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104話

「――ねぇ、あいつ……。名前忘れちゃったけど、全然戻ってくる気配なくない?」

「ばーか話聞いてたのかよ。あいつは上で様子を見る係。何かあったら連絡しに戻ってくるかもしれないが、それは佐藤様の命令に背く行為。戻ってくるような事態になるくらいなら、取り敢えずその身体で階段を塞げってお前も言われてるだろ?」

「うん。でもそんなことするくらいならあのモンスターみたいに前もってホブゴブリンを使って階段を塞いで……」

「いやいやいやいや。それじゃあ探索者を殺せなくなるだろ。俺たちの考えに背く奴らを出来るだけ殺したいって、お前はそう思わないのか?」

「思うよ。思うからこうしてホブゴブリンを殺して経験値稼いで力を付けてるんじゃない。はぁ。でもモンスターコマンドを使って仲間同士で殺し合いさせると、沸きが甘くなって嫌よね」

「そうだな。ホブゴブリンを簡単に殺せるレベルになったらモンスターコマンドの対象数を減らして、ナーガの奴にバフも減らしてもらうか。単価は低くなるし、上で戦う奴らには負荷が掛かるが、量を増やした方が効率よく経験値を稼げるかもしれない」

「沢山殺せた方が楽しいってのもあるものね。ってなんか最近血の気が多くなった気がするけど……。こんな仕事ばっかりだからかしらね?」

「分からんが……。ま、やる気がないよりはいいさ。それより、そろそろリスポーンくるぞ。ノスタルジアの木の装備用に1匹は確保だぞ」

「りょーかい」


 気配を殺すバフが付与された俺たちは階段を下り、難なくホブゴブリンたちを操り、そして仲間同士で殺し合いをさせる探索者たちの間を通り抜けた。


 触れるかどうかの際どい場所に立っていても大きめの足音を立てても、話し声ですら小さければ全く不審に思われない。


 探索者たちはひたすらに仕事に没頭。

 その楽し気な表情に狂気を感じるが、見たところまだそこまでレベルは上がっていないようだ。


 それよりも気になるのはノスタルジアの木の装備の製造。

 当たり前のようにそれと思われる素材を、一ヶ所に集め、1人がせっせとスキルでその姿を変形させている。

 そういえば製造方法についてはまだナーガに聞いていなかったな。


「なぁ。なんであの探索者はあんなに簡単にノスタルジアの木を加工できているんだ?」

「ああ。それは簡単で、ただノスタルジアの木にする奴らを――」


「ぐ、あぁぁああぁあ……」

「やっば殺しちゃった」

「やると思った。安心しろ俺が1匹弱らせといた」


 探索者に捕えられ、両手足の指を切り落とされたホブゴブリン。

 そんなホブゴブリンを女性の探索者はじっと見つめ、その鳩尾に拳を突き刺した。


痛みで漏れる鳴き声。

女性の探索者はそれが囁き程度になるまで殴り続けた。


「まるで虐めね……。やられているのがモンスターとはいえ、気分が悪いわ」

「だが、ノスタルジアの木を加工してやるにはあれくらい弱らせる必要がある。木の生命力、防御機能はその元となるものの状態に大きく左右されるからな。このことに気付いたのは俺だ。ま、そのときのことは覚えていないが」


 顔を強ばらせる朱音とは反対にナーガは誇らし気。

 こんな空気の中そんな自慢ができるこいつの肝の座りかたは異常な気がする。


 それにしても場合によってはノスタルジアの木の装備を自分たち側も生産、と思っていたが、この様子だと朱音が反対しそうだな。とにかく今は先に進むか、


「さて、ナーガが来たらこいつも装備の素材に――」

『あー、あー……。繋がってるかな、2人とも』

「「佐藤様!?」」


 階段に視線を移し、先を急ごうとした時、俺たちの耳に聞き覚えのある声が響いたのだった。

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