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37 -shoot!-


「最終競技!狙撃⭐︎騎馬戦!!」


「さぁ!皆さんお待ちかねの最終競技です!最後まで気合込めていきましょー!」


 実況が校庭に轟く。生徒たちは既に騎馬を組んでいる。引かれた白線に沿い、紅組白組互いに向き合うようにして並んでいた。


 バブル・ジーはというと、石蕗(つわぶき)リカを天にかかげていた。


 ぬいぐるみほどの大きさの人間を持ち上げることなど簡単。今回の競技も勝ち抜いてみせる。



「2人とも!白組ぺちゃんこにしてやろーね!」


 前方にいるあめちゃんは石蕗リカと私を輝く目で交互に見やる。


「ちょっと、あめちゃん。あんたの頭は狙撃銃置き場なんだから、試合中は大人しくしててよ」


 サングラスをかけた石蕗リカは自身よりも大きい、カラフルなプラスチックでできた銃を改めてあめちゃんの頭上に置き、スコープを覗く。あめちゃんの背中からは「はーい」と塩らしい返事が聞こえた。


 

 最終競技・狙撃騎馬戦とは、騎馬を組みハチマキを取り合う通常の騎馬戦とは違い、敵の騎士を銃で撃つものらしい。弾は勿論偽物で、染料の塊と聞いた。


 私の役目はリカの指示を聞いて、その通りに動かすこと。私は元々自分で動くよりもサポートする立場が向いていると自覚している。絶対、石蕗リカを最後まで生き残らせる。



「開戦まで!3、2……」


 空気が張り詰めている。これはまごうことなき戦争だ。


「1!」


 バン!


 号砲が校庭に鳴り響き、騎馬を組んだ生徒たちは一斉に駆け出していく。砂が舞う。それと同時に重みのない銃声があちらこちらで鳴り始めた。

 他の生徒達が戦っているところを見ながら、指示を待つのはむずむずする。早く走り出したい。


 ……。



――私たち、戦わないの?


 石蕗リカはスコープを覗いたまま、微動だにしない。指示すら出さないなんて、ずっとこのままでいるつもりなの?


 既に撃たれた紅組の生徒達が猛ダッシュでこちらに迫ってきている。前線からの帰還者のようで、体のあちこちに明るい色が飛び散っている。


 「っはい、ワンキル」


 石蕗リカが冷静にひと言。敵を撃ったのらしい。

 白線の上で奇妙な騎馬を組んでいる私たち。……思考を止めよう。


 ただ石蕗リカを天へ捧げる。その間にも、石蕗リカの独り言と戦の咆哮が耳を掠めた。




 随分時間が経ったように思える。ピンクの塗料が私の腕を伝っていた。はっと石蕗リカに焦点を合わせる。小さな体がピンクで染まっている。


「撃たれた!」


 石蕗リカの叫び。狙撃銃を放り投げる。


「待ってましたぁぁぁぁあああ!!」


 あめちゃんの叫び。目がキマっている。


 私は石蕗リカをあめちゃんの肩に置く。そして、背後にある3人分の銃を手に取り、2人に渡す。


「撃つ!」


 私の叫び。私の今の気持ちだ。


 撃たれた騎馬は解体して、生き残りを全員で狙うことができるのが狙撃騎馬戦のルールだ。



 ようやく動き回れる。撃って、撃って、撃ちまくる。



 3人は色飛び交う戦地へ駆け出していった。


 

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