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6 -たこ焼き、どかん!-


『留学生、失神!がんばれ!留学生活!』


『本日未明、当学園にやってきたベグ・ハーロップ氏が休み時間、廊下にて失神した。丘モネ氏の孔雀が散歩中であり、遭遇によるショックが原因のようだ。慣れない海外生活は想像を絶する苦難であるのだろう。』


『私達、破陽羅武学園新聞部は留学生2人を応援致します。ぜひ、素晴らしい当学園にてかけがえのない時間をお過ごしください。我々は貴方達を歓迎致します。』



 「なんだこれ」

 ベグは号外学園新聞を手に放心していた。僕はあのまま午前中ずっと気を失っていたらしい。今は昼休みで、マノムとバブルと共に屋上に来ていた。


「ははっ、よかったじゃん。皆に知ってもらえて」

 マノムは短い前足で新聞紙を床に押さえながら、それを読んでいた。犬になってから、たった半日というのに、既に犬としての姿が様になっている。バブルはどこで買ってきたのかは知らないが、たこ焼きを頬張っていた。

 

「僕が倒れてから数時間、進歩はあった?」


「授業でそれどころじゃなかったよ」

 僕の質問にマノムはそう答えた。バブルもそれに合わせて、こくりと頷く。


「ま、僕はずっとふかふかのベッドで寝てたけどね。犬になれて楽しいよ」


 マノムはそうおどけて見せた。

 

「やばい。このままじゃ1日で終わらないぞ」


 僕は新聞紙を横に置き、頭を抱える。


「別に無理に1日で終わらせなくてもいいじゃん。もっと気楽にいこーよ」


「だめだ。歴代最短記録が30時間。好条件で人間界に就職する為にも、ここで記録を更新して、アピールをするべきなんだ」


 そう、この試験の様子は学園長をはじめとした試験監督が見届けている。僕が優秀な悪魔であることを知らしめる2度とないチャンスなんだ。絶対にこの機会を逃しやしない。


「ふーん。まぁいいけど。僕は寝るよ。犬だからしょっちゅう眠くなるんだよね」


 そう言って、マノムはこっちにお尻を向けて、丸くなった。その姿は雪山のようだった。

 

 どうすればいいだろう。ここまで来たら、1人ずつちまちま集めるのではなく、大勢の命を一気に儲けた方が早く終わる。何か、良い方法はないだろうか。僕は必死に頭を巡らせた。


 バブルはというと、たこ焼き最後のひとつを口に運ぼうとしていた。僕は考えながら、その様子を眺める。口に入る瞬間、爪楊枝からたこ焼きが外れ、ポトっと容器に落ちた。バブルは何も起きなかったように再び爪楊枝で刺し、それを口に入れた。


 閃いた。その一連の動きを見て僕は妙案を思いついた。


「隕石を使おう!」


 僕が勢いよく立ち上がったのに反し、2人は無反応であった。


…前から薄々思ってたけど、この2人は本当にマイペースだ。

〈ひとことメモ〉

学園長を始めとした試験監督は、試験を受ける生徒の行動を見届けることができる。しかし、義務ではない為、各々がどのくらい観ているかは未知数である。

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