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2 -学校行こ!-


 目を開けると、眩しい光が目を刺す。僕は思わず、眉間に皺をよせた。この一瞬の痛みが人間界に来たことを実感させる。地獄の変わらない鬱屈した雰囲気より、目まぐるしく変化を見せる人間界の方がよっぽど面白い。1日で終わってしまうにはとても惜しいくらいだ。


 転送されたのは、住宅街の歩道であった。道路にある「止まれ」の文字からここは日本であることが判明する。今日は平日であるのか、太陽が高い所にあるのに人通りは全くない。目が明るさに慣れると僕は自分の持ち物、服装を確認し出した。


 人間界では勿論悪魔ではなく、人間として生活する。試験では、その人間としての設定が決められているのだ。(試験でなければ、自分で自由に決められる)しかし、人間界に着くまではその詳細は分からない。設定によって、潜入先やターゲットが決まるので、まず持ち物や身なりで確認することが必須であった。まぁ見た目が変化する前例はない為、学生に扮することが殆どだ。


 その予想通り、僕が身につけていたのは制服であった。ゴールドのボタンが2つついている、黒に近いネイビーのブレザー。グレーのスラックス。白シャツ。首元にはブレザーと同じ色のネクタイを締めている。洗練されている印象を与えるか、地味な印象を与えるか、着る人を選びそうな制服だ。


 


 次にスクールバックを確認しようとした時であった。


「ねぇ、2人とも」

 

 マノムの声がした。もう確認が済んだのか。

 僕は辺りを見まわした。数メートル先に同じ学校と思われる制服を身につけるバブルがいるだけで、マノムの姿は見当たらなかった。一体どこにいるんだ?

 バブルの目線が僕の足下に注がれている事に気づく。その目線につられ、僕も首を曲げる。


「もしかして、僕美味しいもの食べれない?」


 足下には白い毛玉のような生き物がいた。その生き物からマノムの声が聞こえる。ーーえ?

 2つのつぶらな瞳が僕を見上げている。僕は吹き出した。


「マノッ、僕たちがマノムの分まで美味しく食べてやるからな」


「えー。やだー」


 僕はこみあげる笑いを必死に堪えながら言った。どうやらマノムは犬になったようだ。犬になったからか、いつもの気怠い雰囲気がなくなり、愛嬌増し増しに見える。それがまた、笑えてくる。それはバブルも同じであるようで、小刻みに震えていた。学園長の仕返しだろうか。面白くてしょうがない。僕は声に出して笑った。



ーーーー


 マノムの件が落ち着き、僕たち、2人と1匹は学校に向けて歩みを進めていた。


 僕がマノムと盛り上がっていた間にバブルが生徒手帳から学校を割り出していた。僕たち2人は海外の留学生として、今から向かう高校に滞在する設定らしい。犬となったマノムが敷地内に入れるかどうかは分からないが、試験は基本チームワークであるのでとりあえず僕はマノムを抱えて歩いている。


「ここみたい」


横断歩道を渡った後、バブルが立ち止まった。住宅街から一変、そこには欧米の屋敷を彷彿とさせる立派な校門がそびえ立っていた。目線上にある学校名が目に止まる。


『私立破陽羅武(はぴらぶ)学園』


僕は人間界の知識なら誰にも負けない。だからこそ、この学校名の異常さがわかる。


ーーこの学校には暴走族がいるのか?


ごくりと息を呑んだ。




〈ひとことメモ〉

Beg Herlop

知識試験で1位を取り続け、エリートに選出された。

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