ、今の俺の攻撃力とバフならドラゴニュートのこの硬そうな鱗だって突破できるはず。


「突き破れ!」

「へし折れろ!」


 いっそう力を込めたドラゴニュート。

 俺が防御に向けていた意識を攻撃に移したこともあって、魔力矢はパキパキと音を立て、数本が折れそうになる。


 大した攻撃力と意地だが……所詮数本が折れたのではなく、折れ始めた程度。


 圧倒的をスピード差を見せつけながら、俺の攻撃はドラゴニュートに刺さった。


「ぐあっ!! ぐぁ、あ゛あぁ……。はぁはぁはぁ、痛い。痛いが……この程度の威力なら、俺は引かん!」

「なんて我慢強さだよ……。でも、それなら何本でも突き刺すだけだ」

「そんな暇は、与えないっ! 戻ったばかりではあるが……もってくれよ、奴の額を切り裂くその瞬間まで!」


 両手での攻撃。

 俺が追加して魔力矢を突き刺す前からドラゴニュートの顔は引きつる。


 喰われた腕を戻すことも可能な強力な再生能力ではあるが、その分しばらく痛みを伴うといったようなデメリットもあるのだろう。


「く、ぐあぁぁあぁああっ!!」

「くそ! なんで止まらないんだよ……。こうなったら別の可能性に掛けるか……」


 ダメージ勝負なら間違いなく優勢。

 なのに危機感が拭えな――



――パキン。



「ふ……。ふははははははははは!! やった、やったぞ! このまま死ねっ! 人間!」

「属性弓:火に装填していた魔力矢……エンチャント完了」


 遂にガードを突破し、嬉しさのあまり笑いが溢れ出すドラゴニュート。


 一方俺はガードの直前、攻撃に使っていた腕で慌てて属性弓を顕現し、矢を自動装填させていた。


 そしてドラゴニュートの爪がまもなく当たるというタイミングで、火属性のエンチャントが完了された魔力矢をガードに使っていた腕で掴み、ドラゴニュートの身体に突き刺した。

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