29 -体育祭だよ!全員集合!-
体育祭、当日。
天気にも恵まれ、陽光が煌々と降り注いでいた。
校庭にはテントが幾つか置かれ、中央には小さなステージが設置されている。
校庭は静寂に包まれていた。今なら、雲の流れる音すらも聞こえてきそうだ。
「破陽羅武学園体育祭、第一競技・全校ダンス」
放送部のアナウンスがスピーカーから学校中に響き渡る。ベグ・ハーロップこと僕はそのアナウンスを聞き、目の前にある機械のボタンを押した。
ズッチャズッチャズッチャズッチャ♪
陽気なメロディがスピーカーから流れ出し、静寂を破っていく。次第にどこからか、手拍子が聞こえ、足踏みが地面を揺らす。
「みっなさーん!!」
「ブチあげてくよー!!!」
山張苺がステージ上に駆け上がり、拡声器を手に叫んだ。それと同時に校庭の四隅から、生徒たちが歓声を上げながら、リズムを刻みながら、踊りながら、集まっていく。
「1!2!3!ハイ!!」
山張苺の掛け声と共に、群衆は一斉に踊り出す。テンポの速いメロディーに負けじと、頭を振り、四肢を上げ下げ、飛び跳ね、ターンをする。体を捻り、隣の人とハイタッチをし、また軽快にステップを踏む。
器用に激しい振り付けをこなす生徒も、暴れているようにしか見えない生徒も、皆、揃って全力で踊り、声を上げ、晴れやかに笑っていた。心底、楽しそうだ。この一瞬を全身で享受している。
テントから見守る僕はそう感じていた。見てるこちらまでも、心が躍る。無意識のうちに足でリズムを刻んでいた。
校庭は一瞬で、底抜けに明るい空間と化していた。今ならどんな鬱蒼とした物も、この学校を包む、はっちゃけたパワーでどっかに飛んでいってしまいそうだ。
曲は終盤に差し掛かる。皆、顔には汗を浮かべながらも、依然全力で踊り続ける。
「最後の決めどころー!絶対キメるよー!!」
山張苺はそう叫び、くるっとターンをする。
「体育祭だよ!」
綺麗にターンをした山張苺は華麗にウィンクをぶち飛ばす。
「「「 全員集合!!!」」」
バババーン!!!
群衆の掛け声で、花火が青空に打ち上がった。山張苺と共にポーズを決めた生徒たちは、花火を見上げ、歓声を上げた。周りの生徒と互いに喜びを分かち合っている。
体育祭が、今幕を開けた。




