11話 10000%
「ぺぽっ!」
広めの空間が生まれたからか、必死に呼吸をするスライム達の声がフロア内にこだます。
同時に壁に押し付けられていたスライムが死体となって床に落ち、既に下敷きになって死んだスライムに合流する。
すると通常のスライム達は死体を捕食し肥大化。
肥大化した通常スライムが数匹現れたところで金色スライム達がそれに触れると金色スライムの生命は消え、新たに肥大化した金色スライムが。
更にその金色スライムは身体をもぞもぞとうねらせると、何匹もの金色スライムに分裂した。
通常スライムが仲間を飲み込み肥大化するのは知っていたが、金色スライムはその反対で『分裂』する能力をもっているようだ。
金色の角を持ったアルミラージが1匹だけだった事を考えると、何故スライムだけこんなにも金色の個体が多いのかと気になっていたが……。
ダンジョンを研究している人曰く、通常そのフロアに湧くスライムの数は決まっており、その半数がいなくなると新しい個体が湧くのだとか。
恐らくだが、金色スライムが通常スライムを肥大化したスライムになるよう仕向け、それを金色スライムに変化させる事でその割合をクリア、新しい個体が沸くとまた同じ様に肥大化した金色スライムを生産、これの繰り返しで数は増えていったのだろう。
ただそれの目的が分からない。
ただの習性?だが、結果仲間が死ぬような習性なんてあり得るのか?
それと気になるのはこの繰り返し現象を発生させた金色スライムの発生方法。
『アルミラージ』の時は低確率のランダム発生に感じたが……。いやあれもそもそもは、蘇生能力で金色を引き継いだだけの個体だったのかもしれな――
「ぺぽっ!」
思考を巡らせているとスライム達が大勢で襲いかかってきた。
俺は急いでバックステップでそれらから距離をとり、弓を引く。
――パァン!
さっきよりも距離が近い所為で飛んだ肉片が俺の元にまで襲い、服や皮膚が切れる。
新しいスキルを使いたいところだが、まだまだ数が多く、それに切り替える余裕はない。
それに今のでレベルは75から80に上がったが、範囲攻撃スキルは手に入らなかった……。
ただ防御力は上がったから、多少痛みは和らげられるか……。
「仕方ない諸刃の剣戦法でいくか。ただこの先の事も考慮して矢のストックをしっかり残しておきたいから……いっその事ステータスポイントは全部振りきろうか」
俺は今のレベルアップ分の8ポイントと少し前に溜まった39ポイント、合計47ポイントを次のスライム達が襲って来る前に慌てて振り切った。
これで会心威力は10000%、通常攻撃の100倍の威力で防御無視――
『会心威力の強化ランクが2になりました。会心攻撃に新しい効果:会心余波が追加されました。ヒットした相手に与えたダメージが相手のHPを超えていた場合、オーバーした数値分のダメージがヒットした相手を中心とする小円範囲に広がります。これはモンスターのみのダメージとなり、人間には届きません』
流れたアナウンスの説明を噛み砕くと、『小範囲固定ダメージ発生』って事らしい。
強化ランクアップというのは聞いた事はあったが、それは攻撃力プラス100とか防御力プラス100とかそういったステータスボーナスを授かれるものだって話だった。
それなのに会心威力はスキルのような追加効果ボーナス。
どうせ上げる人なんていないと思って滅茶苦茶な設定になってるんじゃないかこれ?
「とにかく試してみるか。よっと……。そうだ、範囲ダメージがいけるならこれも試せるな」
『変換吸収の矢』
新しい矢を装填してスキル名を心の中で呟くと、矢にこれまた赤色のオーラエフェクトが纏わった。
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