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101話

「やっぱり人間っていう極上品に比べると、どれだけ『味付け』しても臭みがあるな」

「成長が、完全に止まった……」

「まずこうしてノスタルジアの木を食えるのは、スキル『食通』の効果。それでもって、こうして一度発芽してしまえば普通成長を止めることのできないノスタルジアの木を制御できたのは、スキル『味付け』によるもの。食物と判断して触れた対象をできる限り自分好みの味に変えられる。つまりはその性質や状態も若干ではあるものの、変化させられるということだ。欲をいえばもっと味に特化したスキルにして欲しかったが、まぁ使い勝手は悪くない」

「使い勝手が悪いどころか、有能過ぎるだろそのスキル。それで『発芽』に関してもそのスキルを使ったってわけか」

「ああ、使った。だが、俺が無条件で相手を『発芽』させられるようになったってわけじゃない。あくまでスキルは鍵としての役割だけで、その対価は本来同様支払い済みだ」

「対価……もしかして魔力と記憶か?」

「やっぱりあいつらに用があるってだけあってそのことは周知済みか。そうだ。だから俺は記憶が欠けている。もう今知らないこと、分からないことが過去どうだったのかなんて、当然答えられない」


 記憶を対価とする。

 前に会ったときはまだ俺やクロのことを覚えていたが、次会ったときは……。


「一也さん?」

「飯村君?」

「あ、えと、なんでもない。それで、肝心のこの状態から戻すところも見せてもらえるんだろうな?」

「勿論。これも同じ様に手で触れて……今度はレベルと引き換えにノスタルジアの木だけを枯らして、中身を取り出す」


 ナーガの触れていた部分から次第にノスタルジアの木は変色を始め、ホブゴブリンの姿だけが浮かび上がる。

 木と強く同化していた部分は血を吸いとられでもしているのか、若干細くなっている。


 だがホブゴブリンの口からは呼吸音が漏れ、生きていることが確認できる。


「今までの経験上、弱った身体は十分な栄養を摂取していればそのうち元に戻る。どうだ?俺が一緒について行けばお得だぞ」

「確かにな。そうなればあと1つだけ確認だ」

「え?――」


 全力で間合いを詰めてからの慣れない正拳突き。

 本当にレベルが減少して弱くなっているかどうか、俺たちに敵対するつもりはないのかどうか、俺はそれらを確認するために一撃を放った。


 攻撃力は高いが、まだまだおざなりな俺の素手による攻撃を、通常の統括モンスターなら避けきるか、何かしらのアクションを起こすはずなのだが……。


「あ、危ねぇって!! 今の、当たってたら間違いなく死んでたぞ!」

「す、すまん。まさかちょっとした反応すらできないなんて……。まぁそもそも本当に当てる気はなかったが。それにしても、レベルは下がっているみたいだな。はっきり言う、お前激弱だ」

「おう、この通りだ!」


 弱いと言われ勝ち誇るナーガ。

 元々愛嬌のある顔つきだと思っていたが、何かのマスコットキャラクターでもやっていけそうな可愛らしさがある。


 その証拠にクロと朱音は顔を緩めて、笑うの堪えているし。


「裏切ったら……。次は当てるぞ」

「りょ、了解。もう俺はお前たちの邪魔になるようなこと、勿論次の階層へ進む邪魔もしない。だから頼む、俺だけは生かしてくれ」

「それは働き次第だな。それじゃあ早速ここじゃない、もう1つのダンジョンへの入り口まで案内してもらおうか」

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