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八話 竜の本当の宝物

読んで下さる皆様に感謝です!

 アレクサンダーは、メルルを家へと運び込むとベッドに寝かせた。どうやら悪夢にうなされているようで、眉間にしわを寄せて唸り声を上げている。


 そんなメルルの頭を優しく撫で、アレクサンダーは外に出ると大きく背伸びをした。


「あぁー!やっぱり、元の体の方が動けるし、いいなぁ。」


 草むらの上でぴょんぴょんと飛び跳ねて見ながら、アレクサンダーはその場に寝転がっている暗黒竜へと視線を移した。


 他の竜達もすでに日常に戻っているようで、草むらで寝転がったり、水浴びをしたりとのんびりと過ごしている。


 その適応能力の高さにさすがは竜だなとアレクサンダーは苦笑を浮かべた。


「それにしても、何で魔女の呪いが解けたんだ?」


 暗黒竜の横にある岩の上に腰掛けたアレクサンダーがそう呟くと、暗黒竜は大きな欠伸をしながら尋ねた。


「呪いって?」


 アレクサンダーは大きくため息をつくと大きな声ではっきりと言った。


「この二か月、俺はお前に何度も話したはずだが?」


「ふむ。竜と言う生き物は興味のない事は耳に入らないのだ。」


「はぁ、勝手だなぁ。」


 何度も話して尋ねても、確かにいつも最終的には寝息を立てている竜である。メルルには早々に諦めた方がいいと言われ、今、成る程と理解がいった。


 竜に正面から相談しても、意味はない。だが、尋ねられれば答えないわけにはいかない。アレクサンダーは魔女の呪いについて暗黒竜に話すと、暗黒竜はふむと頷いた後にゴロゴロと喉を鳴らして笑い出した。


「何がおかしい?」


 アレクサンダーが自分の話をちゃんと聞いているのかと首を傾げると、暗黒竜は鼻から煙を出しながら言った。


「すまないな。ちゃんと聞いておけば、その呪いは早々に解けたかも知れん。」


「理由が分かるのか?」


 暗黒竜は尻尾をバシンバシンと大きく振りながら楽しげに言った。


「我ら竜の一番の宝は、メルルだからな。」


「え?」


 その言葉に、魔女の言葉をアレクサンダーは思いだし、ゆっくりと、それはそれはゆっくりと頷いた。


「なる・・ほど。」


『竜の宝を手に入れな。そうすればあんたは幸せになるだろうよ。』


 頭の中で魔女の言葉が何度も何度も繰り返され、そうしていくうちに、アレクサンダーの顔は次第に真っ赤に染まっていく。


「ん?お前、真っ赤だぞ。」


 アレクサンダーはそう言われ、両手で勢いよく自分の頬を叩いた。


 その様子に暗黒竜はにやにやと笑うが、次の瞬間、アレクサンダーに向かって小さな火の玉を口から飛ばした。


「うわっ!危ないだろう!」


 それを聖剣で切り捨てたアレクサンダーに、暗黒竜は意地悪い声で言った。


「だが、呪いは完全には解けていないようだな。」


「え?」


 次の瞬間、ボンッと体の周りに赤い煙が吹き上がったかと思うと、体がまた縮んでしまっている。


「なななっ!なんでだよぉ!」


 そこへ、飛び起きたメルルが慌てた様子で走ってくると、アレクサンダーの体を持ち上げて、そして体をぺたぺたと触ってから、その両頬を掴んだ。


「アレクサンダー!また縮んだの?!それともあれは夢だったの!?」


 至近距離にいるメルルの唇に、アレクサンダーは目が行ってしまう。そして、あの魔女の言葉がまた頭の中をぐるぐるとまわって顔に熱くなる。


「はははは離してくれぇぇ!」


 アレクサンダーは悲鳴を上げた。

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