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第四十八話 激突

次回は二十一日午後七時投稿予定です。

「ナナシ!」

「『心力摸倣《硬質化》』」



 銃弾が体を貫く寸前、ナナシの心力によって体を固めた俺は、そのまま銃弾を弾き返す。



『ゲッ! お前……!』



 すると声の主がナナシに対して怯えたような素振りを見せる。



「「?」」

『そりゃそうだ……。アイツは伏島優に憑いてるんだ……。アイツと戦ったらマッチアップするに決まってる……』

「お前……最近スグルの家に偵察しにきた奴か」

『う〜わっ! しかも早々にバレたし。こりゃ逃げた方が良いかな……。それじゃ、機会があればまた会おうね』



 最後にそんな捨て台詞を残したあと、部屋の中は完全に静まり返ってしまった。



「……なんだったんだ? アイツ」

「スグルには言った事があるが、十日ほど前、スグルの家に偵察に来た奴が居た」

「あ〜そう言えばそんな奴居たな……」



 俺が寝てる間に来て俺が寝てる間に撃退されてた奴。



「今お前たちが戦った奴がそれだ。あの時は心力で目を潰して撃退したのがトラウマになってるんだろう」

「じゃあ今回もそれで大丈夫だな。心力は何か分かるか?」

「おそらく、機械の操作だろうな。直接見た訳じゃないからあまり確証は持てないが」

「もしかして今のも全部心力がやってたのか?」

「多分な」

「オイ、ソンナ所でグダグダ話シテ無イデサッサと進ムゾ」

「あれ?」



 三人で話しているとどこからかサイの声が。どこに居るんだと辺りを見渡していると目の前をプ〜ンと羽虫が通る。



「ココだ」

「……そんなに小さくなってたんだな」

「銃弾ヲ避ケル為ダ。アノ動物ヨリはコッチノ方ガ避ケルのに適シテイル」

「へぇ〜。便利なモンだな。それで? サイ。一番近くに居る敵は何処に居るんだ?」

「コッチ二……」

「待て」

「ドウシタ?」

「先にさっきの声の主を倒して来る」



 ナナシはそう言うと、いつか見せた分離で俺の腕から離れる。



「なんだ? 急に」

「この飛行船、さっきの銃とあいつの心力からして、全ての部屋があいつの支配下にあると言っても良い。出来ればそれは避けたい」

「ナナシが居るなら大丈夫なんじゃないのか? 大門さんには銃効かないっぽいし」

「イスナは大丈夫だろうが、もしナオがさっきと同じように切り離されたらどうだ?」

「どうなんですか? 先輩」



 俺がそう聞くと先輩は悩む素振りを見せた後



「そうだな……。タイマンなら大丈夫だ。さっきの感じだと避けたり弾いたりってのはそんなに難しく無いと思う。だけど……誰かと戦いながらだと少し厳しいな」



 と答える。



「だろ? だから俺があいつを倒してくる。あんまり長い時間この飛行船に乗ってるの何が起こるか分からないしな。一旦お別れだ」

「俺もそっちに行くのじゃダメなのか?」

「ナオとサイが魂関連の攻撃が出来ないから無しだな。前にイスナが倒した心力使いみたいのが現れたら詰みになる」

「そうか……」



 今は敵地だ。何が起こるか分からない以上、出来れば離れたく無いが……



「ま、私達なら大丈夫だろ。伏島の事は私に任せて、ナナシはさっさとさっきの機械野郎を倒してこい」

「元からそのつもりだ。ナオ、スグルを頼む」

「ああ! 任せとけ!」



 そんな心配を打ち払うように俺の背中をポンッと叩いた先輩はそのままナナシを送り出す。



「『心力模倣《重力操作》』」



 心力で浮かび上がったナナシはそのまま天井を突き破りながら、進んでいった。



「……本当に大丈夫なんですか? ナナシが居なくて」

「不安か?」

「まぁ……」



 どうしても俺の中を不安が支配する。今までの戦いでナナシ、もしくは同格の戦力を持つ大門さんの手助けが無ければ負けていた戦いばっかりだ。敵地の中でそんな無防備な状態になるのはかなり不安だ。



「今日の昼な? ロード・ヴァルキュリアの皆で話してたんだよ。LIMEで」

「……え? なんですか? それ。俺招待されてないんですけど」

「そりゃ女子限定のグループだからな。お前を入れるわけねぇだろ」

「えぇ……なんか除け者みたいで嫌なんですけど……」

「良いから聞けって」



 俺の苦言を先輩は軽く受け流し、話を続ける。



「そこでな、小清水と悠香から大丈夫そうかって聞かれたんだよ。一応敵陣地に乗り込む役目だからな」

「……もしかして俺嫌われてます?」



 そんな事、俺は全く言われてないぞ……。



「小清水がお前にも同じ事しようとしてたけど悠香が『スグ兄は良いっスよ〜。アイツそういう事言うと調子に乗りますし』って言って止めてたぞ」

「アイツ……」



 俺も小清水に励まして欲しかった! なんでアイツはそんなに俺の邪魔をするんだ……!



「まあそこは良いとして……。そん時に私が送ったメールがこれな」



 そう言って先輩が見せてくれた画面には次のように書いてあった。



『まあ、伏島とも一緒に行くし、大丈夫だろ』

「え?」



 その文字に思わず声が出る。



「これは……俺の中にナナシが居るからって意味じゃない……んですよね?」

「当たり前だろ。もしそうだったら今この流れでこの画像見せるわけ無いだろ」

「けど……なんでですか?」



 俺なんかよりも、ナナシや大門さんの方がよっぽど戦力的には頼りになるし、汎用性でも上だ。



「ん〜まぁ……なんとなくって言ったらそれまでなんだけどな? 多分……悠香を助けたからじゃねぇかな? お前の方がいざって時になんとかしてくれそうな感じがするんだよな」

「…………」

「確かに、戦力で言えばナナシとか大門にお前は敵わないかもしれない。でもな、私はその二人よりもお前の方を頼りにしてるってことを忘れるなよ」

「……ハイッ!」



 悠香の件の時、落ち込んでくれた俺を励ましてくれた先輩はすごく頼もしく感じた。そんな先輩に頼られていると分かり、自分の中で不安が溶けていく。



「ほらっ! 分かったならさっさと行くぞ! ……ったく。ハズいこと言わせやがってよ……」

「? もしかして照れてます?」

「う、うるせぇ! コッチも初めてなんだよ! 人を頼りにしてるとか言うのはよ!」



 そう言いながら微妙に顔を赤らめる先輩が、俺には少し可愛らしく見えた。






「このっ!」

「遅いよ」

「ジャッジメント!」

「よいしょっと!」



 添木の声と同時に剣崎の光弾が掻き消える。その隙に添木父が接近し、そのまま蹴りを放つ。


「……意外と動けるな」



 添木父の足蹴りを腕で受けた剣崎は、ニヤリと笑いながら二人に話しかける。



「フム……やはり彼女の心力は−−」

「そんな時間稼ぎに付き合うと思った?」

「ウグッ!」



 しかし添木父はそんな事は気にせずすぐさま腹に拳を打つ。



「まだまだっ!」

「ッ!」



 拳をまともに食らい、倒れ込んだ剣崎に添木父はすかさず追撃を−−



「!」

「やはり、脅威だな」



 突如、姿を消した剣崎はそのまま空から現れ、地面に降りながら添木父に声をかける。



「……脅威? 一体がかな?」

(急に姿が消えた。これが理亜と伏島君が言ってた転移の心力か)

「君の娘の事だよ」

「……どういう意味だ?」



 剣崎の言葉に、添木父は微妙に殺気立つ。



「それはどちらの事象に対してだ? 私が添木理亜が君の娘である事を知っている事にか? それとも添木理亜が脅威であると言う事にか?」

「どっちも教えてくれると嬉しいかな」

「添木理亜の心力、詳しい能力は不明だが、第一段階では敵対する者の心力の停止、第二段階ではその肉体を停止させる事が出来る。

 神に選ばれた私達を君たちと同じ土俵まで引きずり落とせる。これが脅威で無くて何になる?」

「娘を褒められて悪い気はしないけど、そんな簡単に教えてくれるなんて随分と親切だね」

「元来、話すのが好きな質でな。ついついお喋りをしすぎてしまうのは私の悪い癖でもあるのだが……」

「ッ! 理亜!」

「ック! ジャッジ−−」



 添木の頭上にいつの間にか配置されていた大量の光弾が、心力を使う暇も無く、添木に襲いかかる!


 

「こんな風に不意打ちに使えるのなら、中々どうして、悪い癖とも言い切れないな」

「理亜ッ!」



 慌てて自分の娘の元に駆け寄る添木父。しかし−−



「良いのか? 敵から目線を切っても」

「このっ!」

「今更、そんな攻撃が当たるとでも?」

「クソ!」



 添木は再び拳を振るうが、転移によって自由に空間を行き来出来る剣崎にとってそのような攻撃は意味を為さない。



「悲しいな。心力が無い人間など、彼女の邪魔が無ければこれ程までに簡単に攻略出来てしまうのだからな」



 直後、添木父の上空から大量の光弾が降り注ぎ、爆発の衝撃が煙となって剣崎の視界を埋め尽くす。



「まぁ、こんな物か。心力が使えない者にしては中々よくやったと言えるだろうな」

「ジャッジ……メン……ト……」

「……なんだ。仕留め損なっていたか。だが……」



 剣崎はゆっくりと添木の首に手をかけ、そのまま持ち上げる。



「仲間の助けが無ければただのか弱い少女だな」

「う……ぐぁ……。パパ……助……け……」

「残念だな。お前の頼みの綱の父親は、お前の失敗のせいで既に死んでいる」

「勝手に殺さないで貰えないかな」

「アガっ!」



 突如剣崎の顔に伸びた足が剣崎の顔を大きく歪める! 



「ゴホッゴホッ!」

「ありがとうな。理亜。おかげでアイツに良い一撃を入れられた。少し休んでいてくれ」

「う、うん……。分かった……」



 突然支えを失い、前へと倒れていく娘を支えた添木父は優しくねぎらいの声を掛ける。その後、立ち上がってくる剣崎と対峙する。



「……何故生きている? 君に先程の状況を生き延びれる程の能力は無いはずだろう?」

「そうだね。僕には心力だとか異能だとか、そういう常人には持ち得ない能力は持ってない。だけど、そんな人間が何の準備も無く君の前に現れると思うかい?」

「どうやら……その奇っ怪な布が犯人のようだな」



 剣崎は心力を使って突然添木父の背後を覆う黒い布の正体を探る。



「そんなに警戒しなくてもいいよ。これは特殊な能力も何も無いただの布だからね。まぁ、表面を極薄の合皮で覆ってるんだけど」

「…………」



 剣崎は訝しげに添木父の姿を見つめる。



(確かに……ヤツの言う通りあの布には何の効力も含まれていない。だが……そんな物でどうやって私の光弾を防いだ?)

「不思議そうだね。まず……君や伏島君が使う魂を破壊する心力には大きな弱点がある」

「フム……なかなか興味深い内容だな。後学のために是非聞かせてもらおう」

(良し、釣れた。このまま少しでも会話で時間を稼げれば良いんだけど……)



 添木父は少しでも剣崎の興味を引こうと慎重に言葉を選ぶ。



「その弱点っていうのは物理的な影響を全く起こせない。そして、物質を貫通出来ない(・・・・・・・・・)って点にある」

「なるほど……。だが……それは事実か? 私の光弾や伏島優の電撃は服の上からでも十分に威力を発揮するぞ?」



  剣崎はニヤリと笑う。まるで、そんな弱点は存在しないという風に。



「どうやら勘違いしているみたいだね。それらの攻撃は服を貫通してるんじゃない。光弾も電撃も、服の繊維の間を通り過ぎているだけで貫通はしていない。実際に伏島君に試してもらったからその点は確かだ」

「なるほど……。それで私の心力の対策が『ただの布』という訳か」

「正解! 普通の布と合皮じゃ、その隙間の大きさが段違い。これなら君の最も強力な武器も十分に無力化出来るって訳さ」

「なるほど。感謝しよう・君たちの時間稼ぎに乗るに相応しい学びは得ることは出来た。次は−−」

「!」



 フッと、剣崎の姿が消える。



「実際にその策が通じるのか試してみるとしようか」



 次の瞬間、目の前に現れた剣崎は背後から大量の光弾を添木親子に向かって飛来させる!



「甘いよ」



 しかし、それらは添木父の策の通り、黒い布によって防がれてしまう。



「僕はこの役職に就いてからの約二十年間、死なないために必死に鍛えてきた。これくらいの攻撃で音を上げるなんて思われるのは心外だね」

「これくらい……か。なら、これはどうだ?」



 言い終わると同時に大量の光弾が二人の周りに展開される。しかし−−



「ジャッジメント!」

「……ッチ!」



 添木の心力が、再び剣崎の光弾を掻き消す。



「ゲホッゲホッ! 油断したわね。貴方がパパの時間稼ぎに付き合ってくれたおかげで、私の魂も大分回復した。これでもう一度……私は貴方と戦える!」

「……つくづく、私達を脅かす能力だな」

「そんな余裕ぶってて大丈夫かい?」



 添木父が、剣崎に更に接近する。



「能力が使えなくなったばっかりで、僕のそばに居る。この意味が分からない程、君はバカじゃないだろ?」

「ウグッ!」



 拳が、剣崎の腹にめり込む。



「これで終わりじゃ無いよ」

「アガっ!」



 今度は、顔面に、顎に、こめかみに、再び腹に。何度も何度も何度も、拳が叩き込まれる。その勢いに剣崎は体勢を崩し、地面に横たわった剣崎に対して添木父は更に拳を振るう! しかし−−



「そう簡単に倒される程、私は甘くないぞ?」

「!?」



 最後の一撃は、剣崎の手のひらがしっかりと受け止めていた。



「私は神に選ばれし者だ。そんな人間が神から与えられし能力にかまけるなど言語道断。お前程では無いが己の肉体も鍛えている。そして……能力も回復した」



 直後、剣崎の右目が妖しく光る。



(マズイッ!)



 添木父は慌てて腕を引く。直後、添木父の右腕から鮮血が激しく噴き上がる!



「ック!」

「パパッ!」

「浅かったか……。まぁ良い。褒めてやるぞ? 添木満。娘の協力ありきとはいえ、無能力者の分際で私を追い詰め、今の反撃も致命傷にさせない判断力。驚嘆に値する。幾つもの死線をくぐり抜けてきたのだろう。だが、それでも足りない。心力の力はそれほどまでに強大なのだ」

「な〜にを勝ち誇った気でいるのかな? 僕は右腕を怪我しただけだよ? こんなんじゃ、子供だって死にはしない」



 そう言う添木父の額には、脂汗がにじみ、右腕は軽く震える。



「あまり強がるな。もうその右腕はまともに動かせないだろう? 両腕が自由な状態でも怪我を負ったんだ。片腕で光弾と切断の二つを対応しながら私に勝てるとでも?」

「……ック! ジャッジ−−」

「動揺が見えているぞ! 添木理亜!」



 添木が心力を発動させようとするも、その詠唱が終わるよりも先に、剣崎の光弾が添木に迫り、大きな爆発が起こる!



「……ほう。素晴らしい親子愛だな。添木満」

「ハァッ、ハァッ、ハァッ、ハァッ! ……理亜。逃げろ」



 間一髪、黒い布にて光弾を全て防ぎきった添木父は短くそう伝える。



「……ッ! でもっ!」

「良いから、逃げてくれ。僕のことなら大丈夫だ。本当に危なくなったら逃げる。こんな仕事に就いているんだ。引き際位はわきまえてる。だけど、今の僕に理亜を守りきれる程の余力は無い。僕を見捨てて逃げる事に抵抗感があるのは分かる。だけど、今は、大人しく逃げてくれ」

「……分かった」

「そう簡単に逃がすと思うか?」

「ああ。僕が逃がす」



 添木父はそう言うと、剣崎の視界を覆うように黒い布を上から広げ、剣崎に被せる。



「君の移動手段、転移は視界内にしか転移出来ないだろ? さっき倒れてる時、動きが鈍い理亜の所に飛ぶんじゃなくて、僕の真上に飛んだ。概ね、転移する場所の明確なイメージが必要って所かな」

「ッチ!」



 剣崎の腕が、黒い布を切断する為に伸びる。



「させないよ」

「ッグ!」



 その腕を、添木父は蹴り上げ、布の切断を阻止する。



「お前の心力の中で僕にとっての一番の脅威は位置の特定が厳しいその転移だ。一瞬でもそれを防げれば、理亜の能力が無くても、ある程度五分の戦いが出来る」

「このっ!」



 黒い布の切断は時間がかかると考えた剣崎は、光弾を辺りに展開し、そのまま添木父に向かって発射。それを添木父は黒い布を全方位に振り回し叩き落とす。



「クソッ」

「どうやら理亜は逃げ切れたみたいだね。それじゃあ、今の戦いの続きをしようか。勿論、君を上空に逃がすようなヘマをするつもりも無いよ」

「……まぁ良い。元より私の目的はお前たちの殺害では無い。君を倒して、さっさと私の仲間を助けに行くとしよう」

愛娘と、その仲間たちを守るため、最後の力を振り絞れ!



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